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電力容量市場制度で新電力に陰り?


容量拠出金で新電力は大幅値上げ

 4月利用分の電気代を見て、前月比1.5倍以上となっていることに私は驚愕した。と言っても元々1,500円そこらで収まっていたものが、2,250円になりました。みたいな、絶対値が小さかったが故の1.5倍であり、己のしみったれ具合を晒しているような気がしないでもない。

 さて、電力使用量が大差ないにも関わらず、大幅に値上げとなったのは、4月利用分から、容量拠出金たる項目が登場し、それに750円近く取られていたからで、当然、算出根拠を調べるまで夜しか眠れない日々が続いた。

 私が理解した範囲でざっくり記せば、新電力が4年先の燃料調達に困らないよう、電力容量市場でヘッジを掛けるための拠出金を、4年後の利用者から徴収するシステムであり、やり方は各社に一任されているものの、私が契約している新電力は、契約アンペア数に応じて課せられたため、使用料の少ない私は割を食う格好となった。

 そして、これの何が嫌だと感じたか記せば、電力会社の比較サイトにはまだ反映されておらず、自身のライフスタイルで最も合理的な電力会社を、幾多の中から目星をつけて、容量拠出金の具体額を逐一調べ、算出しながら比嘉検討するのは、難儀するのが目に見えていることだ。

 いくら基本料金が0円でも、容量拠出金に関する費用で、毎月750円近く取られるなら、事実上の基本料である。

 それならば、+200円程度で、大手電力会社の基本料金を大人しく支払った方が、新電力の市場連動プランと異なり、燃料費調整に上限規制が設けられているため、2年前のようなエネルギー価格の急騰が再び起きても、電力会社が赤字となるだけで、消費者の懐はそこまで痛手を負わない保険が掛かっている分、まだマシだと考えてしまう。

 実際に、大手電力会社で料金シミュレーションしてみた結果、基本料こそ発生するものの、電力量料金が基本料0円の新電力よりは割安に設定されているため、仮に8円/kWh程度の差があると仮定すると、容量拠出金と基本料の差額が200円程度なのだから、単純計算で月に25kWh以上使うなら、大手電力の方が安いことになる。

 燃料調整額などの算出方法が異なる可能性があるため、上記だけを以て大手電力が良いと決め付ける訳ではないが、乗り換えにペナルティがない以上、色々と試してみるだけの話である。

 結局のところ、基本料0円がウリの新電力は、電力量料金が割高に設定されているため、私のような仙人向けのプランだったはずだが、そこに容量拠出金が加算されれば、大して使わなくても大手電力とほぼ変わらず、使えば使うほど高くなるのだから、もはや何のための新電力なのかよくわからない。

インフラを間借りするビジネスの限界

 現に4年前の時点で、容量市場の約定結果は出ており、それを元に75%の新電力が、事業存続が危ぶまれると回答している。

 その証拠に、新電力の事業撤退や、倒産はここ数年で増加している傾向にあり、ただでさえ厳しい経営環境下で、4月からの容量市場の拠出金を負担しなければならないからだ。

 また、想像するに、新電力を契約する消費者層は、格安SIMなどと同様、マネーリテラシーの高い層がマジョリティとなっているものと思われ、この手の値上げには敏感かつ、一度変えたらそれで終わりというよりも、定期的に見直す癖がついている。

 だからこそ、当時の最適解を今現時点での条件で再試算した結果、他社のプランに経済的な合理性が見出せれば、乗り換える手間を厭わないため、新電力は熾烈な競争環境にあると言える。

 とはいえ、新電力やガスにしても、格安SIMにしても、基本的な構造は、インフラを大手から間借りして、1単位いくらの形で卸売を行なっているに過ぎず、間接費を削る形で大手より安いことを訴求するのが一般的な商法と捉えられる。

 しかし、独占が許されているインフラの類は、規模の経済が働くため、事業の規模が大きければ大きいほど、利用者一人当たりが負担する間接費は安くなる。

 そのため、自由化で参入障壁が低くなったところで、小規模な事業者は価格競争で不利なことが多く、資金力のない会社から順に淘汰され、結局のところ、資金が潤沢で大規模な会社が数社だけ残る形で落ち着くのが、いつものパターンと言える。

 かつて(と言っても10年前になるが…)、格安SIMもといMVNO黎明期に、有象無象の会社が乱立しては淘汰され、結局残っているのは、大手キャリア傘下のサブブランドと、mineo(元関西電力系)、IIJmio、OCN、イオン、日本通信、J:COMと、バックに知名度や資金力のある大企業系列の会社しか生き残っていない。

 恐らく同じような事態が、これから新電力やガスで起こるものと思われ、それを踏まえた上で、現状の契約が果たしてベストな選択なのか、自問自答する価値はあるだろう。

 私は一周回って大手電力会社で、一旦様子を見ることにしたが、この選択が吉と出るか、凶と出るかが分かるのは当分先の話となりそうである。


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