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あなたの手品は、つまらない ~見取り稽古とそのセンス~

年を取ってきて、今さらながらに自分の学んできた状況が
非常に恵まれていた事を実感します。

10代のころに、某レオン氏に出会いそこからアシスタントを。
そしてその近くにいたマジシャンの方々に見知ってもらって
現場を紹介してもらったり、等など。

要は世界レベルで見ても上から数えた方が早い方々の中で
マジックを学んでこれた、というのがあるわけです。
なので、ちょっと手品が好きな若い子が、僕と同じような状況で
育ってきたら、僕位になるのは簡単だと、ずっと思っています。

一時期西の方を旅した際に、出会ったマジシャンの方々へ
「僕位のマジシャンは、東京だったら山ほどいますんで・・・」と
言ってきたのは、本心からです。

だって、学生時代からゆうき氏のレクチャーに顔を出して勉強を
していましたが、その当時の事とかゆうき氏に話した時に
「あれ?いたっけ?」って。
その位普通で、目立たない存在ですし、今もそんな感じでしょう(笑)。

その当時からも、そういった状況にはありがたいと思っていましたが
ちょっと活動的なら出会える状況でしたし、特殊なものではないと
思っていました。

そして、今年を取り、自分よりも歴の浅い方などのマジックを見た際に
「なぜ、そんなことを??」
って思う事も多く。

それが悪いのではなく
「なぜ気づけないのか?」
と思い、それを言語化していくことのほうが
大事になっているような気がしています。

自分も通ってきたかもしれないですが、いつのころにか
改善され?少なくとも意識的に行うようになったり
または意識するようにしてきた行動があったりします。

さてそんな行動の中で、今回取り上げるのは「オープニング」
です。
どこかで書いてきたような気もするのですが、まあいいでしょう。

「最初の30秒」という考え方があり、ホッピングなどが
多かった時期に検討された事柄?かと。
今の50代から60代のマジシャンが青年だった頃に主題になったことの
1つかと思います。

要は、間髪入れずにマジックに巻き込むか、自己紹介をしてサービス内容を伝えてマジックをしていくのか、なんて事柄です。

お客さんのテーブルの近くに行って
「赤のナイフ落とした方います?いません?あ、ごめんなさい白のナイフでした!」
みたいなの。
いきなりファイヤーワレットとか、ですね。

それが良いとか、悪いではなく、そういった方法があるってことで
一気に注意を集め、現象を見せ、そしてマジックをしていくってことです。
特にアメリカでは、チップが稼ぎの中心なので、見てくれる数を増やさないといけないため、Yes/Noは後回しで巻き込む的な手法としてこれを
使っていくわけです。

それとは逆で、自分の素性を伝え、マジックはサービスでお金はかからない
という事を伝えたうえでYes/Noをたずねてからスタートだと、どうしても
見てくれないお客さんが多くなるわけです。

個人的には、後者が好みですし、先輩たちも多くは後者を選択してきたかと思います。

あくまでこれはアプローチの部分として、ですけどね。

で、テーブルに入れてマジックをやり始めるとして
ここからのセオリーは「とっとと現象を起こす」ってこと。
実は前者は、ここまで含んでいる感じなんですよね。

特に若いマジシャンや、お客さんがそれほどこちらに対しての
積極性や信用性を持ってない場合には、興味を持ってみてくれる時間が
短いんですね。

なので早急に巻き込んでいく、驚いてもらう、ってことをして
マジシャンとして認めてもらうわけです。

これは、本当に大事で、若かったり相手との関係性が希薄の場合には
意識して行うべきなんです。

ただですね、アマチュアの方だったり、演じ慣れてない人とかは
自分が緊張しているからもあって、最初に滔々としゃべったりするんですよね。その喋りが面白かったらいいんです、それはコンテンツとしてアリなので。でもマジックを演じ慣れてない人が、その枕の話になれているわけないじゃないですか?

面白くもない話をしてたら、そりゃあお客さんの関心は下がり
マジックは面白いだろうなどと思われたら、期待値は上がって行って
ちゃんとマジックをしないといけなくなるわけで。

僕はそういった事を、先輩たちの演技だったり
いろんな場に行った際のいろんな人のふるまいから学んできたので
できるだけ速攻で現象を起こすようにするわけです。

そうでないと、ボタンの掛け違えが起こりやすいですし
状況がアンコントロールになってしまう可能性が上がるから。

これはある意味でプロでやってきたから、というのがあるのかもしれませんし、基本的にはマニアなのですが、プロの振る舞いを見てこれたおかげなのかもしれません。

一般の方々?アマチュアのマジック好きの方々?などは
観客のテンションや、感情の動きなどに意識は向かないわけです。
だって、マジックしたいのは自分だから。

なので、自分のしたい、部分最適な事を行うことになるわけです。
僕らは自分たちのことはさておき、より長期な視点から
そして最終的には自分が場のイニシアチブを取れるようにマジックを組み立てるわけです。

