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職人としてのマジシャン ~好きだからこその技術~

かつて、とある先輩に言われたことがあります。
良きクロースアップマジシャンになりたいなら
良きクラフトマンにならなければならない

と。

まあ正確に上記の通りだったか、となると
僕ももうオジサンで、記憶が定かではない部分もあるのですが
でもそんな感じ。

結局、自分で使うものくらい、自分で作りなさいなってこと。
(某著名なマジシャンの方から言われて、今も心に留めている言葉です)

いわゆる職人と言われるような人になると、どの分野であっても
恐らく同じようになってくると思うのですが
道具を自分で作るようになるんですよね。

例えば、脳神経外科の有名な日本人の先生がいらっしゃったかと思いますが
術式を考えるのはともかくとして、特殊な形状のメスやクリップなど
手術のための道具を考案するようです。

他にも、仕事に必要なノミやカンナを作って作業をする職人さんとか
美容師の人なども、はさみの考案などをしているはずです。
自分の理想を叶えるための、道具から作り上げるって感じ。

そういや、ジェダイの騎士も、確かライトセーバーを個人で作るんですよね。なので、それぞれのセーバーの色や形状が異なっているようで。

さて、マジック分野に翻って考えてみれば、先輩のいう事も
さもありなんという感じで。
やりたいことが決まってくると、それに必要な物を作るってこと。

クロースアップのマジシャンなら、ホルダー位なら
比較的簡単に作りますかね。

せめて、商売でやる位にマジックが好きで、お客様に演じるなら
まあクラフトマン能力を持っておきましょうって思います。
(あくまで個人的な感想ですが)

僕自身はそういった事もあり、製作・修理などの技術に関しても
自分のコンテンツの中に含めていたりもします。
特に、僕のスレッド関連のコンテンツを持っている方は
お分かりと思いますが、口が酸っぱくなるくらい
「自分で直せるようにならないとダメです!」
と言っています。

1つには、自分でやりたい現象にギミックを
アジャストできるようになるから。
そしてもう1つには、直せないと結果として使えなくなり
結局そのトリックを演じなくなるって事で。

なので、本気でスレッドしたいなら、僕のコンテンツを
手に入れておけばいいのに、なんて思う事も(笑)。
それはさておき、僕のコンテンツの中では
「半年に1回くらいはメンテナンスしましょうね」
って言っています。

まあ、僕位になると(どのくらい?)
結構メンテなしでもだましだまし使ったりするんですけどね。

それでも一定期間メンテしないと色々と不具合が来ます。
1つにはボビンに巻かれているスレッドの量が少なくなること。
または動力ゴムが切れてしまうとか。
時に動力ゴムが滑ってしまい、巻きの力が弱くなってしまったり。
この辺もまた、経験値でどこを直せばいいのか分かってきます。

さて、先日オンラインのレクチャーを行ったのですが
その際にもスレッドを使いました。
僕は常に複数のギミックを準備して調子の悪い物は使わないように
しています。ちょっと動作確認したら、怪しかったので本番では使わず。

どうも巻き戻りが悪いので、使わなかったのですが
今後の仕事の関係もあり、早めにメンテをしようと思い
解体していました。

出したスレッドが完全に巻き戻らなくなっていく、という症状でしたが
恐らく巻きが甘かったので、その分緩んでいってる、という判断でした。

念のために動力ゴムを見ても、破断もないし
本数も強めの方の物。

という事で、スレッドの巻きなおしとボビンの再固定です。
僕自身あまり長くスレッドは巻いてなくって
5~6メーター程度です。

これをほぐしながら、ボビンにきっちり巻いていきます。
この辺もコツがあるのですが、それは僕のコンテンツで(笑)。

多分ですが、普通の人が行ったら、これだけでも
半日作業になると思うんです。
工程の順番とかその道具とか、まあそろっているから
っていうのも影響が出るのですが。

スレッドをほぐしボビンに巻いていく
ボビンをリールの真ん中にセットする
テンションの設定をする。

この作業があるわけですが、たぶんスレッドをほぐすだけで
イライラしてくるでしょう(笑)。
そしてそれを緩まないように巻いていく根気とテクニック。
さらにはそのボビンをリールの真ん中にセットして
左右のゴム動力のテンションを一定にします。

左右に力がずれていると、回転するたびに
どちらかに寄って行きますので。

1度ボビンをセットしたら、ゴムのテンションを確認しつつ
左右のテンションを揃えていくわけです。

こういった作業を、小林なら30分~40分程度です。
もちろん、ある意味で邪魔が入らないそれなりに広い空間がある
というのが条件になりますが。

1時間弱でメンテ完了ってことです。
正直言えば、これができるので僕はずっとスレッドのトリックを
やってこれたのです。

こういったメンテの作業に時間がかかる、またはメンテができない場合には
恐らく遅かれ早かれ、スレッドのトリックを演じることに
様々なコストがかかったり面倒になって、演じなくなるでしょう。

結局、繰り返し長いことやっているから、僕は経験を蓄積した
というだけでしてね。

今回のメンテは、ある意味で最小限の分量で済んだのですが
もう少し細かな部分まで直す場合には、両手が使える
眼鏡のような拡大鏡をかけて行う事もあります。

スレッドのエフェクトは非常に強力なので
見たら演じたくなる方は沢山いるのですが
こういった事をする覚悟がないと、どうしても
「銭失い」にしかならないので、僕のギミックに関して
「買わない方がいいですよ」って言う事が多いのです。

でも、逆に僕からリールギミックやコンテンツを手に入れてくれた方へは
僕が生きている限り、アフターフォローは行いますので。
(明言はしておりませんが、そのつもりは十分にあります。ただ、作業が伴う場合には、実費を頂く可能性もあります)

という事で、久々にITRのメンテをしてみて
まだクラフトマンの腕はなまっていないと
実感できた小林でした(笑)。

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