続・4枚目のオレンジ【本音ヴァージョン】
【このハナシの元になるのはこの話】
キレイ事ばかり書いているつもりはありませんけど、できるだけマイナスな事を書かないようにしているため本音ではなく建前ばかりになってしまっている部分は否めないので、今回は少し自分のホンネを書いてみたいと思います。
7月のセーフティスキル検定には、1年4ヶ月の鍛錬と万全の対策、当日に至るまでの体調の調整などこれ以上はないというほど完璧に、準備に準備を重ねてベストコンディションで臨みました。
まず最初はレクチャールームに入った時の状況から。
僕より先に来ていたのは、大人しそうな男性のAさん。
見た目は大人しそうですがセーフティスキル検定に来る人間なんて上手い人に決まってるので、ここは油断せずに行く事にしました。
続いて入ってきたのは女性ライダーのBさんとCさん。
Bさんはモトクロスをやってそうなウェア(THORのジャージにGAERNEのブーツ)で、Cさんはものすごく小柄な方でした。
全員それぞれに面識はなさそうです。
インストラクターとの会話に耳をすましていると、Aさんは検定初参加、Bさんはインストラクターから『B先輩』と気安く呼ばれているのでここの常連っぽい雰囲気、Cさんは普段は鈴鹿ではなく「交通教育センターレインボー埼玉」で受講している方のようでした。
検定に女性がいたのはこれが初めてでしたが、前述したように検定を受けに来る人なんて上手い人に決まってるの法則から、一切気を抜かずに臨む事を決意します。
体操を終え、次はマシン選び。
AさんとCさんはCB400スーパーフォア、Bさんと僕はNC750Lを選びました。
インストラクターは「このコースはどの種目もCB400が有利かなあ」とおっしゃってたんですが、NCを選んだ僕には「おっ、玄人っぽいチョイス」と言ってくれました。
僕は『CB400と散々悩んだけど、一本橋に1分以上乗っておくために低重心のNC750でいくんだよ』と心の中で呟きました。
慣熟走行を終えると、まずはパイロンスラロームからスタート。
10本のパイロンが並んだ直線スラロームの後、6本のオフセットスラロームをクリアして折り返し、また10本の直線スラロームを戻ってきます。
一級のタイムは30秒以内。
まずは練習時間が設けられるのですが、Aさんはいきなり31秒台。
僕は36秒。
Bさん、Cさんも32、33秒台の好タイムを連発。
油断はしてませんでしたし、人と比べようという気持ちもサラサラ無かったのですが、4人中ドベはやっぱり精神的にきます。正直焦りました。
インストラクターのアドバイスをもらって34秒台までは上がりましたが、そこからタイムが縮まりません。
本番の結果は35.7秒。
Aさんは一級のタイムに限りなく近い30秒台、BさんとCさんも32秒台ぐらい。
Bさんは同じマシンなので、僕はなんの言い訳もできません。
Bさんはものすごいリーンアウトでマシンを左右にベタベタに寝かせて走り、ギクシャクしがちなスロットルの開け始めのコントロールも非常にスムーズでした。
今回でようやく分かった事ですが、僕は過去4回の検定を通じてパイロンスラロームのタイムが全く伸びていませんでした。
検定は毎回パイロンスラロームからスタートするので、しょっぱなから精神的ダメージを受けるというパターンにハマっているのだと気づきました。
昼食タイムを挟んで、続いては一本橋。
『このためにNCを選んだのだから』と気合いを入れて練習に臨みます。
これまでより大幅にタイムを伸ばして25秒をクリアしましたが、Aさんなどは途中でほとんどバイクを停止させて1分以上を記録。
ちなみに一級の基準タイムは1分ジャストです。
Bさん、Cさんもやはり僕より上のタイム。
さすがに『なんじゃ、この人たちは、、』と思ってしまいました。
ただ、Aさんは本番で2回とも落輪してしまい、まさかの10級判定。
僕はとにかく落輪を避けたくて21.6秒のタイムで無難にクリアし、とにかく級を確保する作戦に出ました。
この後の休憩時間中、Aさんに尋ねました。
「普段、何に乗ってはるんですか?」
『いやあ、嫁が許してくれないので、バイクには乗ってないんですよ』
僕は愕然としました。
この世には天才というものがいるもんです。
どれだけ行っても、上には上がいるんです。
自分が積み上げてきたもの、これまで犠牲にしてきたたくさんのもの、検定に賭けてきた情熱、そんなもの何の関係もないと言わんばかりに凌駕してくる才能というものが。
天才と呼ぶ根拠は他にもあります。
一本橋の攻略法をインストラクターと話している時に、インストラクターがAさんに尋ねました。
「Aさんはどうやってますか?」
『何も考えてません!』
僕はめっちゃくちゃ考えてるのに。
この時の衝撃を僕は生涯忘れないでしょう。
それからもインストラクターとの雑談に耳を傾けていると、Bさんは二輪車安全運転全国大会の大型クラスの優勝経験者、Cさんは同大会の女性クラスの優勝経験者のようでした。
天才でも、優勝経験者でも、何者でもない自分は身の置きどころが見つからず、気持ちを繋ぎ止めるのに必死でした。
それでも『なんとか一矢報いたい』と、心の中で燃えるものは残っていました。
最後の種目は、コーススラローム。
『バイクは速く走らせる事がエライわけではない』と常々思っているのに、結局はコーススラロームのタイムに頼らざるを得ないという皮肉な結果に笑いが込み上げてきましが、とにかく無心で臨もうと思い直しました。
コーススラロームの攻略は前日にも徹底的にやってきましたが、なんと今回からコースが変更になり、全員が初見で新コースを走る事になりました。
一級のタイムは45秒、僕のタイムは49.8秒。
他の人を上回れたのかどうかは、みんなのタイムを聞きそびれたので分かりません。
ただ、これまでのような絶望的な差はつけられてないと思います。
検定が終わり、帰りの車の中で大きく「アーーー!」と叫びました。
落ち込みと、悔しさと、辞めたい気持ちが入り混じって、それから2、3日は腐っていました。
その後突然、『自分が出場する事が叶わなかった全国大会の、その最高レベルの技を見る事ができたなんて、どれだけラッキーだったんだ!』と前向きに考える事ができるようになったので、また地道に積み上げて、次の検定に挑戦したいと思っている次第です。
恥ずかしい事をいろいろと書きましたが、これが今回のセーフティスキル検定についての偽らざる本音でした。
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