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ルパン三世 「DEAD OR ALIVE」Ⅰ トリックの愛

原作、原作ベースの1st
パンチ先生が担当した「DEAD OR ALIVE」
遺作の「ルパンは今も燃えているか」

ルパン三世という男を考えた場合
これらが原作者の思想が入っている
ルパン像の雛型になるかと思う


「DEAD OR ALIVE」では、ルパンは国のプリンスでありクーデターの首謀者でもあるヒロイン・オーリエンダーの亡き恋人パニッシュに偽装する。

お宝頂戴のために死んだはずの王子に成りすましたのは、クーデターを引き起こし圧政を敷く首狩り将軍を混乱せるため。そしてこの変装がラストのお宝獲得の鍵になる。

盗みのためとはいえルパンがパニッシュに成り代わったため、ヒロインに束の間の幸せが舞い戻った。それはルパンが偶然彼女のペンダントにあったパニッシュとのツーショットを発見したためで、彼女と再会する予定はなかった。

なのに次元を使ってまで、彼女に信じさせる芝居を打っている。彼女のペンダントがお宝を開く鍵でもあるとわかったのは後のことで、ラストすべてを知ったオーリエンダーは過去を乗り越え笑顔に戻る。


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戦い終わって日が暮れて。シャツがはだけた胸を見せるルパンのまあセクシーなこと(笑)。パンチ先生は不二子の女の色気だけでなく男の色気も描いてる。体毛は男のロマンw


仲間がお宝をかき集めているのを背に、ルパンはヒロインの下へ歩いて行く。ルパンが寄り添う前から二人の会話が流れているのは、パンチ先生のアイディアだろうか?直接関わったのは最初と最後だけという。開けた胸、シャレた演出はパンチ先生っぽいんだけども。


先生が初監督した「DEAD OR ALIVE」は、「カリオストロの城」をかなり意識して作られている。王族以外の権力者による実権掌握、囚われの身のお姫様、その国の財宝を狙うルパン。あらすじはほぼ一緒。

違うのはルパンが救い出したはずのお姫様が銭形が用意した女スパイで、その元恋人にルパンが成りすますという、いかにもパンチ先生らしい多少無理があってもシチュエーションで楽しませるトリックは、観客をも騙してみせる。

ヒロインは死んだはずの恋人との再会に半信半疑で、信じ切っていたわけじゃない。でも二度と会えないと思っていた相手にたとえ嘘でも会えた、その幻想によって傷ついた心が癒され、過去を洗い流す勇気を生み、笑顔を取り戻させた。


人を欺く嘘、悪事のための変装が、時に人を幸せにする。トリックは幻でもあり、夢でもある。ルパンは盗みを働く悪の道化師であり、人を喜ばせる幸せのピエロでもある。

ルパンの持つトリックの二面性をよく表した物語だと思う。これはヒロインに対してだけでなく、我々観客に対しても、である。そしてこんな風にルパンの二面性に切り込み物語を作り上げるのは、原作者ならではと思う。


「殺し屋はブルースを歌う」で見せたルパンの愛は、ここでも恋人を失ったヒロインの過去を癒すという形で表現されている。

ルパンは「カリオストロの城」のようにお姫様を救い出せなかったけど、恋人を失った女スパイの悲しみを癒し、心を救っている。それは実際にお姫様を救うよりよっぽど難しいことかもしれない。

先生がルパンの話をお姫様を救う冒険談ではなく、過去に傷ついた女の心を救う物語にしたのは、男にとってそちらの方がより困難だからではと思う。囚われのお姫様を救うのは少年でも出来る。


不二子にしてもオーリエンダーにしても、男たちに混じって孤軍奮闘する一人前の腕を持つ大人の女性であり、それ故傷ついた過去を心に秘めている女たちだった。

先生の描くルパンのロマンは、そんな過去を持つ女たちを抱きしめ救う、大きな懐を持つ男としてのロマン。


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