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いちごの在野研究所を目指して@伊東・伊豆高原 第5回 夏イチゴ 定植後初期45日間に実施した栽培管理

品種開発元の栽培ガイドと公開文献を参考に試行錯誤

実施課題① 購入培土の品質・信頼性チェック

家庭菜園以上/副業農以下の環境でのいちご栽培を行う場合に、留意すべき点は購入培土の品質・信頼性チェックである。 

いちご産地では、いちご栽培資材に対する知見・経験を有する地域の農業資材業者(JA含む)が存在しており、いちご生産者はそれらの資材事業者より、一定の品質・信頼性のある農業資材の調達が可能である。しかしながら、いちご産地でない地域で、家庭菜園以上/自給農/副業農以下の農業を営む場合には、農業資材の調達には様々な配慮が必要となる。

今回の試験栽培で経験した培土の品質課題がその事例と言えよう。品質課題に気が付いたきっかけは、培土の成分状況を理解するために、プランターに培土を入れ、大量の潅水(水道水)で廃液を収集、EC値を測定したところ、水道水のEC値と比較して30倍程度の値であった。 

EC値が高い成分の理由は判別出来ないが、いちご苗の栽培に悪影響がある可能性もあるため、あく抜きのため、大量の潅水を培土に対して行い、当初の廃液値の10分の1以下のEC値となるまであく抜きを実施した。

今回の試験栽培の参加者に対しては、プランター栽培の培土準備に関しては筆者側であく抜き実施するか、参加者側にあく抜き実施を強く推奨した。自給農/副業農の営農を行う場合には、信頼を置けるべき農業資材事業者との関係を構築および維持しておくことが、農産品栽培には必須という事例と言えよう。

実施課題② 定植の株間はどの程度が最適か?

イチゴ生産者にとって、定植時の苗の株間隔は、単位面積当たりの定植数、ひいては収穫総量に大きな影響がある。 

株間隔が営農に影響を及ぼす因子としては、①栽培技術因子: 光合成効率、根が必要とする培土量、株の草勢が強くなった時の防除効率等 ②労働効率因子: 脇芽、花房、摘果等の栽培管理の労働効率等 があげられる。 

定植時の株間隔と収量の関係を示す栽培試験データは一部で公開されているものの参照すべき試験データは限定的と言える。長野県の夏イチゴ生産者にお聞きした時は、冬春いちごの高設栽培の標準的は株間である20センチ+αではなく、25センチ、30センチといった冬春いちご生産者にとっては、かなり大きめの株間隔を取っているとの発言があった。

夏イチゴなので、温度上昇と共に、株の徒長、または、暴れる(過剰の繁茂)の懸念をもったが、信大公開資料の中で20センチの記載を見つけたので、伊豆高原(大室高原)施設園芸ハウスでは20センチ株間で定植を行った。 

尚、プランター栽培の参加者に対しては、2株用のプランターの場合は、20-25センチ定植、または、1株用のプランターを推奨した。

実施課題③ 定植後45日間の花房を摘除すべきか否か?

信州大の栽培ガイド文献では、定植後初期段階は、株の育成を優先して花房を定植後45日間は摘除を推奨している(定植前に花芽が付いている花房の摘除)。 定植後45日間の花房摘除は、前述の早期収量(5-6月)に影響があるため、

花房摘除可否についての判断は悩ましい決断事項であったが、伊東市・伊豆高原の温暖な気候もあり、生育は旺盛であり、本試験栽培2023年では、4月時点で株が着果負担と株の成長の双方に堪え得ると判断し、花房摘除はせず放任とした。

実施課題④ 摘果はどの程度すべきか?

信州大の栽培ガイド文献では、1花房あたり10果の花が付くと示されているが、夏イチゴの収穫主体であるL等級、M等級を安定的に収穫するために、3~4果残しの収量データを記載し、同程度の摘果を推奨している。但し、今年度の試験栽培では、伊東・伊豆高原の気候・環境下で、夏イチゴ品種の収穫ポテンシャルがどの程度であるかを見極めるため、摘果を行わない放任栽培を行い、試験データを収集することとした。

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