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2010全日本クラブ団体選手権①

「美意識」 ~すみれRG(大阪府)

9月11~12日に東京体育館で行われた「第10回全日本新体操クラブ団体選手権」の記事を、すこしずつ掲載していこうと思います。

この大会、今回で10回目だったんですね。始まったときから知っているので、もう10回か・・・となんだか感慨深いです。はじめの数年は、なかなか増えなかった出場チーム数もこのところかなり増えて、大きな大会になりました。レベルもあがったし、やはり大会が続いていくことには大きな意義がありますね。

さて、そんな記念すべき第10回大会で、印象に残ったチームをいくつか紹介したいと思うのですが、今大会でもっともインパクトがあったのはこのチーム、いやクラブではないでしょうか。

「すみれRG」(大阪府)

ジュニアでは見事優勝! さらに「すみれRG桜ノ宮」も11位と大健闘!
さらにさらに、シニアの部でも3位入賞し、見事、オールジャパンの出場権を獲得しました。
今大会、まさに「すみれ旋風」が吹いた、と言っても過言ではないでしょう。
大会記録を見てみると、シニアでは2005年から、ジュニアは2006年から出場すれば毎回入賞を果たしている、間違いなく強豪チームではありました。しかし、意外にもジュニアの優勝は初! 

すみれ表彰

すみれRGは、たしかに毎年力のあるチームで出てきます。個々の選手の能力も高いです。そして、たいてい見た目も美しい。そんなチーム作りがなされている印象があります。
ただ…。線の細さゆえかインパクトに欠ける。私は、そんな風に感じたこともありました。

しかし、今年のジュニア団体はそんな私の先入観を見事にくつがえしてくれる団体でした。


この写真からも伝わってくるように、とても意思の強い演技を見せてくれたのです。曲は誰もが聞いたことのある「ラ・クンパルシータ」で、1つ1つの動きが見事に曲に合っていました。連係や交換、手具操作なども果敢に挑戦しているにもかかわらず、音楽との一致にこだわりぬいた感じの振付、踊りっぷりで、強い印象を残してくれました。

ジュニアにしてはちょっと重いかな~という曲でしたが、この強い目をしたメンバーにはよく似合っていました。リボンのかきひとつとっても、力強く、すこしばかり色気さえも感じさせる大人っぽい演技だったと思います。
このチームの根底に流れているのは、「ぶれのない美意識」! 自分の育てている選手とその演技を通して、指導者が体現したいと思っている「高い美意識に貫かれた世界」なのではないかと、そう感じました。
ただでさえ難しいリボンの団体です。練習してもしてもミスが起きてしまうリボン団体では、今大会も涙をのんだチームも多かったです。しかし、すみれRGの演技には、大きな破たんがありませんでした。目指している世界の高さに対して、これだけの実施ができるというのは、すばらしい精神力だと思います。おそらく、厳しい練習の賜物なのでしょう。
その妥協のない努力が、関西勢で初の優勝を引き寄せたのです。
1か月後の全日本ジュニアにも出場するこのチームは、間違いなく台風の目になりそうです。

すみれジュニア

ジュニア優勝●すみれRG(小嶋智夏・永井萌々夏・則保理子・橋本拓実・中道らん・阪口優衣)

すみれ桜

ジュニア11位●すみれRG桜ノ宮(濱本瑛利奈・大野知奈実・青木瑠那・和田梨花・柚上唯杏・高田芽以子)
 こちらのチームも、非常に凝った構成なのに、大きなミスなくよくまとめました。とくに感心したのはリボンの動きです。動きの変化がとてもはっきり見える動かし方で、演技にメリハリを与えていました。基本操作の練習をとても積んでいるのだろうと感じる演技でした。

すみれシニア

シニア3位●すみれRG(平井萌果・森本春花・海老名由伽・虎野絵実子・福井美紀・緒方友香・吉野和香子)
 とにかくフロアへの入場から演技が始まる前のポーズ、動き始めのすべてが美しいチームでした。シックなブルーのレオタードがよく似合うスタイルの選手たちで、「美しさ」への徹底したこだわりが感じられる演技でした。曲がラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」で、わかりやすい盛り上がりのない曲なので、正直、やっている演技内容の難しさのわりに、見ているほうがわくわくドキドキしないのがもったいない気もします。ただ、この「もったいない感じ」は、フィギュアスケートの浅田真央選手の昨年のFS「鐘」(奇しくもこちらもラフマニノフ)を初めて見たときの印象に通じるものがあるのです。難しいことをやっているうえに、曲も一般受けするものではない。それゆえに、やったこと以上の盛り上がりや評価は得にくい。そんな感じ。
しかし、浅田真央選手の「鐘」は3月の世界選手権ではほぼ完成をみました。難しい内容に挑戦しているからこそ、表現の部分までやりきるのは本当に困難だろうと思います。だけど、「鐘」がそうであったように、演じきることができれば、この作品にはもっともっと凄味と深みが加わるに違いありません。11月のオールジャパンでもう一度見るのが楽しみな作品です。

