頚椎捻挫について

はじめに

頸部外傷のなかで、脱臼や骨折がなく、神経症状も生じないものを頚椎捻挫とよぶ。

頸部に比較的軽度な外力が加わり生じた頚椎周辺の靭帯、筋群、椎間板など軟部組織の損傷を総称して頚椎捻挫とよぶ。
筋損傷は障害筋周囲に圧痛があり、診断は容易。湿布や消炎鎮痛剤の投与によって速やかに軽快する。

頚椎捻挫には明らかな骨損傷、脱臼、脊髄損傷、神経・神経根損傷などの重度な合併症状がなく、主症状は損傷部の痛みと頚部の運動制限であるため、スポーツ活動を継続できる場合もあるが、おおむね数日から数週間ほど症状が継続し、素早い頸部の動きが制限されスポーツ活動に支障を及ぼす、また、自律神経の異常をともなってめまいや嘔吐などが数ヶ月にも及んで継続するいわゆる「むち打ち損傷」となることもある。

病態

頸部に衝撃を受けることによって頸部痛が出現する。その他、肩甲帯の疼痛、上肢のしびれ、頭痛、嘔気、めまい、眼症状、耳鳴りなどが出現することがある。
これらの症状の中で、頸部痛、肩甲帯の疼痛以外のいわゆる不定愁訴といわれる症状が前面に出て慢性化する場合は外傷性頸部症候群(いわゆる「むち打ち症」)と呼ばれる。

椎間関節には、膝関節の半月板に似た介在組織である滑膜ひだが存在する。
頸部が衝撃を受けた時に、椎間関節で上下の椎骨がぶつかり(椎間関節のインピンジメント)滑膜ひだが炎症を起こし、様々な症状が出ると考えられている。
頚椎捻挫受傷者い出現する頸部痛は、受傷直後に出現することもあるが、受傷数時間後、あるいは翌朝に疼痛を強く感じることが多く、理由として滑膜の炎症が衝撃を受けてから数時間を経て出現し、椎間関節の痛みを引き起こし、また、滑膜の腫脹によって関節可動域制限が症状として現れてくると考えられる。

評価

頚椎の椎間関節障害の症状として、頚部から肩甲帯にかけての疼痛が出現する。
椎間関節部の圧痛の有無を評価する。頚椎後方・正中より1〜2横指はなれた部位の圧痛の有無を確認する。
可動域評価は、伸展動作が制限される。また、頚椎を伸展させながら、患側へ回旋させることで疼痛を誘発されれば椎間関節障害を強く疑う。
通常は神経学的所見では異常所見は認めないが、関節の炎症が隣接する神経根へも影響を与えることによって、上肢、手指のしびれ感を訴えることがある。この症状を神経根障害と鑑別するために、深部腱反射、筋力テスト、知覚テストなどの神経学的所見も評価する必要がある。

医療機関を受診させるべき事項

①受傷時に頭部や頚部に激しい痛みをともなっている場合
②上肢まで放散する痛みや痺れが存在する場合
③その他の神経症状が認められる場合
④数日間受傷時の症状が軽減しない場合
⑤何度も同様の症状を繰り返す場合

引用文献
・公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト⑦アスレティックリハビリテーション
・公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト③スポーツ外傷・障害の基礎知識

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