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やさしいてをめぐる旅。 芝居紳士

お元気ですかー!
第3回は、著者のふたりが大ファンである
お芝居ユニット、芝居紳士さん。
あれ?手と関係ないじゃないか?と思うかもしれませんが
芝居紳士がつくる作品は「手織りのお芝居」と
表現したくなるほど、人の手でつくられた
おもしろくもあたたかいお芝居なんです。
芝居紳士へのインタビューのはずが、
逆インタビューもされたこの回。
もうひとりの著者の森元も登場し、
わいわいにぎやかにやっていきますよー。

芝居紳士

福岡りょうじ、杉田真吾、2人の表現者と制作アオコ、ふみこで活動中。
カフェやバーや路上やお寺の境内も舞台に跳ね回る。
相手のセリフをアフレコしたり、
地球と太陽がお話したり、
想像力は自由でだからこそ悩ましく愛おしい。
そんな“自由”を武器に“芝居”を表現方法に、
週一の稽古でやれることをやる!!​


白川:
真吾さん、りょうじさん、よろしくお願いします。
今日はもうひとりの著者の森元も交えて、
おしゃべりできたらな、と。


杉田:
烈くん、明美ちゃん、ありがとう。
よろしくねー。


白川:
今回『やさしいて』という絵本だから、
「手」について関わる色んな人たちとコラボして
オンラインショップという「売り場」をつくってるんですね。
石鹸とか、ギターとハンドパンの音楽とか、
織物とかがあるんですが。
其の中でもお芝居って、手じゃないじゃん!
って思われるかもしれませんが
ぼくはよく芝居紳士のお芝居を
「手織りの芝居」と表現させてもらってます。


福岡:
よくそう言ってくれてるよね。嬉しいです。


白川:
機械で織るような、ちゃんと均一に
綺麗にできるものの良さもあるんですが、
手織りの良さというのは、やっぱりどうしても
綺麗にはできなくて、ムラや荒さが必ずあって。
それが暖かくて美しいんですよね。
芝居紳士のお芝居には、その「手で織った跡」が
見えるから大好きなんです。


杉田:
お客さんと一緒につくる部分もあったから、
僕らが経糸で、お客さんが緯糸だったりね。


白川:
最初の台本ではこうだったんだろうけど、
たぶん二人の間で稽古を重ねていくうちに
わちゃわちゃしたり楽しくなったり、
もっとこうするのはどうだろう?みたいな
積み重ねがあって、このシーンはこういう演出、
芝居になったんだろうな、というのがね。
まちがってるかもしれないけど、そう見えるシーンがある。
それは良い意味での「荒さ」で、まさに人の手でつくるから
生まれる、どうしようもない痕跡だと思うんですよね。


福岡:
脚本は僕だけど、
演出のアイデアは杉田くんが
たくさん出してくれるから。
「ええ?そんなことやっていいの?」みたいな
アイデアを出されると驚いちゃうし。


白川:
ぼくはね、大ファンを自称してるので
3ヶ月に1回くらい、芝居紳士の作品を
ひたすら見たくなる衝動に駆られるんですね。
直近でもその芝居紳士ウィークがあったんですが
そのときは今回の『ジョバンニ』と、
Youtubeに上がっていた『ゼロゼロ8秒』、
あと20年くらい前の『ありがとう人生』を観てました。

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杉田:
わー!懐かしい。
僕らが20代前半の頃だね。


白川:
『ありがとう人生』、20代に書いたんですか。
あんなの書かれたら、こっちはもうたまらんですよ。
それが処女作になるんですか?


福岡:
そうね、処女作かな。
最初は路上でお芝居をしてたから、
5分くらいの短いやつはそれより前に
いくつかあるんだけど。


白川:
あ、そうか。路上でやってたんだ。

路上でお芝居ってね、
音楽なら途中からでも聞けるじゃないですか。
でもお芝居は流れがあるから、
途中から見るのがむずかしいですよね。


杉田:
そうそう。
だから、途中からでも見れるように中身はつくったよ。
声を合わせたり、マイムと声を分けたり。
今思えば芝居紳士の源流はあの頃かなぁ。
どうやったら見てもらえるかをずっと考えてたから。

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白川:
ショートコントの集合体、みたいな?


