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AGIって何?注目される背景や今後の動向について解説

「AGIって何?」
「AGIはどうして注目されているの?」
「AGIが登場するとどうなる?」

AGIという、聞き慣れたAIの名前ではありません。
生成AIの衝撃を踏まえると、AGIはさらに社会に大きなインパクトがあると容易に想像できます。

結論から言うと、AGIは、人間のように学習や判断が可能な、今後誕生すると期待されているAIです。
AGIは、既存AIと異なり用途が限定されず、未知の状況にも自己判断し、人間の感情すら理解できるAIと考えられています。

そこで今回は、AGIの概要、注目されている背景と合わせて、今後の動向について順番にお伝えします。
本記事を読むことで、AGIに関するニュースに敏感になり、技術革新を先取りできるようになりましょう。

1. AGIのあらまし

AGIは将来的に登場すると見込まれているAIであり、現在の利用可能なAIとは次元の異なるAIです。
なぜなら、AGIは人間のような思考回路を持ち合わせて、学習から判断まで自分自身で行えるAIを指しているためです。

生成AIの急激な発達と浸透により、AIが生活や仕事にも利活用できる技術まで進化したことが広く認知されています。
しかし、生成AIを使いこなすには専門的な知識が必要であり、十分に機能するには人間が膨大な情報を学習させなければなりません。

一方、AGIは人間のように振舞えるAIとされており、近年の技術発達速度から実現可能性が高まっており、登場の期待が膨らんでいます。

生成AIに関して興味がある方はこちらの記事を参考にしてください。

1.1 AGIの定義

AGIは、Artificial General Intelligenceの略語で、日本語訳では人工汎用知能を指します。
AGIは現時点で共通認識のある明確な定義が規定されていませんが、現在の様々な考えが集約されると以下のような定義に整理されます。

人間が実行できるあらゆる知的タスクを遂行可能な機械知能

引用:ガートナー「人工知能 (AI) のハイプ・サイクル:2023年」

AGIは現在開発中の新たなAIであり、市場に投入されると定義が変化する可能性があります。
と言うものの、変わらない点は、人間のような知能を持った人工知能がすなわちAGIである点です。

1.2 AGIの特徴

AGIは人間と同様の思考回路を有する人工知能とされているため、備わっている特徴もより人間的な機能と想定されています。
AGIが有すると考えられている特徴は大きく4つに大別されます。

AGIは人間の思考そのものを再現した知能であり、特定の仕事の自動化や効率化を目標とする従来型のAIとは一線を画します。

1.3 AGIと既存AIの違い

AGIは既存のAIとは性質が全く異なり、同じAIでも機能が全く異なります。
既存AIは特定の仕事を専門的に処理する設計に対し、AGIは幅広く複数の処理に同時対応できるよう設計されると言われているためです。

AGIと既存AIを比較すると、領域・作業・学習・対応力の4つの領域でその違いが明確です。

AIには強いAIと弱いAIという分類もあり、幅広く対応するAGIが強いAIであるのに対し、対応範囲が限定的な既存AIが弱いAIとされています。

AGIはまさに人間の代わりになり得るAIであり、人間の作業の一部を代行させるために存在する既存AIとは位置づけが異なります。

2. AGIが注目される背景

AGIの注目度や期待値が高まる背景には、既存のAIや人間では対応しきれない問題が差し迫っている状況があげられます。
AGIは人間に近い思考ができるAIである特徴から、既存AIや人間では解決しえない以下のような問題を解決する方法として期待値が高いです。

  1. 市場変化の高速化

  2. 先進国における労働人口の減少

  3. 過去の経験では解決困難な問題の発生

AIの技術的発展がAGIの出現期待を高めているのは間違いありませんが、根底には現在の社会が抱える問題が重くのしかかっています。

2.1 市場変化の高速化

ITの発達に要する時間が短くなり、市場動向が従来よりも短期間で大きく変化している状況が、AGIの注目度を高める背景の1つです。
従来型のAIを利用する場合、分析や予測の前提が変わるとそれに応じて、機械学習や設定内容の見直しの手間が必要になるためです。

