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水道料金も値上げ?値上げの現状と理由、対策方法を解説

「知らぬうちに水道料金が値上がりしているのはなぜ?」

生活に不可欠な水道の料金が値上がりすると、固定費の増額で困りますよね。
給与の上昇よりもインフレが急激に進むことで、自由に使えるお金が減り続けると、生活の楽しみも減ってしまいます。

結論からいうと、水道料金は今後中長期的に値上がり続ける可能性があります。
なぜなら、水道料金の値上げは人口減や水道施設・設備の老朽化が原因であるため、一過性ではなく恒常的な問題だからです。

ここでは、水道料金の値上げの現状とともに、値上げの理由、値上げへの対応方法について順番にお伝えします。
この記事を読み終わる頃には、水道料金値上げへの備えの必要性を理解し、水道料金の節約を自ら進められるようになります。

1.水道料金の値上げの現状

水道料金の値上げが日本各所で継続的に発生しています。

過去30年間で全国平均の水道料金はおよそ1.5倍に増加しています。
また、値上げしている場所は都道府県関係ありません。

様々なモノ・コトの価格が上昇している中で、水道料金も同様の自体に陥っていることを把握しましょう。

1.1水道料金の値上げの推移

日本全体で見ると、水道料金は右肩上がりの上昇傾向です。

特に2005年以降、値上げ幅は大きくなり、水道料金の値上げが顕著になっています。

参考:総務省統計局「2020年基準消費者物価指数」

直近10年間の光熱費の値上がり状況を比較すると、ガス代が34ポイント、水道料金が29ポイント、電気代は23ポイント上昇しています。
ガス代や電気代の値上がりが注目されることが多いですが、値上げ率では、水道料金も決して劣っていません。

電気代やガス代は水道料金よりも高いため値上げに気づきにくいですが、気づかぬうちに可処分所得が減る原因の1つになっています。

1.2直近3年で水道料金を値上げした自治体

水道料金の値上げは地域や都市の大きさに関係なく、全国各地で行われています。
水道料金の値上げの原因は、地域や都市の大きさに依存していないためです。

出典:東京財団政策研究所「水道の現在地 2」に 記載の図を筆者にて改変

すでに値上げした自治体も今後追加の値上げをしたり、直近で自治体もいずれ値上げに踏み切ったりする可能性は大いにありえます。
値上げをする場合、自治体はwebページを通じて背景や変更内容を説明資料にして開示しており、具体的な状況を確認できます。

今住んでいる自治体が水道料金の値上げの予定状況を確認したい場合には、自治体のホームページでチェックしましょう。

1.3水道料金が決まる仕組み

水道料金は、向こう3年間に発生する水道サービスの維持費用や将来の施設更新費用も踏まえて、決定されます。

具体的には4つのステップで水道料金が決定されます。

  1. 財政計画の策定:料金算定期間や需給計画の決定

  2. 料金水準の算定:料金算定期間に発生する各種費用の算定

  3. 料金体系の設定:基本料金や従量料金で回収する割合や費用の算定

  4. 料金表の確定 :水道料金設定の確定
    参考:厚生労働省「水道料金について」

ここで重要なポイントは、水道料金は受益者負担の原則が適用される点です。
受益者負担の原則とは、地方公営企業法にある「経営に必要な費用を経営によって得られる収入で賄わなければならない」ことです。
つまり、水道サービスの維持管理に必要な費用が増えた場合には、その分、料金も増額して賄わなければなりません。

水道料金は、サービス提供し続けるために必要な費用とその利用者数のバランスで決まります。
費用が増えたり利用者数が減ったりすると必然的に利用者あたりの料金は増額され、今の日本の水道料金はまさにその状況に入っています。

2.水道料金値上げの理由

水道料金の値上げが発生する理由は、以前よりも少ない人口で、老いた水道設備を維持・増強しなければならないためです。

水道料金の値上げの原因は収入減と費用増の2つに分解できます。
水道料金の収入が減少すると同時に、水道事業の継続に必要な費用の増加が継続すると、いずれ赤字になり水道事業が成立しなくなります。

水道料金の値上げは日本の社会構造が原因であり、回避できない問題です。
値上げの背景を正しく理解して、今後の値上げへの備えを進められるようにしましょう。

2.1水道料金の収入減

現状と同様の水道料金の構造を続けていくと、将来の水道料金の収入が減少し続けるのは避けられません。
なぜなら、水道収入に直接影響する水道の使用量が減少する要因が同時多発的に進んでいるためです。