しかし、新体操的にはそれほど目立った選手が出ていない大阪で、これほどレベルの高いクラブを維持し、選手を育て続けるとは、すごい!と思います。 
今のジュニア達がチャイルドのころ、すみれRGといえばチャイルドでは上位常連でしたが、その子たちがしっかり育ってきているのですから、すみれRGの黄金時代は、当分続きそうです。


「一体感」 ~インタークオレス(千葉県)

第10回全日本新体操クラブ団体選手権・シニアの部の優勝チームはインタークオレス(千葉県)でした。千葉の新体操強豪校・昭和学院の生徒さん達が在籍しているクラブだと言えば、「なーるほど!」と納得する人も多いでしょう。

たしかに、すばらしい演技でした。気持ちよく曲にのって、流れるような動き、交換が次々と繰り出され、全体から醸し出される雰囲気もシニアらしい、女っぽさがあり、さらにノーミス! すべてにおいての「完成度の高さ」「バランスのよさ」を見せつける演技で、試技順がかなりおわりのほうだったこともあり、正直、この演技が終わったときに、「優勝はここかな?」と思いました。そして、そのとおりになりました。

演技がすばらしかったのはたしかですが、この大会でのインタークオレスの演技には、技術や完成度だけではない「なにか」があったように感じました。それはなんだったのか? 
おそらく、それは「一体感」ではなかったでしょうか。
選手としてフロアに立っている5人だけでなく、もう1つのチーム「インタークオレス市川」として出場していた選手たち、さらにはどちらにも出ていない選手たち、そして、会場でおそろいTシャツを着て熱い声援を送っていた保護者たち。もちろん、指導者も。そういうかかわっている人たち全体の一体感が醸し出す空気が、この演技にはあふれていたように感じました。ミスなく演じきれたのは、技術があったからには違いありません。だけど、それ以上に、お互いを信じ合い、支え合い、一丸となって戦っている空気が、この演技にはあり、その一体感ゆえに、気持ちよく見ることができたように思います。

インクオ表彰

2010年、昭和学院は、天国と地獄を経験しました。
春の選抜大会では優勝。しかしながら、その3か月後には、まさかのインターハイ予選敗退。インターハイのない夏は、彼女たちにとってどんなに長かったことでしょう。
それだけに、このクラブ団体選手権に懸ける気持ちは強かったのだろうと思います。しかし、一方で、国体の千葉選抜チームのメンバーを兼ねている選手も多く、千葉選抜ではまったくべつの作品をやっているなど、クラブ団体に懸ける気持ちとはうらはらに練習では苦労も多かったのではないかと推察します。
それでも。
きっと、このインタークオレスの(昭和学院の)メンバーでオールジャパンに出場したい、という気持ちの強さが、本番でのゆるぎない演技につながり、結果も呼び込んだのだろうと思います。

結果が出たあと、観客席では保護者の方たちの多くが泣いていました。「インターハイ予選敗退」という悪夢がこれで払拭できたのではないかと思います。
インターハイで6位までに入賞してオールジャパン出場という道ではなく、「昭和学院」という名前ではないけれど、一緒に頑張ってきた仲間たちでオールジャパンの舞台に出るという目標は果たせたのだから。

インターハイという目標が消えたあとも、仲間と支え合って、親にも支えてもらって頑張ってきたことが報われた。今回のインタークオレスの演技はそんな演技でした。こういう瞬間が見られることがあるから、やはり新体操っていい! そう思います。

インクオ

シニア優勝●インタークオレス(村上成美・柴田和恵・相馬京香・小林千真理・菊地杏花・鈴木優佳・山岡沙織)

