いちごの在野研究所を目指して@伊東・伊豆高原⑦ 夏イチゴ 家庭菜園/屋外プランター栽培データを読み解く
家庭菜園の環境で、いちご生産者の栽培方法に近づけるのが、夏イチゴ試験栽培2023の狙い
夏イチゴの試験栽培2023では、屋外プランター栽培と言う家庭菜園でも作れる栽培環境で、いちご生産者の栽培方法に可能な限り近い手段を取ることとした。以下がその具体的なアプローチである。
屋外プランター栽培、施設園芸の栽培条件に準拠した方法で試験栽培に着手することとした。
近年、いちごの促成栽培(冬春いちご)、ならびに、夏いちご栽培のいずれの栽培技術も、ビニールハウス施設園芸(+高設ベット栽培)が主流であり、農業試験場/研究所の夏イチゴの栽培試験データも同栽培環境に従うものとなっている。 実際、本夏イチゴ品種の開発者である信州大学が公開している栽培ガイド資料も、施設園芸(+高設ベット栽培)を前提とした栽培試験データを掲載している。
屋外プランター環境(家庭菜園に適した環境)は、様々な点で、施設園芸と栽培条件が異なるが、信州大学が公開している栽培ガイドに準拠した条件で試験栽培を実施することとした。
ビニールハウスは夏イチゴ栽培に必須か?
北海道、東北、長野等の夏イチゴの産地は、4-5月、および、10月以降の夏いちごの栽培期間に、夜温を含めて夏イチゴの栽培適合温度帯を下回っている。 これが夏イチゴ栽培でビニールハウスが必要となる理由の1つである。
しかしながら、伊東市・伊豆高原では、定植初期の4-5月には、すでにいちごの栽培適合温度帯に入っており、温度環境だけを考えると、ビニールハウス無しで栽培可能と判断できた。
屋外プランター栽培で可能な限りいちご生産者と同様の資材を使用
具体的には、
・ いちご生産者の使用している培土と同様の成分の培土を新たに購入
・ いちご生産者の高設栽培システム用に広く普及している液肥を使用
・ 液肥混合潅水による施肥を実施
信州大の公開文献の栽培ガイドに準拠した栽培条件を可能な限り実現
具体的には、
・推奨EC値に準拠した液肥濃度の混合潅水を調合して潅水
・家庭菜園で実施出来る範囲での「小量多潅水」(1日2回を目途)
・推奨給液/廃液率となる液肥混合潅水量を潅水
雨除けの設備については、今年度は特段の雨よけ設備は設けず、強風雨時にプランターの場所の移動等で対応。
栽培試験データから読み解く、高温時の花芽分化と収穫果重への影響
夏イチゴ試験栽培2023に参加者により、屋外プランター栽培に関する詳細な観察データの取得がなされた。以下がその観察データからの示唆である。
8月中旬以降の収穫果実の小粒化。
8月中旬以降、各花房の平均果重は第1番果であっても10g以下の小粒化となった。 下図の最初の図表(果数)は、全ての花房の開花の番果別、時期別の推移である。
信州大学の栽培ガイド資料では、同大開発の夏イチゴ品種では1花房あたり10果の収穫があると記載がある。当該屋外プランター栽培では、無摘果管理を通じ、信州大学の1花房あたり10果の記載が確認された。
下図の2番目の図表は、番果別の平均果重の推移であるが、8月上旬までは、第1-3果迄でL/M等級であったが、それ以降は第1果でも5-7gとS等級、 SS等級の小粒果実となった。
収穫果実の小粒化データについて
8月上旬以降、収穫果実は第1果であってもS等級、SS等級となっている。
この小粒化の原因については、
・7月中の猛暑による高温環境が、その時期の花芽分化に影響し、収穫果実の小粒化に繋がった
・無摘果管理と高温環境の相乗効果で、小粒化の繋がった。
等が考えられるが、次年度以降の試験栽培で検証すべき課題と言える。
小粒化の時期的推移について
第1果、第2果、第3果の時期別の果重推移を以下に示す。
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