今こそチューブレスを語ろう
2017年にマビックがUSTという規格を提唱してから一気にチューブレスが普及してきたように思う。これまで私は2種類のチューブレスタイヤを試してきて、その後無印GPを経てGP5000CLも試した。今回は1年におよぶインプレッションの総括をしようと思う。
さて、そもそもチューブレスとはなんなのか。
メーカー側は「抵抗削減」「軽量化」「振動吸収性強化」とまさに良いことづくしのように口を揃えて言っている。私自身、チームメイトのチューブレスタイヤを借りて走行したとき、とんでもない乗り心地のよさを感じた。しかも8気圧という高圧で、ホイールは6700時代のアルテグラにもかかわらずだ。
前輪のみ借りたから、後輪との比較で感動してしまった。後輪の無印GPが4気圧でようやく乗り心地がトントンというレベル。
半年後にはホイールごと変えた。当時話題のキシエリUSTだ。ナショナル合宿に参加する前週のことだ。今JPTで走る同い年の選手二人と一緒に練習に出掛けたが、下りでの伸びとグリップが圧倒的だったーーー
というインプレが普通だ。
というか基本こんな感じで書かれている。実際否定はしない。あくまでも感想だし、嘘ということはできない。しかし私はチューブレスに対して疑念を抱いている。本当に抵抗が少ないのか?あの時の感想は嘘だったのか?と。実際にチームメイトから借りたチューブレスタイヤと最後に使用したチューブレスタイヤは同じものだ。IRCのFORMULA Lightである。
さて、この事についてもう少し踏み込んでみよう。
まず考えられるのはホイールだ。しかしどう考えてもフィーリングはキシエリの方が良い。巡航は苦手だが、リムが軽いから進みはいい。剛性も低くはないからどんな走りにも対応できるオールラウンダーという印象だ。昨年の東日本ロードクラシックもこれで走った。ちゃんと完走してるし、同年の修善寺でも序盤の集団崩壊の切っ掛けとなったブリッジに反応して食らい付いて行くくらいの運動性能は見せた(修善寺を完走できなかったのは単に自分がハンガーノックなり力を使いすぎたりとやらかしたから)。
ただ私はレースにてIRC FORMULA Lightというタイヤになんの感動も抱いてなかった。正直重いタイヤだなとしか思ってない。少なくともホイールではここまで重くならない。
次に考えたのは空気圧が高くなることによるスポークテンションの低下である。これに関してはマビックが公式に問題点として掲げている。私は普段7気圧で走るから、スポークテンションが低下し重怠い走りに感じたのかもしれない。
しかしそれは「運動性能」の話である。スポークテンションが下がると振動吸収性が低下するとか言う話は聞いたことがない。それなら空気圧の…と思うだろうが、私は「8気圧」で運用し、感動していたのだ。今さら「7気圧」にセットしたところで快適性が上がるのは目に見えている。しかし私はそう感じなかった。空気圧を下げたのにも関わらずだ。
そしてようやく最近になって原因へとたどり着いた。それは「シーラント」である。シーラントがチューブの役割を果たすことによって、チューブがあることで引き起こるマイナス面も同様に引き起こされている。
イクシオンUSTの話になるが、両輪にシーラントをそれぞれ30cc入れた状態では、もはやチューブレスは空気圧を下げてもパンクリスクが低いクリンチャーでしかない。もちろん空気圧を下げられるからグリップは増すし、クリンチャーではそのフィーリングは絶対に出せないのは事実だ。合宿でのレース走では最初は6.5気圧で運用し、最終的には5.6気圧まで空気圧を下げた。転がりは僅かに重くなったが、安心感は素晴らしいの一言だ。ただ私が一番期待していた振動吸収性は特段同じ空気圧のクリンチャーと変わらなかった。
すなわちチューブレスはシーラントを入れるとただのパンクしにくいクリンチャーに成り下がる。ただそれはそれでメリットは大きい。しかもシーラントの値段を考慮すれば、シビアな競技者にとっては経済的だ。チューブの値段もバカにならない。シーラントの方が安いし、タイヤも寿命まできっちり使える。
さてここからは個別にタイヤのインプレッションに移っていきたい。
イクシオンUST
https://images.app.goo.gl/b3pywDp9Nn2HKPTw5
マビックホイールに付属してくるタイヤだが、このタイヤは良くできてる。一世代前の前後で使い分けるタイヤとは全く出来が違う。正直レースで使うならこのタイヤかな。GP5000と比較しても遜色ない。転がりは若干重いが気にならない。というかそんなものどうでもいいレベル。誤差だ誤差。シーラントを入れても比較的タイヤの個性が失われていないように思う。