インクオ市川

シニア6位●インタークオレス市川(山縣知菜美・相川優・石井美帆・堀佳月・飯島有紀・大澤朱里)
 インタークオレスから出場していたもう1つのチーム、インタークオレス市川の演技もはつらつとしていてすばらしかったです。ミスも最小限におさえた演技で、終わったあとの選手たちの「やりきった!」という満足感が見ているほうに伝わってきて、幸せな気持ちになりました。
 2チームそろっての健闘を見て、この夏、どれだけモチベーションを高くもってチーム全体が練習してきたかが感じられました。
 まさにチーム一丸となって勝ち取った今大会の好成績ではなかったでしょうか。
 「敗戦から多くのことを学ぶ」ことができた、このインタークオレスというチームは、きっとひと回り大きく、強くなったに違いありません。


「躍動」 ~ハーツ新体操クラブ(愛知県)

このクラブは、数年前からちょいちょい(笑)気になるクラブでした。どう気になるのかというと、なにしろ選手たちの元気がいい! それにつきます。演技がとにかく「イキイキ」しているんですね。まさに躍動感あふれる感じ。それがここのクラブ、選手の持ち味だと思います。

だから、「ハーツ」の選手が出てくると、けっこう楽しみに演技を見ていました。いいじゃん、いいじゃんと思ったことも何回もあります(とくにチャイルドなどはいつもとてもチャーミングな演技をしていたと記憶しています)。ただ、印象ほど高い点数は・・・あまり出ない(失礼!)。そういう印象をもっていました。

しかし、今回のクラブ団体選手権では、やってくれましたねー!
なんと言っても、ジュニア、シニア合わせて4チームも出場している。そのことがすごい! さらに、ジュニアでは「HEARTS」が堂々7位入賞でした。
この演技、ほんとによかったんですよ。最初、この衣装を見たときには「ん?座頭市かな?」と予想したんですが、「カルメン」でした。出だしのスローパートがとてもよくて、そこからカルメンの世界にぐっと引きずりこんでくれた感じでした。曲がよく聞こえてくる、ストーリー性が感じられる表現力豊かな演技で、リボンではよく使われる「カルメン」ですが、この作品はかなり印象深いものになりました。
演じている選手たちも、中学生なのでしょうが、非常に大人っぽく、魅力的なカルメンになりきっていました。見終わったときの印象がとてもよかったので、点数が出ればよいなあ、と思っていたところ、19.525という高得点! とてもうれしく思いました。

ハーツジュニア

ジュニア7位●HEARTS(神野有以・秋元杏月・高木美邑・水野史奈子・星野梓・大橋彩果・増田彩花)

さらに、「ハーツRG名古屋」というチームも、ミスはありましたが、とにかく動きも表情もはつらつとしていてよかったんです! こういう演技は、私にとっては点数度外視。見ている人がハッピーな気分になれる演技だったと思います。レオタードが黄色というのも、元気・元気な感じでとてもよかったです。

ジュニア53位●ハーツRG名古屋(鈴木温・白井七海・菊池真由・広瀬莉奈・佐藤雅・鈴木佳織・藤本水萌)

大会1日目にも、「ハーツ新体操クラブ」が出場していて、このチームも元気のいい、はつらつとした演技で目を引きました。私のメモには☆マークがついています。このチームも、見事18.350を出して17位! なにしろ参加97チームですから、その中の17位というのは、かなりいい位置だと思います。

ハーツ新体操クラブ

ジュニア17位●ハーツ新体操クラブ(宮城汐里・渡辺真帆・十文字杏菜・高田愛美・牧千優・佐藤百花・面田恵舞)

ジュニアだけでも3チームが出場していて、それぞれに「おおっ!」と思える演技を見せてくれたというのは、ハーツの層の厚さを感じると共に、たくさんの子ども達が、それぞれの置かれた環境で頑張れる空気があるのだろうな、と感じました。
試合に出れば、順位がつき、どちらが上、どちらの勝ちということはあります。いや、おそらく試合に出る前から、「Aチーム」「Bチーム」的な区分けはあるのだろうと思います。
だけど、それぞれに目標があり、それぞれの目標が達成できるように頑張ろう! という雰囲気、指導が「ハーツ新体操クラブ」にはあるのではないかと、今回の飛躍ぶりを見ていて感じました。

掲載した演技写真、どれもとてもいい笑顔ですよね。
つま先までは伸びきれていないショットもありますが(笑)、つま先が伸びているかどうかは、審判にとっては重要事項ですが、じつは最近私はあまり気にならなくなってきています。もちろん、すごく汚いのは気になります。せっかくステキに踊ってくれていても、ゲタをはいているような足先だと「あ~、残念」と思います。だけど、伸ばす意識はあるのだけど、ちょっとした瞬間にゆるむ、くらいはもう気にならなくなってきました。それをチェックするのは審判の仕事なので、私は少々足が汚くなる瞬間はあっても、いきいきした演技、表情、音楽にのってる、表現したいものが伝わる、なんてことのほうに目が向いています。

