DXレポート2.1を読んで~人材育成どうする?

DXレポート2.1を読みました。「低位安定」というパワーワードの登場もありつつ、相変わらずIT産業構造のもやもやをうまく言語化してくれていて楽しく読めました。一方で、多くのIT資金・人材が既存システムの運用・保守に割かれている現状の中でどうやってデジタル産業を構成する企業で求められるような人材を育てていくの?という部分については触れられていなかった(検討中の施策に入っている)ので、その点を考えてみます。

デジタル産業の企業類型

DXレポート2.1では、デジタル産業において必要となる企業の類型を示しています。

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こちらの記事でも書いたように、欧米と違いIT人材の多くがベンダ企業に集中している日本のIT産業構造を考えると、安易に「完全内製化だ!」というのは実現性が低く、今いるSIerやITコンサルといったITベンダをうまく生かした形でデジタル産業への移行を図るが現実的です。その意味で、ユーザ企業に④への変革を求め、従来のITベンダに①や②やの機能を果たすパートナーへと変革することを求めるこの提言は納得感のあるものだと思いました。

この類型の企業を目指すためには、当然そうした企業に求められることができる人材が必要になりますが、ここには大きく2つの課題があると考えています。

人材に関する課題① 既存の産業で求められる人材像との乖離

デジタル産業と既存産業の比較のページを引用しました。

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既存の産業では「発注者の要求の実現のために、何にでも対応する労働力」が求められていたのに対し、「消費者・個人に価値を提供するための、尖った強みを生かした顧客とのインタラクションとコラボレーション」が求められていることがわかります。ここには大きな乖離があり、価値観や文化のレベルでの大きな変革が求められています。

人材に関する課題② 運用・保守人材の行方

DXレポート1では、レガシーシステムの運用・保守のためにIT関連費用の大部分が割かれているという課題が指摘されていました。当然、これに伴いIT人材の多くが、運用・保守に割かれています。

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では、デジタル産業においてシステムに対する運用・保守は、なくなるのでしょうか?私はNOだと思っています

具体的な例を挙げると、コンピューティング基盤が既存のオンプレからクラウド化され、IaCを活用しインフラの運用・保守のコストが大幅に下がったとします。それでもクラウドインフラの運用・保守者がいなくなることはありません。むしろ、古くからいるオンプレインフラ運用・保守者とはまた別のスキルを持ったクラウドインフラの運用・保守者が必要になるのです。

つまり、運用・保守を行う人材も含め、デジタル産業に必要となる人材をどのように育てるかが課題になります。

ビジネス的なアプローチ デジタル合弁会社設立

これに対する一つの答えが、最近よく聞くコンサルを始めとしたITベンダとユーザ企業との合弁会社(ジョイントベンチャー)設立です。(ちなみに、このケースは下図赤線で示すように、DX2.1でもサラッと触れられています)。

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この合弁会社には①や②の機能はもちろんですが、ユーザ企業の人材のリスキル(再育成)を行う機能を持たせる場合があるようです。つまり、ITベンダは上記でいうオンプレインフラ運用者のような人材のリスキルも含めた合弁会社設立の提案を行っているのです。

教育的アプローチ Society5.0に向けた人材育成

同じ政府から出ているので当たり前と言えば当たり前ですが、DXレポート2.1で示されたデジタル産業は、Society5.0の思想と類似しています

文部科学省から2018年に出ている「Society 5.0 に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」では、Society5.0における求める人材像として下記の記載があります。「価値」というキーワードなど、共通する部分が多いのではないかと思います。

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さらに、2020年に経団連から出た「Society 5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方」というより具体的な提言では、初等教育からリカレント教育までを含めてSociety 5.0で求められる人材を育成しようという内容が書かれています。

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2021年から始まった大学入学共通テストに、2022年からは「情報」が追加されるなど、既に教育の世界はDXレポートやSociety 5.0で示される社会で求められる人材の育成に舵を切っています。今後はこれまでは企業に閉じていたDXレポートの提言も、人材育成の観点においては教育のレベルにまで及んでいき、この動きはより加速していくものと予測されます。

結局予測で終わってしまいましたが、以上です。

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