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(BKTC-N)の 「スペシャルティコーヒー大全」を読まれた方に Tipsティップス(4) 2011.12.04

スペシャルティ時代になって、生産者の技術の向上も著しいものがあります。
つまり、コーヒー生産者が自分が作っているコーヒーについて、何をどう変えると、どんな味になるか、をよく知っていて、その上で消費国側に提案してくるのです。
20余年前、わたしBKTC-Nが初めて中米を訪問した際、現地の生産者に当店のその生産国産のコーヒーを持参して試飲してもらいました。お世辞もあったかもしれませんが、自分たちが生産したコーヒーがこんなに素晴らしい味で消費されているとはうれしい、しかし自分たちのコーヒーがこのように素晴らしい味に加工され飲まれているということを、生産者自身は体験できない場合がほとんどなのです、と。生産者が作って確認している味が、得意先消費国にとって望まれる味なのかどうか、確認できないというのです。これでは、消費国側のイエス・ノーしかわからず、要求され選択されるものを「よし」として生産するしかない。どんな味ならもっと喜ばれるのか、高くても買ってくれるのかがわからない。試飲させてもらった味ならば、よい味として共有できるし、それを反映させたコーヒーを生産できるだろう----。
あれから20年。いまおつきあいさせていただいている生産者の方々はみな、自分たちの作るコーヒーの味を正確に把握している方が多い。実際、とても素晴らしい味に焙煎して飲んだり販売したりしている生産者もいます。自分の生産しているコーヒーのキャラクターを、使用している消費国側の焙煎者が味覚的に、また技術的に共有できているかどうかをしっかりと確認できるのです。例えばSCAJ展示会などで訪日すれば、自分の生産したコーヒーが想定以上に素晴らしい味で飲まれているとか、想像以上にキャラクターを活かさず商品化しているとか、いったことを見抜かれてしまうのです。
さてバッハでは、そうした機会があると生産者に生豆のハンドピック(大全2003 30-37ページ)を見てもらいます。いただいたコーヒー生豆は1トンであろうが10トンあろうが、全てていねいに選別し、より精製度を上げて販売していると伝えます。当店スタッフの手作業のスピードと正確さに一瞬驚くものの、生産者もすぐに手を出し、自分たちも同じスピードと正確さでできることを見せます。収穫から精製までの生産処理は、短く集中して期間が決まっているので、その限られた時間内で精一杯精製度をあげているのです。その精製度をさらに上げる最後の仕上げの工程をわたしたちが実行していることを知って、生産者はとても喜びます。なぜなら生産者の努力と工夫を共有できる仲間として、またもし生産者が精一杯の努力を怠った時、すぐに見抜かれてしまう手強い取引先として、本当に対等なおつきあいができるのです。

「精製法も大きく変わった」(大全2011 26-27ページ)
各精製法の呼称については、日本の中では呼称はまちまちです。実際には言語の違いもあり海外でも、同様まちまちです。
基本的には、できるだけ参考文献にしたがって表記に注意しましたが、4つの精製法「ナチュラル」「ウォッシュト」「スマトラ」「パルプドナチュラル」を紹介しました。
ただ、それらもさらに、下記のような微妙な過程の違いがあります。
(例1)
「ウォッシュト」の醗酵槽による醗酵工程の「有無」。
「有」は、グアテマラなら「トラディショナル」です。
「無」は、エルサルバドルで開発された粘液質除去機(ミューシレージ・リムーバー)を使用した水洗です。ブラジルでは「エコ・ウォッシュド」ともいわれます。
(例2)
乾燥の熱源と乾燥の方式、その組み合わせも様々です。
乾燥機による機械乾燥、天日乾燥、その併用。
パティオ(コンクリかレンガの乾燥場)、アフリカンベッド(棚上に張ったネット上で乾燥)の選択。
昨今では実験的に赤い実を乾燥機で乾燥したり、スマトラ式にアフリカンベッドを組み合わせたり、という具合です。
(例3)
「パルプドナチュラル」では、粘液質を100%残存させて乾燥する「ハニー」製法(乾燥したパーチメントが赤くなるところから「レッド・ハニー」の別称)。
粘液質除去の度合を70%、50%、30%と調節する製法もあります(「レッド・ハニー」に対して「イエロー・ハニー」と呼ぶところもあります)。

これらが、栽培する樹の品種や栽培環境などと複雑に絡み合います。
「大まかな法則のようなもの」はあると思いますが、これでは「個別対応」する以外ありません。
世界のコーヒー生産者が、自ら質を問い直し、高く評価され高く売れる製品を作る努力をしている、というのは、実はコーヒー生産の歴史上初めてではないでしょうか。21世紀の喜ばしい奇跡と思います。
そして個別対応から、考え出されたのが、3Dというイメージモデル作りです。(大全2011 88-90ページ)これは、10年以上前に黒沢学先生との研究に触発されて着想されたものです。どんな研究かは、次回ご紹介します。
BKTC-N

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