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チチカカ湖を一周する
思い立ったが吉日で、チチカカ湖を一周しようと出発した。
チチカカ湖とは、ボリビアとペルーの間にある湖で、標高は4000m弱、面積は8000㎢を超える。ちなみに、日本一大きな湖である琵琶湖は670㎢。桁が違う。
ラパス→ティワナク→コパカバーナ
とりあえず、ラパス市内の自宅からバスでコパカバーナという湖畔の街へ向かった。途中、ティワナクという遺跡がある。この遺跡は、巨大な石でつくられた像が有名で、人々はそれをモノリートと呼んでいた。
モノはスペイン語で猿のことなので、私はてっきり猿の神様の偶像だと思っていた。この土地では猿を崇めていたんだね、と。けれど、メキシコの歴史の本を読んでいた時にもモノリートという単語が出てきて、それは単に巨石建築物(モノリス)を意味する一般名詞だと知った。猿じゃなかった。
そんな巨石建築物を通過して、いよいよコパカバーナに着くと、とりあえず食事。ボリビアには海が無いけれど、ここはまるで海。取れたてのお魚を食べることができる。新鮮で美味しい。
腹ごしらえが済んだところで、ここからが本番。
「よし、この湖の周りをぐるっと一周するぞ!」気合を入れ直して再出発した。次の目的地は、国境。Desaguadero(デサグアデロ)という村。
国境を越えてプーノ→その先へ
国境には入管センターがあり、パスポートを出してそこで出国のスタンプをもらう。隣にはペルーの入管センターがあり、そこで入国のスタンプをもらう。そしてここから、ペルー!
プーノという町を目指した。
到着したのは午後3時ごろだった。プーノはコパカバーナとはまったくちがう、さびれた町だった。お腹がすいたけれど、食事ができそうな場所が見当たらない。人も少ない。今日が日曜日だからなのか、どこも閉まっている。
バス乗り場まで戻って運転手に、反対側の国境からボリビアに入りたい、と伝えた。運転手は、「あのバスに乗りな」と教えてくれた。
ここから次の村までの道のり、とにかく何もなかった。前方はひたすら草原が続き、右を見るとアンデスの山々、左は海のような光景が続いていた。そして時々、羊の群れが道路をふさぐ。
昔、「ベネトンの世紀」という本を読んだことがある。
そこにボリビアについての記述もあり、この国とビジネス以外のつながりももちたい、と書かれていた。それは、ボリビアの農村部をバスで移動していた時に羊の群れを見て、そう感じた、と。
私もここで羊の群れを見てなんとなく、ベネトンの気持ちが分かったような気がした。この土地から毛を刈り取って搾取するようなまねは、やらないほうがいい。ビジネスのために破壊してしまっては、もったいない。そんな気持ちになった。はたしてベネトンもそういう意味で”ビジネス以外のつながり”と感じたのか真相はわからないけれど。
ついに日が暮れた。そしてここには、民家すら見当たらない。
どうしよう。どうしようもない。
日が暮れた
そもそも、こんなに大きな湖を一日でぐるっと周ろうなんで無理だったのだ。わたし馬鹿よね、お馬鹿さんよね、歌ってみても誰も小銭すら投げてくれない。そもそも、運転手と私しかここにいない。
私「あのぅ・・・、とりあえずプーノまで戻りたいです」
運転手「は?もうバスの時間は終わりだよ」
私「え!」
このあたりから、私の記憶はない。でも、なんとかプーノ、そして国境まで戻ることができた。よかった、あと一歩でボリビアだ!
あと一歩!
本当にあと一歩のところで、警察が出てきた。もう夜、23時。入管センターは閉まっている。国境を守っているのはこの警察官1名だった。
警官「入管は明日の朝8時に開くから、今夜はそこのアロハミエントに泊りなさい」
アロハミエントとは、宿泊施設の一種だがホテルほどきちんとしたところではなく、部屋の中にベッドが置いてあるだけ、しかもたいてい鍵が壊れている。とても私のような若くて美人な東洋のおみなごが寝泊まりできる空間ではない。絶対に、強盗とか強姦とか、なんか来るよね、、、
(以前、日本の組織からの派遣でボリビアの村落でボランティアをしていた時、組織から指定されてアロハミエントのようなところに住んだことがあったが、やばかった。丑三つ時に、何者かが私の部屋のドアを乱暴に叩く音で目が覚めて、ドアノブがガチャガチャと動いていて、どう考えても何者かがドアをこじ開けようとしてる。耳を澄ますと複数の男性の声が聞こえてきた。自分の命はもうない、と思った。この話はまたあとで。)
国境で深夜、あのときの恐怖が蘇る。絶対に、ここには泊まれない。
どうしても今夜中にお家に帰りたい。当時はまだスマートフォンが誕生しておらず、SiriやGoogleに「チチカカ湖を一周するには?」と聞けば「一日では無理です」と教えてもらえる時代ではなかった。とはいえ、少し考えればわかったことなのに、ここまできてやっとパナマ運河を泳いで渡るくらいの阿保なことをしていると気が付き情けなく思った。
(パナマ運河を泳いで渡った冒険家のリチャード・ハリバートンさん、阿保って言ってごめんなさい)。
架空の夫の国籍は?
深夜の国境で警官は、「ボリビアで君は何をしているんだ?こんな時間にこんなところで東洋の美女が一人でいるなんておかしいだろ?」と言う。
ごもっともである。
そして、「独身ですか?」と聞かれた。こういうナンパには慣れていた。
とりあえず、嘘でも本当でも既婚者だと答えておけばそれ以上のことはされない。そして、「夫が待ってるから帰らなきゃ」と私は警官に頼んだ。
「おまわりさん、おまわりさん、愛する旦那の元へ返してください。」と、
愛する旦那なんて古今東西どこにもいないのに、そういうことにした。
警官「夫さんは日本人か?何をしている人なんだ?」
私「・・・(どうしよう、夫なんてほんとうはいない)」
警官「日本人か?ボリビア人か?」"
とんでもない二択を迫られた。架空の夫に国籍を付与しなければならない。
どうしよう、どうしようもない。
どうしよう、どうしようもない。
どうしよう、どうしようもない。
そろそろ、24時を回る。
シンデレラだったらカボチャの馬車が迎えに来てくれるのに・・・。
架空の夫は、日本人?ボリビア人?日本人?ボリビア人?
ど、ち、ら、に、し、よう、か、、、な?????????
日本?
ボリビア?
日本?
ボリビア?
日本?
ボリビア?
私が出した答えはズバリ!!
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