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流行の歌謡曲も出会いは楽譜が多い私に「少年時代」は格別 2024年7月24日

教員の仕事と課外活動の指導に、他校や一般の楽団の指導指揮をしているころの私は、テレビを見る時間もなく、誰もが知ってるような歌謡曲でさえ聞いたことがないことが多くありました。

けれども、メンバーや聴いて下さる方々は、吹奏楽やクラシックなどの曲ばかりではなく、知っている曲を演奏したいのです。
それで、私は曲名を教えてもらって楽譜を購入します。そして、楽譜を配って、指揮者用の楽譜から頭の中でその曲を思い浮かべて、指揮をします。

いくらなんでも、こんなことを私もすぐにできたのではありません。
相当に指揮を経験している人でも、最初はその曲を聞いてみることが多いものです。聞いてから楽譜を見る人もいれば、楽譜を見ながら聞く人もいます。どちらにしても、だいたいどんな曲なのかを音源を通して感じをつかむのです。

その時間がない。特に歌謡曲やアニメソングなどの場合は、音源を聞いて準備するほどのこともないので、メンバーに楽譜を配ってしばらく自分もスコア(指揮者用楽譜)を見て、速さや小節の進む順番を確認したら、もう合奏を始めます。

そして初めての合奏が終わったら、私はメンバーに聞くのです。
「こんな感じで合ってるの」
メンバーが頷くのを見て内心はほっとしてから、明らかに誰かが間違っていたところを直したり楽譜から読み取れることをできるようにしたりする練習に入るのです。

また、前置きが長くなりましたが、夏の曲を思い浮かべているうちに、そのように楽譜から知った曲がいくつもありました。練習の様子まで思い出せるのは「ひと夏の経験」(山口百恵1974)や「浪漫飛行」(米米Club1990)、そして「少年時代」(井上陽水1990)などです。

「ひと夏の経験」は、高校生指揮者として先輩たちの前で指揮を始めた頃で、「経験」を「体験」と言い間違えたところ、「それはかなり意味が際どくなる」と先輩たちに冷やかせられた思い出があります。
「浪漫飛行」は小学生たちがやりたいと言い出したのでやってみました。「とてもいい感じの曲だね」と言ったら、小学生たちが上から目線で「ちゃんとわかる人なんだな」のように反応したのを覚えています。

さて「少年時代」です。この曲は卒業生として高校生の吹奏楽部の指導をしていて初めて出会いました。楽譜を眺めているときに、どうしても一か所だけどうすればよいのかわからない所があったのと、全体として、よくある歌謡曲とは音の構成が違って味わい深い音楽のようだと感じました。

わからない所は、あの一度曲が止まるような感じになるところで、間の取り方が楽譜だけではつかみきれず、高校生に「こんな感じかな」と聞いた覚えがあります。また前半の語りと歌の配分、間奏のトランペットの高い音が、一つのまとまりにまで楽譜からはつかめなかった悔しさがありました。

そのために「少年時代」だけは、少しでも早く、もとの歌を聴きたいと思いました。そして、実際に聴いて、これはすごい曲、さすがに陽水、などと感動したのでした。おかげで、今も大好きな曲の一つになっています。
ただ先ほどから、練習後に一番最初に聴いたのが女性の声であったように思われるので調べてみたのですが、1994(H6)年から中学や高校の音楽の教科書でも取り上げられるようになったと書かれていますので、ひょっとしたら、吹奏楽部の高校生に歌ってもらったのかも知れません。
とても気持ちよさそうに歌っていたのも印象的です。

もちろん井上陽水本人の歌は、とてもいいです。あらためて今も聴いていますが、この録音では、かなり声に張りがありますので、これを女性の歌のように感じていたのかも知れません。いかにも陽水らしい録音もあります。

この曲は、ピアノの前奏から弦楽器の動きになり、途中でピッコロトランペットのソロが入り、小太鼓の小気味よいリズムが鳴り、全体に伴奏がとても贅沢な音作りになっているので、歌だけでなく、演奏しても気持ちのよいものになっています。
歌詞は晩夏と盛夏を行き来しますが、私には格別な夏の曲です。

聴いて思い出深い夏の定番の歌謡曲は私にもありますので、それはまた今度に書きます。

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