杉田:
そうだねー。それが近いかも。


白川:
お芝居や舞台って、
「観てもらう」ことは前提ですよね。
ステージがあって、席があるんだから。
でも「見てもらう」ことからスタートだった。


杉田:
そう言われれば、そうかもしれない。


白川:
今回の『ジョバンニ』は、
お客さんと一緒につくる部分は
なかったですよね、そういえば。


福岡:
どっかでお客さんをいじったり、
一緒に作ろうかなと思ったんだけど
今の自分たちはちがうねってなったんです。
もうその時代じゃないね、って。


白川:
ぼくが今まで観てきた芝居紳士の作品には、
物語の分岐点をお客さんが選択して
ゴールまでのルートが変わる、みたいな
部分がありましたから。
あれも、芝居紳士の醍醐味のひとつでした。


杉田:
お客さんが白黒の旗を振って、
右に行くか左に行くかを決めてもらうみたいなね。

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白川:
あと、音楽も。劇中に真吾さんが手元で
音楽のインとアウトを操作するじゃないですか。
あれもお客さんからしたら「ちゃんと鳴れ!」って
なんだかスタッフのような目線で見ちゃう。


杉田:
そう言ってもらえると嬉しいです(笑)


白川:
芝居紳士は、お客さんを
どんどん身内にしていくんですよね。
巻き込んでいく、というよりも身内にしていく。

ちょっと広い言葉になりますが、
芸術って受け手の努力や技術も必要だと思ってて。


福岡:
うんうん。


白川:
送り手と受け手がいる時点で、
コミュニケーションでもありますから。
芝居紳士は、それを努力じゃなくて、
受け手が楽しみながらできるんです。
ぼくはそのことがほんとすごいと思う。


杉田:
ありがとうございます。
それしかできない、というのも
あるんだけどね。


白川:
最高の取り柄じゃない。
あと、これは脚本の話になりますが、
今回の『ジョバンニ』なんか、起承転結の「起」だけで
40分の作品をつくってるわけじゃないですか。
出会いのオムニバスのような作品ですよね。


福岡:
『ジョバンニ』は出会いの物語なので。
前作の『マジロギ』は別れの物語だったけど。

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白川:
毎回すごいですよ。
お客さんとして観たら完成系しか見えないけど、
これはどうやって出来たんだろう?って
作り手の視点に立ってみると、
どうやって脚本書いてんだって思う。


杉田:
でも、つくってるときにりょうじさんは
「これで楽しんでもらえるのだろうか」ってのは
すごいあるみたいだよ。
やっぱりおもしろいのは「転結」だし。
ジョバンニも一応物語にはなってるから
起承転結はちゃんとあるんだけど。


白川:
最後にドドドっと伏線回収がね。
それを「起」だけでつくってるのがすごい。
発想も、技術も。


杉田:
今はそれがりょうじさんのブームというか、
「おもしろい」と思ってるんだろうし。


福岡:
今はもう、それしか書けないんです。
前は長い物語しか書けなかったんだけど、
今はもうぶつ切りしかできなくって。


白川:
そうなんですね。
でも、今まで自分が作ったものを見返してみると
つくれるものしかつくってないんだろうな、
って感じがしませんか?
つくれるものをちゃんとつくりつづけてる。


福岡:
ねー。またこれやっちゃったよ!
みたいなのもあるけどね。
僕らの作品では「また産まれちゃったよ〜」
みたいなことがよくあるので。


白川;
オリジナリティって、
自分が自分に思う良いところより
自分で気に入ってないところや、
ついやっちゃうクセに出ますもんね。


福岡:
じゃあそろそろ杉田くん、
逆インタビューを…


杉田:
そうですね。逆インタビューしましょう。


白川:
あ、じゃあこちらをどうぞどうぞ。

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福岡:
ああー!ありがとうございます!
すごい!サイズ感が!ちいさい!


杉田:
じゃあ、ちょっと読んでもいいですか。
まったく喋らない時間が数分あるけど。


白川:
どうぞどうぞ。おかまいなく。

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杉田:
いやー、ありがとうございます。
たっぷり読み終わりました。
なんて言ったらいいのかな、
めちゃくちゃいい!としか言えなくて…


白川:
ぼくもね、渡されて読んで、すぐさま感想を
言える本じゃないよねとは思います(笑)


杉田:
そう、そうなんです。
そのうえでまず、内容が好き。
そこはちゃんと言いたい。
りょうじさんは?


福岡:
僕はね、感想というより、
ふたりを知ってるからね、逆に
この絵本の出発点が知りたいです。
どこがスタートで出来たんだろう?ってとこ。
逆にね、逆に。


杉田:
逆に?

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福岡:
逆に。

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白川:
出発点…今回、原案は森元の方なんですよ。
素材と味は彼女で、僕は調理と仕上げを担当した感じ。


森元:
そうですね、うーん…出発点。
私の中で考えてることが深すぎて深すぎて、
その氷山の一角だけを出すことを認めた、というか。


福岡:
うん。


森元:
これは物語じゃなくて、ワンシーンなんですよ。
とっても大切な出来事は、
ほんとに一瞬のうちに過ぎていくと思ってるから、
その一瞬をクローズアップした一冊で。


福岡:
なるほど。
ああー、なるほど。うん。


森元:
だから誰に何を伝えたい、とかじゃなくて
自分の日記に近いです。いち場面でしかなくて。
「やさしいて」ってタイトルだけど、
じゃあ誰の手がやさしいのかってなるし。
それは読む人に委ねてます。


