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新NISAにはロールオーバーがない。

新NISA雑感。

 2024年から改正される新NISAは、生涯投資枠を設ける形で非課税期間を無期限化したことや、年間投資枠の上限を設けることで、売却時の非課税枠が翌年に復活するなど、本家ISAとの差を詰める形での大幅改善なだけあって、一介の投資家としては嬉しい発表となった。

 しかも現行NISAでいくら投じていても、新NISAの生涯投資枠に影響がないことから、これまで一般NISAやつみたてNISAに投じていた人は、移行期の一時的な扱いとは言え、時限措置の非課税枠(40〜600万円)に加えて、1,800万円の生涯投資枠が使える既得権益的な処遇となった。

 とはいえ、手放しに喜べない部分もある。現行NISA導入時に課税口座の税率が10%から20%に引き上げられたように、今回の新NISA拡充も課税口座の税率を引き上げるための口実となる可能性は高い。

 政府が資産所得倍増計画を打ち出す一方で、金融資産所得課税強化の方針を撤回していないこと。

 このことから、年金を受給開始するまでの間に資産形成を進めて貰いたい大衆には、影響が出ない規模の生涯投資(非課税)枠として1,800万円を設定し、そこからはみ出す規模の金融資産を保有する人を、富裕層と定義することで非課税口座から超過した金融資産に重税を課せば、大衆の資産形成と富裕層の資産課税強化の両立が図れる算段なのだろう。

 このシナリオが実現する場合、老後の資産形成をする分には支障がないが、現役時に早期リタイアを目論んで金融資産所得のみで食っていこうと考えると、非課税枠1,800万円と課税口座の税率30%では増税となる可能性が高い。

 しかし、私はそもそも老後資金対策程度の資産を運用した収益で賄える程度に、生活費用をミニマムにする仙人生活を営み、賃金労働をしない前提のため、副産物的に税制上は低所得者を装える。

 そのため、公的保障や公共施設の便益は受けつつも、税負担の殆どが免除されるような、富裕層と低所得者の二枚舌で強かに暮らす算段のため問題はない。この完璧な計画にどう対処する気だ?ウルトラマ(ry

現行NISA保有分は買い直し必須か。

 唯一の懸念材料は、現行NISAの保有銘柄を、新NISAに直接移管できない点である。新NISAの非課税期限は無期限のため、現行NISAの制度がややこしくなった元凶かつ、投資初心者の混乱を招くだけの忌まわしきロールオーバーの概念がそもそもない。

 非課税期間のリミットがないのだから、期限切れになる際に新しい非課税枠に移す必要もない。制度的にはシンプルになったため、これから投資を始める人には朗報だが、これまで非課税枠の恩恵を受けて、移行期を迎える投資家からすれば、現行制度から新制度への移管措置がないことは悲報とも捉えられる。

 現行NISAで保有している銘柄で、新NISAに移管したい場合は、一度市場を通じて売買する形で間接的に移す他ないからである。市場を介すということは、新NISAの取得価額が売買時の時価になることを意味し、現行NISAの取得価額は引き継げない。

 これまでの非課税枠を利用していて、今後も非課税枠で投資をしたいと考える投資家は、2024年から数年間、過渡期特有の状況とはいえ、否応にも利確せざるを得ない状態となる。

 そして、NISAには損益通算の概念がない。現行NISAで損切りとなる場合は、新NISAでは取得価額が下がるものの、非課税期間が無期限になる分、長期目線では損も得もしないが、それは現行NISAで旨みがなかったことを意味する。

 しかし、現行NISAで利確する形では、新NISAの取得価額が上がるため、将来的に含み損を抱える確率が上がり、損切りしても非課税枠故に損益通算されない訳だから、状況によっては損をする可能性すらある。

 今、得をして将来損をするリスクを負うか、今は得しないものの、将来的に損をするリスクを少しでも減らすか。非課税口座の移管では、これを意思決定できる訳でなく、市場に委ねる他なく、それが嫌なら増税必須の課税口座で保有しなければならないのはあまりにも残酷ではないだろうか。

非課税枠はキャピタル狙いを優先。

 少し大袈裟な表現だったかも知れないが、落とし所は税制改正次第な部分はあるが、ないとも言い切れない。

 現行、配当控除の制度設計趣旨として、配当は法人が税引き後当期純利益を株主に対して分配するもので、株主が受け取る際にも課税してしまうと二重課税となることから、それを調整するために設けられている。

 内容としては、課税総所得金額が1,000万円以下か、1,000万円を超える富裕層かで控除率が異なり、前者の方が有利である。

 そして、確定申告により分離課税だった配当所得を、総合課税として個人の税率に変更した上で一定割合を控除する性質上、私のように課税所得が330万円以下、所得税率10%以下の方であれば、控除率が10%のため、配当に係る所得税はゼロになり、源泉徴収された分は確定申告で全額還付される。

 一方の住民税は分離課税だと5%で済むものの、個人の税率だと一律10%から控除率2.8%を差し引き、実質7.2%となるため2.2%の増税となるが、個人の所得税率が10%以下の人であれば、分離課税の所得税率15%がゼロになるメリットが圧倒的であるため、目を瞑るしかない。

 話を戻すと、配当控除の制度設計趣旨が二重課税の調整である以上、金融資産に係る税率が何%に上がろうが、課税所得330万円以下であれば確定申告で総合課税に変更することで、個人の税率(所得税と住民税で〜20%)から控除率を差し引く構造は恐らく変わらず、配当狙いの日本株は課税口座で保有していても、大した税率を課せられない状態が続くと思われる。

 個人的な投資方針としては、外国株で分配金再投資型のインデックスファンドに非課税枠を利用し、高配当狙いの日本株は特定口座で運用していたことから、引き続きインデックスファンドはNISAで、日本の高配当株は非課税枠が余っていて、かつ買い直す時価に納得すれば移管するが、時期が悪いと感じたものに関しては、引き続き特定口座で運用し続けて、タイミングを見計らう程度のゆるい方針で良いのではないかと思う。

 せっかくの非課税枠を使い切らないのは勿体無いと思うかも知れないが、儲けが出る期待値の低い価額で買い直して、塩漬け同然になり資金効率が悪化する方が勿体無い可能性もある。人間は空白を埋めたがる心理があることを理解して、あまり非課税枠を埋めることに囚われない方が良いのかも知れない。


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