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51.それでもわたしはつづく

久しぶりに帰ってきたその場所には
長いこと戸を閉めきっていたせいか
少しだけ、埃っぽいような
けれど懐かしいようなにおいが
タイムカプセルみたいに閉じ込められていて

誰もいないそこに向かって
「ただいま」なんて
ちょっと照れくさいけど、言ってみる。

ぼろになった靴を脱いで
道中買った麦わら帽子をとって
汗ではりついた前髪を拭いながら
窓という窓を開け
ついでに扇風機のスイッチをパチリ。

さっそくだけど、お土産話をしてもいい?

横たえた旅行かばんを開けながら
わたしは誰ともいえぬ誰かに向けて、笑った。

"それでもわたしはつづく"
旅に出てみて気づいたこと。

昨日電話で話した友人は言った
「人生は振り子」だと

そうかもしれない、
いや、たぶん、そうなんだと思う。

もう大丈夫だと思ってここを出たけど
「もう大丈夫」なんて、人生で決してなくて
ひとつ壁を超えたかと思うと
また違う壁にぶつかって

大丈夫と、大丈夫じゃないを繰り返しながら
生きている。

それならその振り幅を
いつか振り子が静止するその日まで
楽しんでやろうじゃないか。
前向きに苦しみ、悩もうじゃないか。

なんて、渦中にいると、
やっぱり後ろも向くだろうけど。

でも今、この文章を書きながら
やっぱり表現することは楽しいと、思います。

相変わらず、推敲はしない。
句読点も、言葉も、順序もめちゃくちゃ。
頭に浮かんだその声に、ただただ、形を。

けれど少しだけ、綴る言葉に想いを込めて。

誰かに届くといいな
ほわっとふわっとしてもらえればいいな
共に感じてもらえればいいな

そこに求めるのは、誰かからの救いの手じゃなくて
もらうばかりじゃ、なくて…

わたし、わたしのために
ゴミのように吐き捨てていた言葉を
少しだけ丁寧に、そこに置いていきたいと思います。

だからこれはまた
新しくなったわたしの
はじめの一歩です。

今日も夏空が青いですね。

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