白川:
そうだね。
これが「やさしさだ!」って言いたいわけじゃないし。


森元:
あとは、この大人の対応が、ひとつの理想なんです。
自分が大人だったら、こういうふうに接したい、じゃなくて、
自分が子どもだったら、こんなふうに接してもらいたい、なんです。


福岡:
かあー、そうかそうか。
僕は、烈くんが出発点だと勝手に思ってたから
「烈くんぽいけど、烈くんぽくない気もするなぁ」って思った。

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白川:
その「烈くんっぽいけど、烈くんっぽくない」の
わかりやすいところで言えば、
僕にとっては「失敗」の絵本だと思っています。
失敗する絵本、ですね。


杉田:
たしかに、成功を描いちゃうと
それが答えですよって言ってるみたいになるもんね。


白川:
この話は、善悪とかいう次元の話じゃないので。

あと帯のコピーは今回、ぼくが付けたんですけど
これも最初なかなか上手くいかなくて。
この前、見返して自分でびっくりしました。


杉田:
この「ては こころから はえている」だね。


白川:
ここにたどり着くまで、ぜんぜん違う場所にいましたから(笑)
最終的に2つで迷ったんですよね。
「ては こころから はえている」と
「てのねっこにはこころがある」だったかな?
それこそ出発点の違いなんですけど。


福岡:
なるほどなるほど。


白川:
この絵本は「て」の絵本だから、
手についてたくさん考えました。
例えば、手がない人のこともそうだし、
犬とか猫は「顔」がぼくらの手の役割だよなぁ、とか。
今ではこのコピー、気に入ってますけどね。

おふたりは、自分たちの作品の中で
好きなセリフはありますか?


福岡:
そうねー。
烈くんにも前言ったけど
「最高の取り柄じゃない」とか
「お父さんにそっくり」とかね。
あのへんはやっぱり好き。

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白川:
3つほど前の公演、『万感交々至る』のセリフですね。
りょうじさんの表現する、日常の些細。


杉田:
りょうじさんの日常から
出てきたセリフですしね。
うわー、僕はなんだろう。
テンポや掛け合い込みで楽しいセリフはあるけど
好きなセリフかぁ。むずかしいなぁ。

「おめでとう」「ありがとう」
「また会おう」「さようなら」
とかも好きだけど…ぜんぶ好きですね(笑)


白川:
それもまた、真吾さんらしいです。


杉田:
あはは。
それこそ今日、新作の初稽古だったんです。
今回の台本も、読んでて好きだったし。


白川:
うわー、新作も楽しみですね。
新作をつくりつづけることの恐怖と勇気は、
ぼくは芝居紳士からいちばん受け取ってますよ。
3ヶ月に1回くらいのペースで新作公演を作ってるじゃないですか。
りょうじさんに関しては、並行して紙芝居も作ってますし。


福岡:
あなたも毎日エッセイ書いてるじゃない。


杉田:
そうよそうよ、今日のうんち。

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白川:
あれはね、新作じゃないんですよ。
打席には立ててない。
どちらかというと筋トレに近いんです。

新作を作りつづけるコツってありますか?


杉田:
りょうじさんはね、芝居やパフォーマンスで
新しいカタチのものが出てきたとき、
それを見たがらない傾向にあるんです。
感化されるからなんですよね、たぶん。
もし自分の考えてることを誰かがやってて、
それを見てしまったら終わりじゃないですか。
見てなかったら、言い訳はできるわけで。


福岡:
だからパラリンピックの開会式もまだ見てない(笑)

良いと思うものがあっても、
自分が今作ってるものに近いかもしれないから。


白川:
はあー、えらいなぁ。
それ、自分の作品を守ることですよね。
すごい。ほんとにすごい。
自分の足だけで立とうとしてる。


杉田:
僕はめちゃくちゃ観ちゃうからなぁ。


白川:
ぼくもぼくも。
すーぐそれを支えにして立とうとしちゃいます。


杉田:
いやー、でもうれしいですよね。
いろんな「つくる人」たちと当たり前に話せて、
当たり前になにかを一緒につくれるってのは。


福岡:
ジャンルは違えど、共通する部分はあるしね。


白川:
それはこちらこそです。
ぼくは芝居紳士の大ファンだし、
芝居紳士の表現をこれからも観ていたいし、
同時にぼくらの表現も観てほしいと思います。
今回、絵本とセットで販売する『ジョバンニ』の
配信版もぜひたくさんの人に観てほしい。


森元:
そうですね。
私も芝居紳士の作品が大好きなので。


白川:
こんなこと言うと野暮だけど、
ぼくは毎回泣いちゃいますからね。
涙が出るから良い作品ってわけじゃないけど。

おふたりとも、今日はありがとうございました。
「ご覧いただくのは、ひとまずここまで」ということで。


福岡:
(!)
この先は、ご想像にお任せしますっ。


杉田:
なぜならば?
この物語はまだ?


一同:
「「ジョバンニー!」」

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芝居紳士『ジョバンニ』(配信版)と絵本『やさしいて』のセットはこちら!

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