水道は、生活用水、工業用水、農業用水に分けられます。
農業用水の使用量は50年間ほぼ横ばいである一方で、生活用水と工業用水の使用量は減少傾向です。

水道料金は使った分だけ支払う仕組みのため、使用量が減少傾向である現状を踏まえれば水道料金の収入も当然減少します。

2.1.1生活用水の利用者数の減少

引用:厚生労働省「日本の人口の推移」

水道を利用する人が減れば水道の使用量も減るため、水道使用量に依存する水道料金も自ずと減ります。

日本の人口は2010年頃にピークを迎え、今後は人口は減少していく見込みです。
そのため、1人当たりの水道使用量が増えない限り、今後の水道使用量も減少していくことは明白です。

現在の水道料金の収入は人口に大きく依存する構造のため、水道料金の算定方法が変わらない限り、水道事業の収入は増えません。

2.1.2生活用水の1人当たりの水使用量の減少

引用:国土交通省「水資源の利用状況」

1人当たりの水道使用量は1998年がピークとなり、その後は継続的な減少傾向です。
減少している背景には、節水機能を有する家電などの住宅機器の普及や節水意識の高まりがあげられます。

生活の中で大量の水を使用する風呂・トイレ・皿洗い・洗濯では、いずれも節水機能の高い機器や設備が市場に展開されています。
そのため、家電の買い替えや家のリフォームなどの際に、節水機能のある設備を採用すれば水道の使用量の減少は容易です。
さらに、過去に比べて消費者の節水意識が高まっており、社会全体で節水が進みやすくなっています。
参考:国土交通省「節水に関する特別世論調査」

技術の発達と地球環境への意識の高まりが合わさり、1人当たりの水道使用量は今後も減少していくと想像されます。

2.1.3工業用水の有効利用の高まり

出典:内閣官房水循環政策本部事務局「令和4年版 水循環白書」

水の効率的な利用や有効利用が進んでいることで水道使用量が増えず、結果として水道料金収入が増えない要因になっています。

例えば、水の効率的な利用として代表的な工業用水の再利用率はおよそ約80%です。
また、雨水や下水処理水(再生水)の活用も進んでおり、雨水の活用量は1,200万㎥を超えています。
水の有効活用が進む背景には、関連法律や自治体の条例があり、今後も有効活用は進んでいくと考えられます。
参考:内閣官房水循環政策本部事務局「令和4年版 水循環白書」

水資源の有効活用が進めば、水道事業から提供される水の使用量が減少するのは当然の結果です。
皮肉にも、資源の有効活用が水道料金の収入減少の原因の1つになっています。

2.2水道事業にかかる費用増

水道事業に関連する費用は、今後さらに増加していく傾向です。水道を提供し続けるためには、現在の水道設備の強化や更新が必須だからです。
ここからは、費用増の主原因や、水道事業の根本的な費用構造を説明します。

2.2.1老朽化した水道施設の更新対応

出典:厚生労働省「令和4年度全国水道関係担当者会議」

今後の水道施設の老朽化対応が費用増に大きく影響しています。
年々増加する法定耐用年数を超えた設備の更新が進んでおらず、水道環境を維持するための設備更新作業が不可避だからです。

水道設備の法定耐用年数は40年ですが、実務的な更新年数はおよそ設備導入をされてから60年後が目安です。
現在の更新タイミングの設備は1960年頃までに導入された設備であり、今後高度経済成長期に導入された水道設備が更新対象に入ってきます。
そのため、今後増える更新作業を実施する場合、必要な費用は現在の投資額より年間5千万円以上は追加が必要と見込まれています。

これまで同様に水道を使い続けるためには設備の更新作業が避けられず、更新作業にかかる費用は水道料金を増額して賄う他ありません。

2.2.2自然災害対策の推進

参考:厚生労働省「令和4年度全国水道関係担当者会議」

年々激化・頻拍化する自然災害が発生しても水道を提供し続けるためには、耐災害対策を進めなければなりません。
国が定めた国土強靭化計画の耐災害化の目標を現状は下回っているためです。

2025年度までの耐災害対策の完了目標に対して、停電対策・土砂災害対策・浸水対策・地震対策はいずれも目標未達の状況です。
水は生活に不可欠であるため、自然災害発生時にも提供し続けられるようにするために、耐災害の取り組みは避けられません。

2.2.3そもそも固定費率の高い費用構造

参考:厚生労働省「最近の水道行政の動向について」より筆者作成

水道事業は他の生活インフラエネルギー事業と比較すると、費用における固定費の比率が圧倒的に大きいのが特徴です。
他インフラ事業は燃料の利用状況に応じて変化する費用が大きい一方、水道事業では水量の増減に影響する費用はほぼ発生しないためです。