つまり、僕らは最初「場のイニシアチブ」を取っているなんて
思ってないのですが、そうではない方々は「場のイニシアチブ」を自分が持っている、と勘違いしているんです。
もっと言えば、そんな概念さえ気づいていないのかもしれません。

コレ、いろんな場を見て、先輩たちから学んで来たら
気づける人は気づけるし、質問したら答えてくれるような内容です。
庄司さんは明確に「だめだよ~すぐやらなきゃ~」って言っている時もありました(笑)。

そういった事を加味して、手順というかトリックそのものを見ていると
どういうタイミングで行えるトリックなのかの分別もできるようになるはずです。

僕は、正直最初のエフェクトまで時間がかかる方です。
そして、分かる人間は、それを明確に理解します。
銀座ジョイアの龍野君にはっきりと言われたことがありますので。
「最初の現象までが長いですよね」って。

コレ、リスクをはらんでいるという事も含んでいますが
その分、相手の期待値を徐々に上げていって
それをクリアできる現象だと、問題はなくなるのです。

今考えてみると、微妙にいろんなことをまぶしてあって
それらが少しずつ効果を及ぼしていたのかな、とも。

セリフで笑ってもらったり、取り出してきたものでちょっとした
現象を起こしたりして、小さなものを積み上げて、少しずつ
相手の期待に応えていた、というのもあったと思います。

そういった事を考えないで、いきなり工数の多いトリックとかを
行うと、お客さんの集中力が持たないんですよね。

ワンデックずっと配っていくとか、ダウンアンダーとかで
ちょっと複雑な作業を行ってもらうとか
そんなの、最初には持ってこないわけです。

むしろ相手が食いついてきて、もっと見たいとか
変わったものを・・なんて状況で行うもののはず。
いわゆる中ねたとかになってくると思うんです。

のっけに、オチがあるわけではない話をするとか
オチがあるにしても、話慣れてないことを話したり
無駄な言葉を並べたり、現象が起こるまでに
工数がかかるマジックしたり・・・

そんな状況になったら、お客さんの興味関心は
ダダ下がっていることが多いです。

なので、僕ならしない、という事なわけです。
そして、なんでそんなことをしないのか、となれば
「そう学んできたから」
というだけです。

自分の経験から学ぶ、でも
先輩などから学ぶ、でも
どちらでもいいのですが。

ですので、ダダ下がるようなマジックをしている人を見た場合
1つには「自身の経験量が少ないか、自身の経験を冷静に顧みてない」人
ってことになるかと思います。

たとえ「私はマジック歴が30年だから・・」とか言っていたとしても
ギュッとつめれば、2年程度でしょ?みたいな人はいるわけで。
毎晩バーに立っている若手に、お客さんのリアクションで負ける理由は
単純に経験量の差です。

もう1つには「周りに適切な先輩や仲間がいない」ってことですね。
そういった存在がいたら、直すきっかけが出てくるはずなので。
その人の問題で、そういった人がいないのか、本当に周りにいないだけなのか、その辺は難しいのですが。

独学で学んでいます、って人に起こりがちなものがこれでしょうか。
マジックが好きで、マジックを見てしまう人なら余計に
まわりの状況に対してマジシャンが何を行っているのかを見たり
感じたりって不得意なんですよね。

ただ、適切に経験を重ねたり、自分ではなく周りにも意識をはるようになれば気づける部分は出てくるはずなんです。

なので「30年やっていて、それですか・・」ってなることが多いわけです。
その意味する内容としては、マジックどうこうもあると思うのですが
その前段階の準備や導入、やっている際の滑らかさ(トリックのというよりも仕事全体の段どりみたいなもの)、まわりに気を払えるのかの部分、終わった後のクリーンナップなどでしょうかね。

で、面白いのは、「なんとなく」場数を踏んでいる人って
よりクオリティの高い人の場を見ても、ビックリする位学べない(笑)。
手品しか見てないとか、テクニックしか見てないとか。

そこじゃねーだろう的な部分を
嬉々として話してきたり。

マジックをしたいだけなら、まあ周りの事なんて
関係ないから、好きにして頂ければいいのですが。

そうではなくって、見てくれる人に喜んでもらったり
次につなげていけるようにして行ったりなら
自分ではない部分の要素を理解し学んでいくことでしょう。

どこかに見に行くとしても、そのマジックだけではなく
人の振る舞いや、その振る舞いに対しての見ている人の反応などを
学ぶ事のほうが大事だと思いますし。

なので僕も見に行ったり、とかしますが
別に楽しみに行くというよりも、どのようなふるまいをするのか
それに対してどのように反応するのか、って事の方が大事で。
(大抵のネタに関しては、既にどこかで知っていることが多いので)

さて、あなたのマジック、最初の30秒で現象が起こっています?
つまらない話を長々してません?
相手のテンションを感じようとしてます?

手品は面白いんですよ、でも演じる人が面白くない
ってなりがちなので(笑)
(自分も含めてですよ)
なので、トリックだけではない部分までタップリ見て
学んでいってみて下さい。

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