その視点で見ると、今回の「ハーツ新体操クラブ」の演技は、どのチームもステキでした。どのチームも魅力たっぷりでした。こうして束になって選手が育ってきているクラブならではの勢いがあり、子ども達が「新体操をやっている自分が好き」だということが感じられました。(この写真からも伝わるでしょう)
私も新体操を見続けてきて長くなってきたからこそ、思うのですが、結局は「新体操が好き」でい続けられるように育てることがいちばん難しいし、もっとも価値があるのではないかと。そこにこだわれば、点数や成績ではなかなか評価されない場合もありますし、ハーツの演技だって今まではそういうことが多かったように思います。
でも、今回くらいにやれると、評価だってついてくる。そういう育ち方もあるのだと、頼もしく嬉しく思いました。
新体操が好きだから、新体操が楽しいから、やっている。練習も頑張る! そうすれば、多少時間はかかったとしても、必ずうまくなる。いっしょに頑張る仲間に恵まれればなおさらです。
「うちの子のことだけをもっと見てもらえれば、うちの子はもっと伸びるのに」なんて親は思ってしまうこともありますが、こうやって束になって、みんながいるからこそ! お互いがいてこそ! 伸びていく子たちもいるのです。本来、子どもはそうやって成長するのがいちばん健全じゃないでしょうか。今回のハーツの演技、選手たちを見て、いちばん印象的だったのは、その「健全さ」かもしれません。

そうして育ってきたシニア選手たちの演技もとてもステキでした。終盤ですこし演技に乱れが出てしまい、点数はのびきれませんでしたが、大きくダイナミックな交換が小気味よく、シャープでかっこいい演技でした。メンバーのなかには、ジュニア時代からよく名前は見かけていた選手もいますが、ものすごい有名選手というわけではありません。それでも、新体操が大好きで、ずっと続けてこれた子たちの演技だな、と感じられる「シニアならでは」の作品でした。

ハーツシニア

シニア7位●ハーツRG名古屋(古川史・高木まどか・千田悠華・間宮彩・鵜飼愛・五十川舞・井上利奈)

これだけの大人数での遠征はとても大変だったろうと思います。それでも出てくるところに、「みんなで成長していきたい」という指導者の思いが感じられました。その思いが、やっと実ってきた今大会ではなかったかと思います。
ずっと、なんとなく気になっていた(目を引いた)クラブだっただけに、今回の飛躍は、私にとっても嬉しかったです。今の良さを失わないで、これからも躍動感あふれる「ハーツらしい」演技を見せてほしいです。あえて言っておきましょう。結果は二の次です(笑)。


「継承」 ~NPOぎふ新体操クラブ(岐阜県)

国体の開催が決まると、「国体強化」という目標と予算(!)ができるため、どこの県もスポーツが強くなる、そういう効果は今でもあるようです。岐阜県では2012年に国体の開催が決まっていますが、ここ数年来の「NPOぎふ新体操クラブ」のジュニア選手たちの成長ぶりにも、そのぎふ国体効果は如実に表れているように思います。

NPOぎふのジュニアは、3~4年前に大旋風をまきおこしました。あのころのぎふのジュニア達は、身体能力が高く、難しいことにもさらりと挑戦し、そしてミスしない。団体を組めば、サプライズな連係もやるし、おそろしいほどの同調も見せる。そんなスーパージュニア達でした。
そのスーパージュニアたちがシニアになり、今のジュニア達は、いわば次世代ジュニア、そして彼女たちこそが、「ぎふ国体世代」(2012年に高校生)なのです。

