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(BKTC-N)の 「スペシャルティコーヒー大全」を読まれた方に Tipsティップス(6) 2011.12.26

オーケストラの演奏会で指揮者が活躍した主席奏者やセクションを順に指差しながら起立させて、万雷の拍手を誘います。どうか、これから紹介いたします製作スタッフに「スペシャルティコーヒー大全」を読まれた方は、惜しみない拍手をお送りいただきたいものです。

「大全2003」、「大全2011」160ページ。
NHK出版の佐野朋弘さんにまずご起立願いましょう。著者に対して天才の解答ではなく、日々の仕事の中から湧く課題を言葉にして読者に伝えることを求めました。著者のファーブル的好奇心をしっかりと理解してくださった最高の編集者です。何より、まるで農産物のように「本」を育てる人です。そして、シリーズの製作スタッフを共通に召集してくださったプロデューサーにあたります。

次いで嶋中労さんは、自身多くの著作を持つジャーナリストで「ビッグペン」プロダクションの事業主でもあります。編集業では、前記佐野さんの大先輩で、佐野さんを役小角に例えるなら氏は前鬼後鬼です。わたしども技術者だけでは到底できないような取材インタビュー、旦部先生の協力部分の取材と叙述の整合性など、ペンを持つ阿修羅のごとき活躍で支えていただきました。

高橋栄一カメラマンとは著者の雑誌デビューから、おつきあいは30年以上です。「料理の温度が伝わる写真」を目指す氏の映像は、どうか必ず一度しっかりと明るい照明の下で、きちっと本を広げてじっくりとご覧ください。小さい豆粒に奥行きと立体感があり、実際コーヒーを扱っている人なら、思わぬ発見があるはずです。

山崎信成さんはアートデザイナーです。前作に続き今回もまた図表デザインにどれほど助けられたことでしょう。著者と旦部先生の意図する細やかなデザイン上の照合を表現してくださいました。焙煎度カラーのRGB参考数値も山崎さんの経験と知恵に多くを負っています。シンプルに美しいカバーは高橋さんと山崎さんの畢生の傑作です。

そして、今回の特別にお招きした顧問、滋賀医大の旦部幸博先生。薬学を専門とされ、現在は微生物学の研究室で本業のお仕事をしながら、コーヒーに対しても情熱を注がれています。先生の医学の専門分野は臨床でなく基礎です。コーヒーについて「基礎学」というものがあるとすれば、どんなものかという展望が著者と共鳴したのでした。著者は三顧の礼を尽くして、今回のご協力を得ました。もっとも先生は孔明のような軍師ではなく、むしろ安期生のような方です。前述の嶋中さんには「コーヒーに憑かれた男たち」という著作があり、「御三家」の末席を当店店主にご用意くださいましたが、「新(真?)御三家」を選出するなら、旦部先生は必ずやその一人に数えられるでしょう。今回、旦部先生にご協力いただいたことは、まさにコーヒーを認識するために尺度の次元数を増やす、ことになりました。こうして一旦複雑化し鳥瞰したことによってできたお客様との距離を、いかに縮めていくか、わたしどもの今後の課題です。
最初に登場した佐野さんは、解答でなく課題を求めました。答えは人によって違っても、何が課題なのかという問いかけは誰しもが共有できるものです。従来の喫茶店はどちらかというと受動的な商売でしたが、山谷の小さなカフェの店主たちが興した「よいコーヒー」という能動的問いかけが、素晴らしい人々を結びつけたと思います。
そうそう、わたしどもの製作現場は、掛け合い漫才よろしくいつも笑いに満ち溢れていました。カフェスタッフ全員の集合写真が製作アップの恒例で、熟練カメラマンは緊張を解すのも熟練でした。旦部先生も決して厳めしい方でなく、滋賀から「面白い恋人」を手土産に来店されるようなユーモア溢れる先生です。関わるすべての人々からユーモアを引き出すのは、開店以来店主たちの人柄のなせる業で、それこそが長く店を続ける秘訣なのかもしれません。BKTC-N

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