ワルツを踊るブラームス(2014年12月記)

昔、蔵王で生まれて初めてロ長調ピアノトリオを聴いたとき、CDをかけてくださった方が、ニ長調交響曲の第二楽章に似ていると思う、と。
当時も今も、そもそも交響曲について無知なので、何とも答えようがありませんでした。
先日「NO アディオス・セニョール・ピノチェト」を観て、劇中ブラームスのワルツが登場するのを観聴きして、ブラームスはこうした雰囲気のワルツを踊るような部分が確かによくでてくるかも、と。
厳めしい作品ばかり聴いていると、ずいぶん仰々しく深刻な人と思い、ジプシー風なメロディを聴いて、なかなか情熱的な人でもあると思い、こちらも相応に年とって、少し懐古調に感じるワルツが僅かながら理解できるようになったような気がしました。
というか、アッ踊りだしたゾ、と感じるだけです。それでもなかなか微笑ましい。
ブラームスがどんな人生だったか、実はきちっと調べたことはありません。それでも好きな作曲家としてよく聴くようになり、ずいぶん聴いていますが、深刻ぶった演奏は似合わないなあ、と。
フィッシャー指揮のニ長調交響曲は思ったより節度ある演奏(ユーチューブで見かけるライブの過熱ぶりからすると)で20年前の夏に観たブダペストのドナウを想い出しました。

吉田300選に「愛の歌のワルツ集」が取り上げられています。
重苦しくない純粋に音楽するよろこびにひたされたムジカント風の愉しい曲もあることを伝えることを忘れたくないからーーーー。ブラームスの当時の家庭音楽の水準の高さは現代ではまったく失われてしまった----とも。
ついでにモーツァルトのバイオリンソナタに触れています。貴族の嗜みが今はプロでも満点取るのが難しい、と。
ワルツそのものもわたしなども軽く考えてしまいがちですが、改めて聴くと立派なヨーロッパの音楽です。日本人には遠い遠い夢の世界です。

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吉田秀和の300選に「愛の歌」が選ばれていたので、LINNのプリンスコンソートというグループの録音を聴きました。LINNなのでイギリスのグルーブなのですが、意欲的なアンサンブルでした。きっと外国人のドイツ語だとは思いますが、吉田秀和が語っていた「ムジカント風」は伝わってきます。
確かにこれが家庭音楽だとしたら、エライコチャですが、19世紀のウイーンのホームコンサートを思い出しながらのクリスマスイブも悪くありません。シューベルティアーデの延長線とも思います。ブラームスのは歌うワルツなのです。
シュトラウスのワルツも歌付きはありましたから、歌うワルツはブラームスの発明ではなさそうです。アーノンクールの「ワルツ革命」ではモーツァルトのコントルダンスとドイツ舞曲を冒頭においていました。シュランメル気に入っていますし、シェーンベルクたちの編曲版も好み。
ついでに、ビング・クロスビーの「皇帝円舞曲」からナットキング・コールの「ファシネーション」、エバンス「ワルツ・フォ・デビー」、江利チエミのテネシーワルツまで展観してみようっと。
そうして「もういくつ寝ると」ニューイヤーコンサートです。
第九で暮れるのは卒業して、「躍る愛の歌」でぼーっと過ごす、鳥目の老眼にはちょうどよいです。

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