【with wedding vol.19】スマホ世代の常識とブライダル業界の非常識

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2018年12月号 第94号 の内容を転載しております。

この連載では、インターネットシリーズが続いていますが、ウエディングにとってのそれは集客に限りません。例えば、採用の観点でも、インターネットの影響は明確にあります。今の20代の方々は、圧倒的なスマホ世代。例えば、仕事のやり方が紙を基本にした昭和のままでは、定着もおぼつかなければ、採用上の魅力もなく、仕事の進め方も圧倒的に遅くなり、果ては企業ブランディングへの負の影響をもたらし、結婚式場としてのブランディングや集客へのマイナスももたらしかねません。インターネットによる透明化で、組織ブランディングと事業ブランディングはイコールの時代になり、社内に配信されるブラックなメール、ブラックな指示ですら、1社員の記者会見で集中砲火を浴び、誰かの告発や何気ないSNSへの投稿で面白おかしく炎上する時代です。「どんなお客様でも決定するまで帰すな!」のような話は極めてリスキーであると認識すべきでしょう。
今回、どんなギャップがあるかを確かめ、どんな変革が我々に必要なのかを考えてみましょう。

世界はどうなっているか

Amazon go という無人コンビニがアメリカに生まれています。今は3店舗とのことですが、2021年までに3000店舗に増える計画と言われています。Amazon goは無人コンビニで、ガードマン以外は誰もおらず、利用者は、入店時にスマホで認証をし、自分が欲しいものをカバンに入れて、やはりスマホで認証して店外へ出るだけで何を買ったのかが自動的に計算されて、クレジットカードで精算されるという形式になっています。天井などに無数のセンサーが設置されていて、棚から商品をとると誰が何を取ったのかがわかる技術が使用されているそうです。私も見たことはありませんが、テクノロジーの進化がここまできているという事実を知っておく必要があるでしょう。例えば、このようなニュースを皆さまはご存知でしたでしょうか。ブライダル業界の方は、知らないとおっしゃるケースが多いのですが、仮にAmazon go的な体験を前提にしている消費者や社員が増えてくることを想定した場合に、今のウエディングで提供されているサービスの在り方は今のままで良いのか危惧しています。

目の前でどんなギャップが生まれているか

もちろん、Amazon goのような世界が日本にくるから、ブライダル業界としてもこういうことをしておきましょうというのは、気が早い話です。しかしながら、確実にスマホ世代がどんどん増えていく中で、いまだにアナログなやり方を続けていくのは、それだけで「この会社って・・・」と敬遠されるリスクがあると思います。例えば、採用の観点で、「エントリーシートは手書き必須」というのは致命的になるでしょう。どうしても入社したい人は喜んで対応してくれるでしょうが、入社意向がまだ高くないポテンシャルの高い人はそれで離脱する可能性が高いです。紙でもらって、スキャンしてコピーするといった人事スタッフのオペレーションも無駄ですし、最初からファイルでもらっておけばその共有で事足りるでしょう。面接でPCをもっていくのが億劫というのも本質的ではないと思いますし、であれば、i padか個人のスマホで見せると良良いでしょう。

また、無料のビデオ通話システムを社外と使用するくらいは当前になっても良いと思います。地方にある会場の経営者が、東京に出張して情報を得ることは非常に良いことではあるのですが、ツールを活用するだけで頻度も密度も高めることが可能になるでしょう。弊社でもコンサルティングをビデオ通話で行わせていただくことが多いですが、1-2回で慣れるものですし、そのようなツールを使いこなせている会社の方が諸々の取組のレベルも高いなと感じられることが多いです。もちろん対面の方が良いケースもあるので、使い分けだと思いますが、選択肢に当たり前に入っている状態は重要だろうと感じられます。

その他、契約書管理システムならクラウドサイン、入退社管理システムならsmartHRのように、SaaSのシステムも多岐にわたります。スマホで簡単に済みそうなことが、なぜか仕事だと非効率になってしまうという状態を良しとしない人たちがどんどん増えていくと考えられます。

インターネットの活用を前提にした経営の在り方

ウエディング業界の特徴として、SNSで仕事の発信をしている人が極めて少ないことがあげられます。個人が発信できる時代です。会場としてのinstagramも結構なのですが、個人単位でのinstagramやtwitter、facebookでも十分メディア化されるもの。もちろん、SNSにあげてはいけない情報をあげてしまうという過去の反省から禁止をしているのだと思いますが、SNSでの発信により、個々人も社外から様々なノウハウやニュースを知ることにつながり、成長のきっかけになるもの
一概に禁止をしてしまうのは、SNS慣れしているスマホ世代のポテンシャルを大きく損なってしまっているのではと危惧します。それよりも、SNSのリテラシーを高め、個々人が発信をしている状態の方が企業にとってもメリットが大きいはずです。
一方、ある会社では、社長が新入社員全員にfacebookで友だち申請を強要し、しない場合は「なぜしないのか」と詰めよったり、自分が現場を激励する様子を社員にアップしろと強制した結果、みなfacebookを使うのを辞めてしまったそうです。

終わりに

インターネットがもつ公開性や利便性を最大限活用するためには、情報統制で会社をマネジメントするのではなく、情報公開により会社をマネジメントしていくことが必要な時代と言えます。結婚式は絶対に失敗できないという要素が大きく、アレルギーやノロウィルスへの対応など敏感な局面もあるため、会社全体としてリスクヘッジの優先度高くなるのは自然な流れなのですが、何もかも統制を図るのではなく、スマホ世代に合わせて、いまの顧客の感覚に合わせた経営も志向していく必要が強くあると言えるでしょう。インターネットを経営のベースにいかに据えるか。極めて難しいことだと思いますが、この感覚を持っている会社が勝ち組になっていくのは間違いありませんし、まずは世界の情報を知ることから始めるということでも全く遅くはないと思います。世界はこれからも加速度的に変化していきます。個社個社の変化が産業全体の進化をもたらします。「結婚式=古い産業」のイメージを変えることは、「結婚式=変わってきている」と顧客の印象を高めることにもつながります。インターネットの活用というと言い古されている言葉になりますが、内容の変化をとらまえながら、各社で取り組むヒントになれば幸いです。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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