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アニメの飲酒描写は飲酒描写ではないので、表現の自由を守るためには萌えないべきなのかもしれない

下記リンクの記事について考える。

どういう内容かというと、
・漫画やアニメで描かれるお酒を飲むキャラは肯定的に書かれがち。
・筆者(自由さのサブさん)はお酒が害悪だと考えている。
・筆者はお酒は害悪だと考えるので肯定的に描かれるのは不満だが、日本社会はお酒に許容的だし、表現の自由としては認める。
といったものと受け止めました。詳細は読んでいただくとして。

最近のアニメは、特にかわいい女の子ばかり登場する、萌え系アニメはほとんど見ないのであまり分かりませんが、なんとなく萌え系アニメを思い浮かべると、女子高生ぐらいの主人公(たち)に対して、大学生ぐらいのお酒好きのお姉さんキャラは、テンプレとして多いような気がします。

立ち位置としては、主人公群(中高生)-酒好き姉さん(大学生から20代中盤ぐらい)ー大人(30歳前後・主人公の親世代から上)として描かれる、メインキャラの王道ではないが萌えられない大人でもない、中間の存在にあるような気がします。

元記事にあるように、お酒好きな彼女たちは、だらしのない人物と見なされるが、愛すべき人物であり、否定的に描かれる事はあまりない。酔って主人公たちにからんだりするが、結局はその程度の悪さであり、酒に酔って両親を殴ったり、酒代欲しさにパパ活したり、ピンクの像の幻覚が見えたり…はたまにするかもしれませんが、萌え系アニメの世界のふわふわ感を乱す事はない。サザエさんでいえば、カツオがいたずらするぐらいの悪なわけです。

さてここで1つ目の疑問。彼女たちは、アルコール中毒でしょうか?

アルコール中毒が、精神的にも肉体的にもお酒を摂取する事が最上位の価値にある状況だとすると、彼女たちはアル中ではない。彼女たち自身の人生や家族を壊す事なく、酒を飲み続けいつも酔っているキャラとして描かれる。

元記事でも「データベース」という言葉が出てきますが、批評家の東浩紀さんの著書に『動物化するポストモダン』という本があり、その中に「作品(漫画やアニメ)のデータベース消費」という概念があります。簡単にいえば、「ツンデレ」「妹」といった萌えの記号の貯蔵庫(データベース)があり、その貯蔵庫の記号の組み合わせとして個別の作品、というか萌えキャラはあり、われわれはそのキャラに、パブロフの犬的に、オートマチックに萌える(消費する)といったものです。

「アル中」(あくまで萌えアニメ中の)という萌え要素は、現実のお酒・アルコール中毒者の状況とは、どちらもお酒というアイテムによって引き起こされるものであっても、リンクはしていない。お酒を飲む事によって引き起こされるから現実とつながっているように見えても、古いアニメでいえばハンマーでつぶされたポパイが次のシーンで無傷で活躍するとしてもハンマーで死んだ者は現実には死んだままであるように、異なる。アニメのキャラが酩酊状態になるにしても、お酒を飲む必要はなく、虹を見たから、で良いわけです。病的に上機嫌なキャラが必要で、単にそのアイテムがお酒である。ナチュラルに上機嫌で急に眠ったりするキャラがアニメにいたら、視聴者も「なんだこの異常者は」と思うが、お酒好きキャラであれば、まぁ憎めないキャラに見られる。お酒のネガティブな面は製作者の制御内として表れる。お酒が肯定的に描かれるのではなく、キャラの肯定さ(萌えられるか)がありそのアクセサリーがお酒で、虹を見る事でも良い。お酒に対して、日本社会が許容的であるから、お酒がそのアイテムになりがちなのは確かだと思いますが。

さて2つ目の疑問です。アルコールより悪いと思われる物(ドラッグ・タバコなど)は排除されるのに、アルコールはなぜ排除されないのか?

最近のアニメや、地上波のテレビ番組、喫煙シーン、あまり見ませんよね。「タバコを吸ってんなぁ」と感じるのは、ハードボイルド物、現在でも続くシリーズでいえば「攻殻機動隊」など、特定のジャンルに限られる。ガンダムシリーズでも初代に近い頃は、渋めのおじさんは葉巻をやっていたように記憶する、少なくともタバコを吸っていても不自然に感じなかったように思います。翻って「水星の魔女」、タバコを吸うキャラ、いたのかなぁ。まぁガンダムはドラッグでニュータイプもどきになる苦悩を描く伝統もありますが。

少なくとも、昔はタバコの描写に今よりも寛容だった。ドラッグについていうと、ヤンキー・ヤクザジャンルの漫画でも、だいたいドラッグ使っている方が喧嘩に負ける。ドラッグ販売の元締めは極悪人で、最後には主人公には負ける。萌え系アニメでドラッグやっているのは…実は結構見ますよね。

ドラッグといっても現実にシェアを持つコカイン・ヘロインなんかではなく、謎の伝染病でゾンビ化したり、謎の興奮剤で敵をキルするだけのマシーンになったり。

お酒との比較で言えば、タバコは消えてしまった。渋いアイテムとしてデータベースに登録されていたが時代遅れになり、時代遅れデータベースからたまにダサいアイテムとして、旧世紀の化石キャラのみに許される。ドラッグは社会的に良くないしクレーム来そうだし、使わなくていい。お酒なしで上機嫌は不自然だが、ドラッグなしでキリングマシーンは自然だから。

じゃあ流行りの異世界転生は、現実の何のアイテムに対応しているのでしょうか? 俺TUEEの美少女ハーレム願望や!と言いたい所ですが、努力(死に戻り)し続ければいつかは報われる(報われたい)なんて、ささやかな望みなのかもしれません。

あなたの心のスキマが埋まりましたら、ソーレッ!エイヤサッ!エイヤサッ!エイヤサッ!あなたのいいとこ見てみたいっ♡エイヤサッ!エイヤサッ!エイヤサッ!