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分散投資が持て囃される昨今。

分散投資も万能ではない。

 老後2,000万円不足問題が取りざたされたのを皮切りに、国がNISAやiDeCoといった少額投資の利益を非課税に優遇する制度を活用して老後に備えるように誘導した甲斐もあってか、一昔前ほど投資は危ないものと言う感覚を持っている人が減っているように感じられる。

 少なくとも我々20代は自身が置かれた環境を鑑みて、将来の年金制度や社会保障があてにできない以上、資産を効率よく運用して自助努力によって老後に備える感覚を経済的に余裕のある立場の人ほど持ち合わせている割合が高いような実感がある。

 しかしバブル崩壊後に生まれた世代の周囲の大人たちは、投資などしなくてもそれなりに何とかなってしまった世代ゆえに、金融リテラシーがあまり高くない傾向にある。そのため、いざ投資を始めようと思っても、何に投資をすればいいのかがわからない上に、お金の話であるが故にあまり他人に聞こうとも思えず、ネット上に散乱している情報を正しいのかデマなのかを見極めながら少額を投資しているのが現状ではないだろうか。

 その中でも、「卵を1つの籠に盛るな」や、「ドルコスト平均法」がもてはやされ、どこの金融商品取扱事業者であっても、マネー雑誌にしても、長期、積み立て、分散投資を勧めている印象がある。確かに投資元本がそこまで大きくなく、運用期間が短いが故に金融リテラシーも高くない投資初心者が大火傷しないための方針としては、これほどわかりやすくて効力の高いものはないだろう。

 しかし投資の神様であるバフェットおじさんは「賢い人たちは、チャンスが訪れたときに大きく賭けます。オッズが有利なときは大きく賭けるのです。」と過去に発言していることからも、大きな利益を得るためには、時として集中投資が必要であることを示唆している。分散投資をしている以上、大負けすることはないが、大勝ちすることもない手法だと言える。

 優待名人の桐谷さんは、20万円の種銭があるなら、20万円の銘柄をひとつ買うのではなく、5万円位の銘柄を4つ位に分けて保有することを勧めているが、個人的には小型株相応のリスクを感じてしまう。

小型株の分散より大型株で銘柄を絞る理由。

 私見では小型株より大型株の方が個人投資家にとどまらず、信託会社や機関投資家、海外投資家など多様な人が売買している分、相場から大きく外れた値動きになる事は稀で、基本的に良くも悪くも相場で売買することになる。

 しかし、小型株の場合、機関投資家などの大口は見向きもしないためボラティリティが高い傾向があり、適正な株価を個人が予測するのは難しく、底値だと思って買ったらズルズルと下落して気付いた時には半値近くになっているような沼にハマる確率が大型株よりは高いというのが実体験に基づく印象である。

 実際にポートフォリオを見渡しても、ここぞと言うタイミングで手堅く仕込んだ大型株の利益を、含み損を抱えている小型株が食い散らかしている状態である。文字通り時価総額の桁が違うためトータルではプラスで推移しているが、大型株の含み益がなかった場合の運用成績は考えただけでもゾッとしてしまう。

初めに購入した日本株。

 私が弱冠で一般NISAの非課税枠である120万円の種銭を捻出した際に購入した銘柄は、キヤノン(7751)、SUBARU(7270)、今は亡きNTTドコモ(9437)を2単元の計3銘柄4単元であった。

 当時は財務諸表を読む会計知識など持ち合わせていなかったから、「日本株 高配当」などで検索してヒットした有名企業の銘柄を保有することに決めた。

 キヤノンを除いてひとりの消費者として気にいっている企業であったため、それらの株を保有して応援するだけで毎年5万円以上の配当金が非課税で得られるのが何より嬉しかった。

 キヤノンを保有する位ならソニー(6758)を保有したかったのが本音だが、配当利回りがショボかったことで妥協したのは若干後悔している。疫病の影響でキヤノンは配当金が半減されたのに対し、ソニーは巣ごもり需要でゲーム機が爆発的に売れたことで、株価が当時の4倍以上にふくれたためである。

 キヤノンを非課税枠で保有して、インカムゲインとキャピタルロスを鑑みれば損益はトントンか若干のプラス程度であり、30万円超の資金が拘束された割には大したリターンが得られなかったと振り返る。

 SUBARUは疫病による業績悪化が著しく株価は1,000円以上の下落。1株あたり144円の配当だったのが、28円まで減配されて今に至る。インカムゲインとキャピタルロスを鑑みても、大幅なマイナスリターンとなってしまった。

 投資セクターを意識することや、高配当な銘柄が割安のまま放置されているのには相応の理由があり、隠れたリスクを見落としているのではないかと疑って選定するべきことを学んだ。

 NTTドコモはご存知の通り2020年にNTTの完全子会社化をするために、TOBが実施されたため利回り4%程度の配当金をコツコツ受け取りながら、最後は時価総額で+40%程のキャピタルゲインを非課税で得ることに成功した。完全なるビギナーズラックである。

 投資初心者でありながら通信業界は伸び代があると信じて疑わなかったため、3つの銘柄のうちNTTドコモだけは2単元を55万円程度で買った銘柄だが、結果として78万円でフィニッシュしているのだから、バフェットおじさんの発言通り大きな利益を得るには分散投資では効率が悪いことを身をもって体感したのである。

分散すればするほど市場平均に寄るジレンマ。

 3つの高配当株から、損も得もしていないもの、大損したもの、大勝ちしたもの、と明暗が分かれたことによって、相応の学びを得ることができた。しかし、最初から幅広い銘柄に分散されているインデックスファンドを保有しているだけでは、こういった投資家として重要なマインドを形成する事は難しい。

 そうして現在は色々なセクターの銘柄を幅広く集め、数十銘柄を保有して値動きを観察していると、どうしても時価総額は市場平均のような動きになりがちで、全体では大きく損しない反面、大きな利益が得られることも少なくなることを実感している。

 また銘柄数が多ければ多いほど、ポートフォリオの管理がジャグリング状態になりがちで、全ての銘柄をリアルタイムで把握して適切なリバランスを行うのは限界があるから、分散のやり過ぎも考えものである。

 日本株は株主優待制度があるため一概に言えない部分があるが、外国株で分散し過ぎて管理が複雑になっていると感じるのであれば、似たようなインデックスファンドやETF(米国高配当株であればSPYD)が存在するだろうから、思い切って0.1%前後の運用手数料を支払って省力化するのも良いかも知れない。

 それでは個別株投資の醍醐味がないと感じるのであれば、集中投資向きの考え方だと思われるから、自分を信じて大きく賭けてみてはいかがだろうか。


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