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運用総額600万円位から感じる、運用手数料1%の壁'e

ロボアドやアクティブファンドは運用コストが高い

 投資初心者には頼れる存在のロボアドバイザーや、インデックス運用に物足りなくなった玄人向けのアクティブファンドにありがちな1%前後の運用手数料だが、仮に時価総額が600万円で1%の手数料が発生すると年間6万円。月換算で5,000円もの資産が手数料で消える計算となる。

 大事なことなので何度も記すが、リターンは不確実だが、コストという名の運用手数料は確実に徴収される構造上、運用手数料は安いに越したことはない。私が積立している投資信託のeMAXIS Slim全世界株式の運用手数料は0.06%で、隠れコストを加味しても倍の0.12%程度。

 似たようなインデックスファンドでも、今ほどインデックス投資が浸透していなかった時代の、古めのファンドによっては1%前後の運用手数料を取っているところもゼロではない。

 似たり寄ったりの金融商品で毎月確実に出て行くコストが月5,000円か、月500円かでは大違いで、手数料の差額だけで、毎月叙々苑のランチが食べられる程度に差がある。

 かつての私がそうだったように、資産運用に慣れていない一般人は、運用手数料1%の数字以上の大きさが分からず、銀行や保険の営業マンに勧められるがままに金融商品を契約してしまう。

 どんなものでも、相場を知っておくことが、騙されないための処世術と言えるだろう。相場より明らかに高いものは、ぼったくられてカモにされている可能性が高いし、相場より明らかに安ければ、何か見落としている罠があると思った方が良い。

おまけに釣られると本質を見失う

 私が投資初心者の頃に勉強がてら運用してみたWealthNavi forソニー銀行では、時価総額が500万円を超える場合、優待プログラムSの特典として、デビットカードの還元率が1.5%に上昇する。

 それを目当てに500万円を超える位までは運用していたが、WealthNaviの特徴として、良くも悪くも、分配金の入金額や、手数料の出金額が履歴で見れることで、株式や債券、不動産などから分配金が得られても、そのほとんどが運用手数料として消えていっている状態が目についてしまった。

 つまり、増加しているのは元本部分だけであり、分配金再投資による複利の恩恵を受けたいのであれば、運用手数料1%と言うのは相殺される程度に高い部類であり、あまり良い選択肢ではないことを身を以て体感したのである。

 冷静に考えて、デビットカードの還元率を0.5%上げるために、毎年5万円超の運用手数料を支払うことを考えると下手なステータスカードよりも圧倒的にコスパが悪く、低コストで生活している身としては、大量消費しなければ高い還元率の恩恵も得られず相性が悪い。

 優待プログラムの仕様上、3月、9月の判定さえクリアしてしまえば、半年間はゴールドステージが維持されることを事前に把握していたので、その月にゴールド判定を獲得したのを機に、WealthNaviを全額出金。

 年会費無料で還元率1%超のクレジットカードと、運用手数料が0.1%水準の投資信託の組み合わせに切り替えて、ロボアドバイザーを卒業した。

 私は、おまけに釣られて資産運用の本質を見失い、資産形成最大のヤマ場でもある、ゼロから100万円と、1,000万円までの中間地点である500万円を形成するまでの道のりで遠回りをした。だからこそ、今では目論見書の隠れコストまで確認するように成長した意味では、運が良かったと捉えている。

分配金再投資は利益と税金が繰り延べられる

 WealthNaviで株式、債券、不動産、金のリスク許容度に応じた資産配分や、情勢による資産の増減具合、リバランスのタイミングなどを3年程度観察してから、eMAXIS Slim米国株式(※当時)に一本化した後は、目論見通り複利の恩恵を実感できるようになった。

 自身の置かれた状況を鑑みて、収入が安定的な会社員で20代単身者と、大きなリターンを狙いリスクを取って失敗しても生活に困窮するような大打撃はないと考え、ここ数年のリターンが良かった米国株式と、表向き0.09%と最低水準の運用手数料を兼ね揃えるeMAXIS Slim米国株式に集中させた。

