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涼海ネモの快進撃とVtuber

 ななしいんく所属(元緋翼のクロスピース)の涼海ネモの快進撃が続いている。2023年8月1日時点で、2020年デビューの獅子王クリス以来のチャンネル登録者数5万人も目前だ。(追記:2023年8月1日に5万人登録達成)
 涼海ネモがどんなVtuberなのか。

 代表曲であり、自己紹介ソングでもあるUmenityを聴いてもらえれば、多くの言葉は必要ないはずだ。noteユーザーの中で行われているVtuber2023年上半期オリ曲セレクションにも多数入選している、筋金入りの名曲だ。

 涼海ネモが所属していた緋翼のクロスピースはやや不遇なグループだった。(後に全グループが解体されななしいんくに統合された)
 まず他の事務所でもたびたび取り沙汰された登録者数バグに見舞われた。みるみるうちの登録者数が減っていき、活動を続けて増えたかと思ったらまた減るを繰り返した。
 また、私自身はそれが失敗だったとまでは思っていないのだけれど、長らくの間20時~24時までの各自1時間のリレー配信形式を運営から指示されており、また、先輩とのコラボも禁止されていた。この期間、本人たちもやりたいことをやれない状況だったと後に述懐している。
 そして閉鎖的な運用を続けたことで、成功の先駆者としてのあにまーれ、ハニーストラップの知名度がほとんど貢献しないままに時が経ってしまい、2万人が遠いという状況が続いてしまった。

 そんな中で涼海ネモは歌声とクソガキキャラを武器に2023年3月21日にひよクロ初の2万人登録を達成。その後も堅調に数字を伸ばし、6月9日に3万人、7月13日に4万人と加速し続けている。
 最も大きかったのは活動初期からコツコツと投稿し続けていた歌みたshortがバズったことだろうか。当初は再生数もあまり回らず登録者にあまり貢献はしていなかったが次第に数万再生する動画も増え、5月12日に投稿した

 ダーリンのカバーがバズり「ななしいんく外」の多くの視聴者の目に耳に触れることとなった。ひよクロはコメントのメンバーシップ率が非常に高いのだが、コメント欄を見るとメンバー外、初見さんから絶賛のコメントが数多く寄せられている。業界(どこの?)で言うところの「見つかった」というやつだろうか。
 その後、ダーリンのバズが収まりかけた7月14日に投稿した転生林檎の替え歌が再度バズり、再び多くの衆目を集めることとなった。

 涼海ネモは配信をメインに活動するいわゆる普通のVtuberではあるのだが、配信の再生数を見ると顕著に歌枠の再生数が多い。雑談枠の数倍の再生が回っていることも少なくない。それほど、彼女の「歌」を目当てに彼女の配信を見に来る人がいるということだ。

 正直、私の中でVtuberの歌枠はよくて「ファンサ」。すこし意地の悪い言い方をするなら「ライバーがやりたいことに付き合ってあげる枠」という印象が少なからずあった。Vtuberは基本的には配信者であって歌手ではない。歌に多くは求めていなかったのだ。それよりは雑談やゲーム配信といった個人の考えや中身が見えるような配信が好きだった。流行りの歌知らんし。
 実際、多くのVtuberの配信で歌枠が通常のゲーム配信枠などよりも人が集まることはあまり多くない。本当にコアなファンだけが見に来るようなコンテンツだと思っていた。
 だが、涼海ネモの視聴者の多くは今や彼女の「歌枠」こそを楽しみにしている。先日、彼女は他所のVsingerとコラボしていたが、そのコラボ相手と同じく涼海ネモはVsingerと言っても過言ではないだろう。
(他のメンバーがそうではないという意味ではないが)涼海ネモの歌声には涼海ネモにしか出せない強みがある。互換性がない涼海ネモだけの武器だ。この歌声を聴くためには、彼女の歌枠を歌みた動画をshortを聴くしかない。

 世の中には数多くのVtuberがいる。何万人もいるらしい。
 上位層だけでも数百人はいる。
 そんな中で自分を「見つけて」もらって、"一撃で"その人たちに「この人じゃなきゃいけない」と思わせる何かを持っているということはとても大切だが、めちゃくちゃ難しいことだ。
 私はななしいんくのタレントは誰も唯一無二のタレントだと思っている。だが、それでもにじさんじで、ホロライブで、ぶいすぽで、「似たようなエンタメ」を摂取することが絶対にできないのかと問われると答えに詰まる。
 多くのエンタメには互換性がある。テレビに登場するタレントが一つの番組内ですら入れ代わり立ち代わりコロコロ変わっていくように、多くのタレントは多くの人にとっては誰でもいいっちゃ誰でもいいのだ。
 そしてそんな多くの人はまず入門として一番シェアが大きな場所を見る。今ならアイドル路線はホロライブ、バラエティはにじさんじ、ゲームならぶいすぽだろうか。そして少なくない人はそこで満足してしまう。今や業界のシェアは上位数社がほとんどを掌握してしまっていて、中堅以降は海の底に沈んでいる状況だ。

 その海の底から努力でつかんだ歌声を響かせるのが涼海ネモだ。
 大海の中で、今はまだ小さな泡かもしれないが、いつかこの泡が海上まで達する日が来るに違いない。彼女がその小さな身体で歌い続ける限りは。

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