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#2 空中で暮らす世界 空に浮かぶ未来の都市計画

アニメ作品の “天空の城ラピュタ”に代表されるように、重力に縛られた人間は昔から空に浮かぶ島や空中都市にロマンを感じてきました。しかし物語の中だけではなく、実は驚くような発想によって空中都市を実現しようとする建築アイデアがいくつも発表されています。空に浮かぶ未来の都市計画を参考にしながら、もしも「空中で暮らす世界」になったら、私たちのライフスタイルはどのように変化するのか、考えてみましょう。


地球周回軌道に乗せた小惑星からビルを吊り下げる!?

ニューヨークを拠点とするClouds Architecture Officeが2018年に発表した“ANALEMMA TOWER*”は、地球周回軌道に乗せた小惑星から巨大な建造物を吊り下げるという驚きの建築アイデア。宇宙空間で小惑星を捕まえ、地球の周回軌道に乗せたところから、カーボンナノチューブなどの強靭なケーブルを使い、軽量素材で建築したビルを吊り下げるそう。これは宇宙開発での軌道エレベーター構想に似た発想とも言えそうです。また、各種インフラも考えられており、電力は太陽光発電によってまかない、水は雲や雨から集めた水分を循環させることによって、サスティナブルな暮らしが考えられています。ビル自体が上空を移動できるのであれば、その時々の過ごしやすい地域にビルごと移動して暮らすこともできそうです。
 
この構想は、まだまだ技術的には実現不可能なコンセプト段階のものですが、近年の宇宙開発の目覚ましい発展速度を考えると、数十年後にはどうなっているかは正直わかりません。この構想を発表したClouds Architecture Officeは、現在NASAのパートナーとして火星での氷を使った住居の建築計画にも携わっており、航空宇宙分野から画期的なイノベーションが起こる可能性も十分に考えられます。

空中に浮かぶ巨大なタワーの上部は地上からは見えない(画像引用元:https://cloudsao.com/ANALEMMA-TOWER

ナノマテリアルと空気圧で建築物自体を浮かせるアイデア

先程とは全く異なる建築方法を採用した空中都市構想も発表されています。日本の建設会社である大林組が2050年に向けた構想として発表した“FUWWAT2050**”は、薄い膜と軽いフレームで出来た船のような建築物を、支柱からワイヤーで吊るという発想。ナノマテリアルを使って建造物そのものの重量を軽くし、さらに空気膜を作り空気の圧力によって浮力を生み出すことで、都市自体を空中に吊り下げられるのではないかとの仮説から生まれています。こういった空気膜構造建築の身近な例といえば東京ドームの屋根。ドームでは、内側から常に空気の圧力を加えることで屋根を押し上げて支える技術が使われています。最初に紹介した小惑星にビルを吊り下げる構想よりは、こちらの方が実現の可能性は高いのかもしれません。
 
現在、地上の建築物のほとんどは積み上げ式であるため、どうしても地震の影響を受けやすいというデメリットがあります。建築物を空中に浮かせることができれば、震災や津波、地球温暖化による海面上昇などの脅威から都市や人々を守ることも可能に。特に地震大国の日本では、自然災害に強い新たな建築方法として実現が期待されています。

沿岸部に設置された3基のFUWWAT2050は「サービス棟・住宅棟・商業施設棟」で一つの街を形成する (画像引用元:https://www.obayashi.co.jp/makebeyond/gallery/fuwwat2050-cm-30/

上層階が自然と外部に繋がる高層ビル建築

世界一高いビル(828m)であるドバイのブルジュ・ハリファは2010年に完成しましたが、その後も中国などでは600mを超える超高層ビルが次々と建設されています。建築技術の向上はもちろんですが、地球規模での人口増加と都市部への人口集中の問題からしても、高層ビルの建設ラッシュは今後も続くことでしょう。現在は富裕層の象徴とされるタワーマンションですが、高層ビルが増えた未来では高層階に居住することは当たり前になるかもしれません。そうした未来では、地上までの移動時間を節約し、ビル内だけで完結する生活を送る人も増えてきそうです。しかしながら、ただ無機質なビルの中だけで過ごす時間が多くなると、地上の動植物が恋しくなるとは思いませんか。

ベルギーの建築家 Vincent Callebaut による“ASIAN CAIRNS*** ”は、高層ビルにガラス張りの楕円形のドームがいくつもくっついている不思議な形状。その楕円形ドームがくっついている間に庭となるスペースを生み出し、ビル上層部にも緑地を作り出しています。水平方向にも移動が可能となり、いちいちエレベーターで地上に降りなくてもビル同士を移動することができるので、ある意味空中都市と呼べる高層ビル群が誕生するでしょう。

中央の支柱にいくつものガラス張りのドームがくっついた独特な建築デザイン (画像引用元:https://vincent.callebaut.org/zoom/projects/130104_asiancairns/asiancairns_pl001

まとめ

今回ご紹介した空中都市のアイデアはどれもコンセプトデザインの段階ですので、実現するためには今後の技術革新に期待するしかありません。しかし、高層ビル建設における技術進化や、急激に進む宇宙開発に目を向ければ、これらの未来都市も数十年後には実現可能なアイデアのようにも思えてきます。建築物が軽さを重視する世界になれば洋服も同様に「軽さ」が価値となる世界になるでしょうし、素材も風が強い空中で過ごすのに適切なものに変わってくることでしょう。もしもこれらの空中都市で暮らすとしたら、どのような恰好でどんな一日を過ごしてみたいか、その妄想が新しい一歩になるのかもしれません。

≪参照記事/ウェブサイト≫
* Clouds Architecture Office / ANALEMMA TOWER
https://cloudsao.com/ANALEMMA-TOWER
 
**株式会社大林組 / FUWWAT2050空中都市構想
https://www.obayashi.co.jp/makebeyond/gallery/fuwwat2050-cm-30/
 
***Vincent Callebaut Architectures / ASIAN CAIRNS
https://vincent.callebaut.org/object/130104_asiancairns/asiancairns/projects

(文・高橋 功樹/未来予報株式会社)


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