 結果として、2〜3年で1.5倍程度に資産が増加していることから、この判断で問題がなかったと思っている。もちろん、リターンと同じくらいの含み損が出ていたリスクがあったことは理解した上で、問題ないと判断している。

 実際、疫病による恐慌により、1週間足らずで新卒1年目の年収に匹敵する規模の暴落に見舞われたが、長期的には右肩上がりで資産が増加することを信じて、狼狽売りをするようなことはなく、平常心を保つことができていた。

 そして低廉な運用手数料により、分配金再投資が働くことで、複利の恩恵を実感するだけではなく、WealthNaviでは自動化されていたリバランスによる利益確定。つまり、利益と税金は自分の意思で売却しない限り、永遠に繰り延べ続けることができるメリットをこの時に認識した。

 ETFでは分配金が出た際に課税されてしまうので、税引き後の利益に対して再投資の流れとなるが、分配金再投資の投資信託では、税引き前の利益で再投資されることから、いくらETFの手数料が安くても、課税の繰延ができないデメリットよって、コスト面でのメリットが相殺されてしまう可能性があると感じた。

 ETF最大のメリットは透明性であるが、運用手数料の話から随分外れてしまうため、この辺りで筆を置かせていただく。

[増補]運用コストとパフォーマンスの高低は相互に影響しない

 2024年からNISAが大幅拡充されたことに伴い、NISAつみたて投資枠並びに成長投資枠の対象となる金融商品間で、顧客獲得競争が繰り広げられては、マスメディアを通じてコストに見合うだけのパフォーマンスを出す自信があると豪語するアクティブファンドも散見される。

 投資初心者の先入観として、運用コストが高いということは、最低でもコスト以上の成果をあげる自信の表れだと思いこみがちである。

 しかし、いくらアクティブ運用において銘柄選定にコストをかけたところで、投資対象が鳴かず飛ばずとなることもあれば、パッシブ運用のように格付け会社が公表している、黄金比のレシピ通りに機械的に運用して、市場平均に準じたパフォーマンスを取りに行く方が、勝率が高いことはザラにある。

 これは学生時代のテスト前に、山勘でピンポイントの分野に集中して勉強するのか(アクティブ)、出題範囲を広く浅く勉強しておくのか(パッシブ)で、どちらの方が得点が底上げできるかを想像すれば、アクティブ運用はギャンブル要素が強いことは明らかだろう。

 資産運用は長期で行うのが定石とされており、ピンポイントの集中投資で絶えず当て続ける綱渡りを続けるアクティブ運用と、平均点が取れる分散投資で、時間をかけて積み立て続けるパッシブ運用。

 どちらが長期で運用し続けられる、持続可能性が高いかを考えれば、全世界や米国株式の市場平均を、相場の乱高下を気にせず、大人しくじっと持っておく方が理に適っていると私は考えるが、いかがだろうか。

 現にアクティブファンドの9割は、確実に徴収される手数料の高さが仇となって、最終的にはインデックスファンドに勝てないと言われている。

 買い物で”高くて良い”は当たり前だが、資産運用の世界では運用コストとパフォーマンスの高低は相互に影響しないため、”高くて良い”は基本的に成立しないと思っておいた方が、上手い話に乗せられて、蓋を開けてみたら詐欺だった的な被害に遭うこともないため、安全牌ではないだろうか。

 投資というのは地味な作業の積み重ねであって、一発逆転が狙える類のものではない。だからこそ、運用手数料のような細かい数字にも気を遣い、最適化できないかを考え続け、行動に移せる人が、時間をかけてお金持ちになっていく。

 最初はおまかせ運用で、いつかは乗り換える手間が掛かるものの、手数料が可視化されているロボアドは、それに気付ける要素がある意味で、入り口としては悪くない選択肢なのかもしれない。


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