振動吸収性は少々気になるが、横方向と斜め方向のグリップが秀逸だった。どんなコーナーでも安心して切り込める。前述した通り、6.5気圧で運用してもグリップに問題はないし、5.6気圧まで落とせばまずコーナーでスリップしなくなる。ただタイヤの剛性はとんでもなく高い。そして縦方向のグリップが弱すぎるので、フルブレーキすると確実にリアが流れる。
ユッチンソンがOEM先だからか、タイヤの性格は似ている。快適性が欲しいならこのタイヤはオススメできない。ユッチンソンのタイヤは基本的にバカ硬い。ただ面白いのは、バカ硬いからこそ空気圧を低くしても操作性に違和感が生じないことだ。極端な話5気圧まで空気圧を下げると、普通のクリンチャーならタイヤが路面のうねりにとられてうまく進まない感じがある。しかしこのタイヤにはそれがない。確実にトラクションがかかる。空力的にもよさげなデザインだし、巡航も弱くない。
とかく総合力が高いタイヤという印象だ。重心コントロールができればレースでこのタイヤに勝るタイヤは本当に少ないと思う。
IRC FORMULA Light
https://images.app.goo.gl/UDxp6No3rpDcFBkq8
試してみたいと思って購入。個人的には失敗だと思っている。対パンク性は割といい方だし、ドライコンディションならグリップもまずまず。転がしもイクシオン比較で少し重いかなと感じるくらい。だがいかんせんタイヤが重い。というよりはシーラントが重い。
これに関しては空気抜けが止まらなかったためであるが、さすがに50mlは入れすぎではないか。もはやチューブレスの意義をなしてない。個体差だと思いたいが、さすがに許容できるものではなかった。だがクリンチャー比較だとそこまで悪くないのでそのまま使用。後輪はローラーでも使用したので使いきった。ただ重いタイヤだなぁと。ちなみにウェットグリップは割と弱い。一度すっ飛びそうになった。まあタイヤ自体もLightと謳う割には重いし、USTホイールとの相性も良くないので使うことはなさそう。
無印GP
https://images.app.goo.gl/gyEz1hJpFSmmcEyy9
以前一度使用して、その後S3についてきたのでそのまま使用したタイヤ。感想としてはとにかく普通。特筆する点もなし。ただグリップは弱めかな。ウェットは試してないのでわからないけど、本当にオーソドックスな癖のないタイヤ。コンチネンタルタイヤが欲しいという人にはオススメ。ウルトラスポーツと比較してもこっちの方が対パンクは強く、転がりも軽い。なおかつそこまで高くないので割とコスパはいい。隠れた名タイヤ?という感じか。ビットリアでいうルビノシリーズみたいな。ただタイヤそのものはやはりハイエンドに比べると相当重い。だがこれが普通なのだ。
GP5000
https://images.app.goo.gl/HZSXjTVLQGFeVWiRA
やはりというべきか、総合力で見たときにクリンチャーならNo.1なタイヤだなという印象。無印と比較しても走りが軽いし、グリップも圧倒的にいい。ITさんが「唯一チューブレスに太刀打ちできるクリンチャー」って言ってたけど、太刀打ちどころか半数くらいは喰ってるかもしれない。アルミリムでレースに出る人ならこれとラテックスの組み合わせがベストかなと。カーボンリムならチューブレスの方が良いと思うけど。
振動吸収層を挟んでるらしいけど、個人的には体感できない。無印とそう変わらない印象だ。しかし後々気がついたのは、空気圧をあげる運用をしてもトラクションをかけやすいということだ。一度何がどうしたのか9気圧ほどまで上げてしまったのだが、振動吸収性が意外と悪くない。7気圧で運用したときはさらにトラクションがかけやすかった。
更に言うとタイヤの空力性能は圧倒的だ。後々S3のインプレでも語ろうと思うが、タイヤの空力が良くなったことで、バイク全体の空気の流れがよく感じられる。軽いタイヤではないのでヒルクライムで飛ぶような感覚は得られない。しかし決戦タイヤに収まらないレベルの万能性があるのは確かだ。
ちなみにパンク耐性もちゃんと良い。結構ガレたグラベルを走ったが、パンクする気配がない。
多少無理な操作をしてもタイヤが食らい付いてくるのでグラベルでも安心して走れる。
とかく万能タイヤだ。
総括:タイヤを選ぶならパンク耐性とグリップで
色々言われそうだが、やはりタイヤは良いものを。特にチューブレスを使うならある程度は吟味した方がいい。脳死でマビックやIRCを選ぶと失敗する。最近はシュワルベがよさげなタイヤを出してきた。今度ちゃんとレースで使おうと思う。個人的に今レースで使うならGP5000かイクシオンUSTのどちらかだろう。どちらも安心感がある。身を任せられるタイヤだ。後々シュワルベのPRO ONEがどこまで食い込んでくるか。楽しみだ。
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