今回のクラブ団体に出場していたジュニアチームのメンバーのなかには、おそらくぎふ国体のときにはメンバー入りを期待されている子が含まれていたはずです。

大会1日目の試技順21番で登場したのは「NPOぎふRGクラブ」。この日の演技はミスが多く出てしまいました。正直、「どうした?」と思ってしまう演技でした。ただ、「ぎふのジュニアはレベルが下がった」のかというと決してそうは感じませんでした。能力も十分あるし、手具操作だってうまい。それは数年前の先輩たちに劣ってはいないのです。
ただ、かつてはぎふの象徴だった「執念」が、すこしばかり薄いのかな。そんな風に感じました。そんなミスの多い演技でも27位という結果も、彼女たちのもっている潜在能力を物語っていると思います。今の不安定さは、ある意味「次世代」ゆえのものかもしれません。
失うものはなにもないから、どんどん攻める! 上がっていくしかない! その必死さと思い切りのよさが武器だった先輩たちと、今のジュニア選手は違って当然なのです。彼女たちは、はじめから「強いぎふのジュニア」として育ってきたのだから。
ただ、もちろん、次世代ゆえに手にしているものも彼女たちにはある、と私は感じています。本人たちの自覚があるかどうかはわからないけれど。スポーツでは、結果が出ないと「でもよかった面もある」ということにはなかなか目が向きません。だけど、今のぎふのジュニアたちには、先輩たちとは違う「よさ」も確実にあります。動きの美しさや、表現、音に合わせて動くなど、かつてのぎふが弱点と言われていた面が大きく改善された選手たちが育っています。
先輩たちとは違う形、違う色になるかもしれませんが、きっと近い将来、花開くときがくる、そんな可能性を感じさせてくれる演技でした。

もう1つのジュニアチーム・NPOぎふ新体操クラブは、少々ミスはあったものの、しっかり演技をまとめて6位入賞。ぎふ国体の対象年齢の選手はこのチームに多いのでしょうが、ぎふらしいしっかりした演技だったと思います。とくに入りの技は、かなり難しそうでインパクトありました。こういうのに挑戦してくるところが、私の思う「ぎふらしさ」です。
それでいて、この作品はとてもリズミカルでキュート! 新体操界をがしがしと切り拓いてきた時期のぎふの演技とは、かなり印象が違いました。

ぎふジュニア

ジュニア6位●NPOぎふ新体操クラブ(舛中美月・服部華歩・二俣清美・原万都里・平田理紗・渡辺友莉恵・鈴木歩佳)

先輩たちの「強さ」を継承しつつ、先輩たちとはまた違う新しい「NPOぎふ」をこのチームが築き上げつつある、と感じる演技でした。全日本ジュニアにも出場してくるはずですので、そこではまたさらに磨きのかかった演技を見せてくれることを期待したいです。

そして、今の「強いNPOぎふ」を作り上げてきた世代が、いよいよ高校生最後の年を迎えています。明日からの千葉国体にも出てくるメンバーでもあるシニアチームは、2位で見事、オールジャパンの出場権を獲得しました。岐阜済美高校で出場したインターハイは、7位でオールジャパンの出場権を逃していますから、リベンジを果たした形です。

ぎふシニア

シニア2位●NPOぎふ新体操クラブ(伊藤加奈・糸川みなみ・田中澄香・高田夏穂・小出菜子美・横山加奈・大西彩貴)

これぞまさしく「ぎふらしさ」炸裂の挑戦的な演技だと思います。とくに演技終盤の交換の連続は、「えー! えー! えー!」とドキドキします。五月雨のようにフープが飛び交い、それも手での投げ受けがほとんどない! いつどこで場外になってもおかしくないような。そんなリスキーな演技をぐいぐいとこなすたくましいNPOぎふらしいチームがこのシニアです。高3の選手が何人かいますが、彼女たちのあの手具操作能力の高さは、ぜひこの先もなんらかの形で新体操を続けてほしい、まだまだ見せてほしいと思うものでした。スーパージュニア、いやスーパーチャイルドとして早くから注目されつつ、プレッシャーも抱えつつ、よくぞここまで頑張ってこれた、とその努力と根性には頭が下がります。どうか千葉国体でも、彼女たちが集大成にふさわしいスカッとするような演技ができるように、と願ってやみません。

ぎふのジュニア選手たちも、身体能力や手具操作といった面では、しっかり先輩たちのよさを継承しています。そこにはおそらく的確なトレーニングの裏付けがあるのでしょう。
あとは、この先輩たちのもつ「精神的な強さ」をどう継承していくか、でしょう。そこがうまくつながったときに、NPOぎふは、また次の黄金時代を迎えるのではないでしょうか。

「世界で戦うために」という言葉の前で、国際基準ではない体型の子ども達が、新体操に夢をもちにくい時代、のような気がしています。だけど、その努力がたとえ「世界の舞台」にはつながらなかったとしても、こんなにも人の心をうつ形で実ることがあるということを、NPOぎふの演技に教えられたことが、私は何回もあります。今の日本の新体操、これからの日本の新体操にとって、そういう意義を見せてくれるチームや選手は貴重です。まだまだ、NPOぎふには頑張ってほしい、そう期待してやみません。

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20年近くほぼ持ち出しで新体操の情報発信を続けてきました。サポートいただけたら、きっとそれはすぐに取材費につぎ込みます(笑)。