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ESG投資は、日本社会をいかに変えるか。~水野弘道さん、浜田敬子さんとリディフェスで対談

「ESG投資のその先、資本主義と社会課題の結び目はどこに?」というタイトルで、水野弘道さん(元GPIF投資責任者、テストモーターズ社外取締役)、浜田敬子さん(Business Insider Japan統括編集長)と対談がありました。

1.そもそも、ESG投資とは何か

 さて、改めてESGについて説明しておきます。2006年に国連のアナン事務総長が、E(環境)・S(社会)・S(ガバナンス)を重視した投資を行うことを提唱したのがきっかけ。2008年のリーマンショックによって世界中に広がりました。2400弱の年金基金や運用会社がESG投資を推進していて、世界中の企業が社会に目を向けるきっかけとなりました。
 ただ日本社会の対応は遅れました。その風向きを変えたのが水野さんです。彼が3月まで在籍していたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRI(ESG投資を推進する原則)に加盟したことで、日本の金融機関や大手企業が注目する流れをつくりました。

 水野さんはESGの重要性を確信し、最初は半信半疑だったGPIF職員に対しても、「これってESGの観点ではどう?」などと問い続け、ESGへのスタンスを明確にしたとのことでした。

2.日本企業はいかに変わるか

 ただ、まだまだ日本企業の環境や人権・ダイバーシティに対しての認識は高まっているとは言えません。水野さんいわく、「日本企業はもともとESGに十分取り組んでいると捉えすぎている」とのことでした。
 私も問題意識があります。外資企業は一度社会貢献に取り組むと決めたら、徹底的になると感じています。私は東日本大震災復興で様々な外資企業と付き合いましたが、彼らは社会貢献分野の専門家を雇い、長期的な視点でNPOや行政と接点をもち、課題解決に取り組んでいました。日本企業の場合、東日本大震災直後など、トップが主導するとある程度取り組みますが、担当者は人事ローテーションで配属されたもので専門性を有しておらず、短期的・表面的な取り組みにとどまっています。近年の災害でも、被災地支援に積極的に取り組む企業は外資系ばかりでした。
 建前でトップが発信するだけでなく、外部専門家をまねいたり、専門的なNPOと協業しながら、数年スパンで貢献活動をとる必要があります。

3.ソーシャルセクターはいかに変わるか

 NPOにも課題があります。海外でいえば、グリーンピースが、アップルが環境分野に配慮していないことを事実(データ)をもとに訴えたことがきっかけとなり、アップルは全米4ヶ所のデータセンター全ての電力を再生可能エネルギーで調達する方針に転換しました。

 また国際NGOのCDPは、企業による気候変動への取り組みを格付け。これにより、機関投資家がESG銘柄を選ぶ上で大きな影響を与えています。
 機関投資家や行政、企業の社会貢献への意識は高まっており、社会貢献分野の専門家のニーズは高まり続けています。(RCFにも相談が相次いでいますし、私自身も社会貢献担当として引き抜かれそうになったことがあります)。日本のNPOも、自分たちがその社会課題解決領域では専門であることを自覚し、関係者との協働を進めていくべきです。(新公益連盟には、各分野の専門家が集まっていますから、とりまとめたウェブサイトを立ち上げようと話していたところです)

 ESG投資のレジェンドである水野さんの話をじっくり伺うことができて、素晴らしい時間でした。また、浜田さん率いるBusiness Insider Japanは、数あるウェブメディアの中でも、環境分野やダイバーシティ分野の発信がとりわけ多い媒体です。お二人と話しながら、ESG投資によって世界が変わってきたことを再認識できましたし、日本社会を変えるためにも、企業・NPO・メディアが変わっていく必要があると、強く実感した土曜日の夕刻でした。(リディフェスを運営している安部敏樹さんはじめリディラバのスタッフの皆さん、ありがとうございました)

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