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AI立案の「高齢化対策」、反発相次ぎ政府が異例の対応へ

高齢者人口が増加し、少子高齢化問題が深刻化する中、人工知能(AI)の提案した解決策が波紋を広げている。提案された解決策は、高齢世代の人権を侵害するものとして反発を招いている。アジア中央政府は対応に追われ、異例の「AI再委託」の許可を出した。

問題となった草案は、2082年12月にアジア中央政府の諮問機関がAI開発大手印州アイロンテックに作成依頼したもの。同社AIが提案した解決策によると、高齢者たちが受ける医療や年金、介護などのサービスは、若者たちが受けるものよりも低いレベルに設定されることになる。全体の医療費も高齢者が実質的により多く負担する仕組みになる。

この提案に対して、若者たちは好意的な反応を示している。彼らは、高齢者問題を解決することで、社会全体の負担が軽減されることに期待している。しかし、高齢者たちは、人権が侵害されることに対して強い反感を示している。

2020年代から始まった少子高齢化問題は、その後も深刻化を続け、2040年代には日本国内(当時)の総人口が1億人を割り込むなど、国家機能の存続危機にまで発展した。そんな中、政府は人工知能を活用して解決策を模索することになった。

2050年代に入り、政府が導入した人工知能は、高齢者の介護問題や、若者の育児問題を解決するなど、様々な分野で活躍するようになった。しかし2060年代からいわゆる強化人種アリルとの対立が世界的に広まり、同問題の解決は先送りにされてきた。

米州連合やアジア中央政府の設立などで各国の人口構成が変化し、従来の対策では効果が薄くなったためだ。こうした背景もあり、一部自治体で継続されていたAIによる草案作成委託に注目が集まることはなかった。だが、AIの提示する解決策が高齢者の人権を侵害するようなものであることが次第に明らかになってきた。

若者たちは、人工知能が提示する解決策を歓迎し、高齢者たちは反対するようになった。高齢者たちは、人工知能による介護や育児の自動化が進むことで、自分たちの存在価値が低下すると感じていた。経済的に豊かな高齢者たちは、若者たちへの投資を止めた。国内外のスタートアップ支援ファンドの資金確保が難航し創業率は悪化の一途をたどる。

その結果、若者たちと高齢者たちの間で対立が深まり、社会は分断されるようになった。さらに、高齢者たちが支配する政治的勢力が台頭し、若者たちの声が反映されにくくなるという懸念も生じている。

このような状況の中で、アジア中央政府は別のAIへの再委託を許可するという異例の判断を下した。諮問機関である高齢者支出管理検討会の王静座長は「解決策の改善に取り組み、社会の調和を取り戻すために努力を続けていく」とRevivePressの取材に語っている。

(葉月つむぐ)

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