水道事業の固定比率はおよそ95%。
その中で最も大きな割合を占めるのは設備の減価償却費であるため、典型的な装置産業と言えます。

そのため、一定程度の給水量による収入が確保できないと赤字になってしまうのが水道事業なのです。

3.水道料金値上げへの対策方法

水道料金の節約は消費者だけでなく、自治体も率先して進めようとしています。
そもそも、水道料金の値上げは、水道サービスを維持するために必要な費用が増えていることに原因があるためです。

しかし、前述の通り、水道料金の値上げは構造的な問題であり、自治体の取り組みや努力では解決できません。
とはいえ、自治体の取り組みは、水道料金の値上げ幅に影響するため、理解しておくとあなたの節約の取り組みにつながる可能性があります。
同時に、個人で進める節約方法を確実に実行し、値上げへの抵抗力を高めましょう。

3.1自治体としての取り組み

水道事業の費用増を抑止するために、民間事業者との連携を加速しようとしています。
民間事業者のノウハウや効率的な業務を活用することでコスト削減が期待できるためです。

民間事業者との連携方法は、一部分の委託から、全面的な委託まで幅広く、実施例は2021年度まででおよそ3,700件に至っています。
例えば、宮城県は上工下水道の施設を民間事業者に委託し、現状と比較して10%の費用削減し、20年間で合計337億円の削減を目指しています。
参考:宮城県「宮城県上工下水一体官民連携運営事業」

水道事業に関わる人員が減少・不足している状況も踏まえ、水道サービスを継続する上でも今後は民間との連携が肝になってきます。

3.2一般消費者の取り組み 中長期的な対策

一般消費者が長い目で水道料金を節約する方法としては、水道料金の安い地域への引っ越しがあげられます。

水道料金に地域差が発生する理由は、水源との距離や、設備の老朽具合、利用者数、水質などが影響します。
家庭における平均的な水道使用量20立方メートルにて、都道府県別に比較すると金額差や最大で月2千円程度、年間で2.4万円です。

参照:水と暮らす「水道料金ランキング!1345市町村の順位を公開、6,000円の差も」

現在水道料金が高い地域は、利用者数が少なかったり、水源との距離が長く設備維持費用が高止まりしていることが多いです。
そのため、今後、ますます利用者数が減り老朽化対応費用がかかることを考えると、金額差が大きくなることが予想されます。

もし、今住んでいる地域から引っ越したいと考えている場合には、引っ越す場所選びに水道料金の安さも条件に入れることをおすすめします。

3.3一般消費者の取り組み 短期的な対策

参考:厚生労働省「いま知りたい水道東京都水道局「節水にご協力を」

日常生活の水の使用量からムダをなくすだけで、すぐに節水効果が得られます。
家庭内の水の使用量は1日で1人あたりおよそ230Lです。
230Lの内、90%が4つの場所や家事で占められているため、節水活動の対象は4つに絞れます。

いずれの対策も大きな投資や面倒な手続きは不要で、行動習慣を変えるだけですぐに効果が出るものばかりです。

水使用量の節約行動は、一緒に利用する日用品の節約に繋がりやすいため、節約効果が得られるのは水道料金だけではありません。
やり方次第では、所要時間の短縮につながることから、コスパ・タイパを高めたいあなたにおすすめです。

まとめ:継続的な水道料金の値上がりに負けない準備をしましょう

この記事では、水道料金の値上げの実態とともに、値上げの理由や節約対策についてお伝えしました。

  • 水道料金は過去30年で1.5倍に上昇しており、今後は日本全国で断続的に値上げが継続する見込み

  • 値上げの原因は、水道料金収入の減少と、水道サービス維持に費用の増加による収支の悪化

  • 自治体は民間への連携で費用増の抑制を図っているが、個人レベルでは節水対策が有効

生活インフラエネルギーの電気・ガス料金の値上げが目立ちますが、水道料金の値上げも着実に進んでいます。
水道料金の値上げは、人口減による収入減と設備更新の費用増といった構造的な問題が原因です。

水道サービスを提供する自治体は民間企業との連携による費用減を進めており、国も後押しをしています。
しかし、民間との連携だけでは費用増と収入減による水道事業の収支悪化を改善できず、収入増のための水道料金値上げは不可避です。

水道料金の実態を正しく把握しておけば、突然の値上げに驚かずに済みます。
日頃からできる節水対策を習慣化して、インフレへの抵抗力を高めましょう。


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