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『ツァラトゥストラかく語りき』フリードリヒ・W・ニーチェ について

2015年にデビット・ボウイがニーチェ詩集を愛読していたと知り、
佐々木中さんの『ツァラトゥストラかく語りき』を購入して、
1/3読んだところでこれは難解だと降参してしまった。
今回、佐々木中さんの著書『切りとれ、その祈る手を』を読んで、
ニーチェを読まねばならない気持ちが再燃した。

それでも読み始めて直ぐに本を閉じてしまう。
読みたくない。
聖書を読んで、親しみを持つ人間にとって
ニーチェの言葉は理解に苦しむ。
私は、仏教のお経の本も好きで読むのだけれど、
ニヒリズム(虚無主義)が嫌いなニーチェとは反りが合わない。

※仏教の真髄は、真空妙有(まことの空は妙なる有である) 虚無主義とは言いきれない。

しかし、佐々木中さんは、『切りとれ、その祈る手を』の中で

「本なんて読めません、読めたら気が狂ってしまいます。
しかし、そのことだけが、それだけが読むということなのです。」

何度も ”読むこと” を教えてくれます。

もう読むしかない。

幸い、2015年から今迄の間に
ニーチェを見ると購入するという苦行を行っていたので、
手元に
『ニーチェをドイツ語で読む』細見和之 著
があり、ドイツ語で書かれたニーチェの文章によって
”思想のキーワードを解読していく”
そこから始めることにした。そしてようやく読了しました。

備忘録↓
ニーチェの著作、『このひとを見よ』の中で、『ツァラトゥストラかく語りき』についての文章をこのように語っている。

ここにいたって、『ツァラトゥストラ』の歴史を私は語ろう。
あの著作の根本的着想、すなわち、永遠回帰の思想、
およそ到達されうる肯定の最高の定式
その理由は1881年の8月に置かれるのがふさわしい。
あの思想は、「人と時間の彼方6000フィート」という結びの言葉を添えて、
1枚の紙に走り書きされている。(『ニーチェをドイツ語で読む』より)

1枚の紙に走り書きされたとおぼしき内容

同一のものの回帰
草案
1.さまざまな根本的誤謬(ごびゅう・間違っていること)を組み込むこと
2.さまざまな情熱を組み込むこと
3.知を組み込むこと、そしてまた断念する知を組み込むこと
(認識という情熱)
4.無垢の者。実験としての単独者。
生を軽くすること、低くすること、弱くすること ——移行。
5.新たな最大の重さ。すなわち、同一のものの永遠回帰。
いっさいの来るべきものにとって、われわれの知、誤り、われわれの習慣、生活様式がもっている無限の重要性。(中略)
海抜6000フィートにして、あらゆる人間的事象よりさらにはるかに高く!
(『ニーチェをドイツ語で読む』より)

キーワード(読み始めから順に):

第一部
鷲(Adler)=誇り
蛇(Schlange)=賢さ
密=知恵
舞踏者(ダンサー)=子ども
超人=大地=閃く稲妻

最後(last)の人間=最低人
道化=悪魔=神を信じる者
牧人=善く正しい者達=信者たち=畜群=亡骸
らくだ=
重荷を負う者
獅子=神と戦う者
幼子=忘れ、始まり
自我(イッヒ)
世界の向こう、神・天国について考えるより
肉体と大地、地上を生きよう。
幼子=肉体=魂
自己(ゼルプスト)
人間は乗り越えられるべき何かだ
青ざめた犯罪者=崇高な者
血=精神
人間は乗り越えられねばならぬ何かでなくてはならない
国家=偶像=怪獣
道化=役者=偉人=毒蠅
創造者=孤独な者
大いなる正午

第二部
彼女=荒々しい知恵
海=神
永遠回帰
正しい(ゲレヒト)
復讐した(ゲレヒト)

毒蜘蛛=平等を説く者
虎=おどけ者=怪物
猫=僧侶=月=男
虚栄の海=孔雀
本心(ヘルツ)=心臓
足萎え
意思とは力への意志

第三部
悪魔=宿敵=重さの霊
猫=雲=妥協も混ぜようとする者
蜘蛛=永遠なる理性
帰依教師=虱
太陽=不屈の意志
豚=不平をうなる
霊(ガイスト)
精神(ガイスト)
徳=ダンサー(肉体)=自らを歓んでいる魂
重い小人
人間はのりこえられねばならない何かだ
没落とは:
このことを太陽から学んだ。この豊かすぎるものが、沈みゆく時に。
そのとき太陽は、その無尽蔵の豊饒から海に黄金を降らせる。
——そのとき、極貧の漁師すら黄金の櫂(かい)で漕ぐことになる。
かつてこの光景に見入って涙をこらえることができなかった。

人間は越えられねばならぬ何かだ。
悲嘆(クラーゲン)
告発(アンクラーゲン)
小さな人間
道化師=手回しオルガン

第四部
世界=森=海
千年(ハザラ)
本来のわたし
同情
賤民=上流の社交界=貴族=ごたまぜ
良いなぁ(イ・アー)
人間はのりこえられねばならぬ何かなのだから
自由な精神の持ち主=漂泊する者
ドイツ的に明快に
正午=真夜中

この大思想家に対して、この本にはこの様な事が書いてあったなどと、浅学な私が言う事など出来はしない。

しかし、キーワードを解きながら読み進めるうちに、ニーチェの題材への真摯な向き合い方や、読者への想いが伝わってくる。

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