見出し画像

#017 ガングロヤマンバ楢山節考

私が生きてきたのとは別の世界線でその昔、「ヤマンバ」と呼ばれるファッションの一大ムーブメントがあった。

誰もがガングロでヤマンバだった訳ではなく、あくまで渋谷を中心としたニッチなカルチャーだったが、メディアが面白がって「理解不能なイマドキの若者」として象徴的に取り上げるものだから、その妖怪の知名度は全国区となった。

実際のところ、他の地域ではヤマンバはおろかガングロすら希少だった。
でも渋谷に行けば、109の階段でガングロヤマンバ雛人形展が開ける程度にはいた。

あれのどこがいいのか、これまでずっと理解できなかった。
しかし最近SNSを見ながら、「最近の若い子は自分の価値を理解しすぎていて怖いな」と思った瞬間、気が付いた。

ガングロヤマンバこそ、世間におもねらない女性の姿だったのではないか?と、20年以上が過ぎてやっと理解の範疇に入ってきた。

男性からの性的な目線、ナンパ、ヤッた男の数とか女同士のマウント合戦。有り体なオシャレで可愛くなってしまうと、そうしたくだらないことに巻き込まれるし、ヤマンバ達はきっと飽き飽きしていたのだ。

だから、ギャルの価値観を共有するもの同士で遊びたかっただけの彼女らは、部族になった。

競争は性的なものではなく、どれだけ黒くなれるかとか、どれだけ髪を白くブリーチできるかとか、目元を白く塗る範囲をどんどん広げていったりとか、仲間うちでどんどん先鋭化しては爆笑していたに違いない。

つまり、世間がこうあるべきと考える女性像を意識的にはみだしていた。
ガングロヤマンバというのは、実は最高にカッコよかったのではないか。

しかし時代が下り、黒塗りに明け暮れた少女達も大人の階段を上る。
どこかでナチュラルに戻り、進学なり就職なりをしてしまう。

そうしてギャルはひとり、またひとりと、楢山参りに出てヤマンバを捨ててくる。

立ち去ろうとするが最後に振り向き、別れの言葉をかける。

チョリーッス!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?