92.わたし東京へ帰る電車で。

久々に綴りたくなってここを開く。

擦れた気持ちなの、
それでいて何かを生み出したくなるような、
不思議な夜。不思議な街、東京。

鈍色の街に虹色の絵の具を
ぶちまけたいのに
夜空には牛乳をこぼして
天の川でもこしらえたいのに
マスクの下、無表情を決め込んだわたしには
そんな力はなくて
ガラガラとスーツケースを引いて
大股に現実を歩く、現実へ歩く。

東京には何でもあるね、なんて
今ある宝物に気がついていない人が吐く台詞だわ
ここには何でもあるけど
なんにもないの

空っぽを埋める程のメディアはあるけど
貪っても貪っても孤独で時間だけ溶けて
多すぎる人混みの中でこそ感じる孤独があって
それでいて何者かになりたくて
なれなくて
虫の声も、草の匂いも、高い空も
なくて
咳が出るのはきっと空気が汚れているのね
吐瀉物を避けて歩く23時

イヤフォンで耳を塞ぐ
寝たふりで目を塞ぐ
マスクをして鼻と口を塞ぐ
自分を塞ぐ

明日、明日
仕事行きたくないな



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