従来型AIにおける機械学習や設定内容の見直しには時間も労力もかかり、その作業を短期間で何度も繰り返すのは現実的ではありません。
一方、AGIは自ら学習する機能が備わるとされており、過去の経験や新たな情報から学習して進化する点が従来型AIとの違いです。

今後も技術発達で市場の変化速度も上がり続けていくと、機能特性から従来型AIよりもAGIの必要性が高まるのは自然な流れと言えます。

2.2 先進国における労働人口の減少

日本などの先進国を中心に少子高齢化の影響で人口が今後減少すると予測されており、人間の代わりの労働力としてAGIが注目されています。
AGIは人間と同様に対応領域を限定せず作業でき、休まず働き続けられる特徴から、有望な労働力として期待されているためです。

今後の人口推移予測では、日本だけでなく中国や欧州のドイツ・イタリアなどGDPでトップクラスの国々で人口減が予想されています。
経済力維持には労働力が欠かせず、人口減少幅が大きいと労働力不足の解消が容易でなく、人間に頼らない労働力の確保が重要です。

参照:総務省統計局「世界人口の推移 年平均増減率」を筆者追記

そのため、人口減少が見込まれる国を中心に経済力を維持するべく、人間の代替となり得る労働力としてAGIに対する期待が高まっています。

2.3 過去の経験では解決困難な問題の発生

気候変動などの未知の事象に起因する問題を検討する上で、人間とは異なる着眼点での解決策の立案がAGIには期待できます。
なぜなら、AGIが学習した大量の関連情報から、多角的な観点で有効性や実効性の高い解決策が導出されると考えられるためです。

人間は、AGIよりも同一期間で学習可能な量は少なく、経験や偏った情報に基づく予測から解決策を検討するケースは少なくありません。
一方、AGIは大量情報から自己学習し、様々な解決策を多角的に分析・評価して、人間の発想にはない解決策を出せる可能性があります。

自然現象を中心に人間の理解が及ばない事象に対する取り組みを検討する上で、AGIの学習力や対応力が求められる時代が来そうです。

3. AGIにおける今後の動向

AI技術の加速度的発達により、AGIの登場に対する期待値は高まっており、AGIが社会変革のきっかけにすらなり得る状況です。

AGIに対する期待はAGI利用のメリットへの期待ですが、コインの裏表の関係のようにデメリットも生じる点も無視できません。
また、AI暴走のリスク抑制を目的とする法規制の整備も重要であり、今後のAGI開発にも影響する可能性があります。

近い将来に見込まれるAGIの出現に向けて、AGIのメリット・デメリットと合わせて主要国のAI規制の最新動向を把握しておきましょう。

3.1 AGI活用で見込まれるメリット

AGIが登場して利用され始めると、今までの社会にはなかった劇的な変化によるメリットが生じると考えられています。
AGIは人間の代替になり得る仕組みであるため、人間にしかできないとされていた作業を任せられるようになるためです。

例えば、問い合わせチャットにAGIが活用されると、無人対応でも生身の人間が対応しているようなきめ細かな受け答えが期待できます。
さらに、創造的な作業が少ない業務であれば、AGIが代替して業務における一層の効率化や自動化が進む可能性が高いです。

  • 自動的にカスタマイズされたサービスの提供

  • 業務の大幅な改善・効率化・自動化

  • AGIにまつわる仕事の登場

AGI利用が社会インフラのように広がれば関連する仕事も誕生して、新たなビジネス創出の期待も持てます。

3.2 AGI活用で見込まれるデメリット

AGIの誕生によるデメリットは、人間に大きな影響を及ぼしかねないリスクがあるとも言われています。

AGI利用における最大の懸念は、AGIが全人類の知能を越えてしまう「シンギュラリティ」です。
「シンギュラリティ」は2045年頃に発生すると予測されており、人間がAGIを制御できなくなり、AGIが暴走する事態も想像されます。

参考:総務省「インテリジェント化が加速する ICT の未来像に関する研究会」

最新技術のデメリットを抑えながら進化を続けてきた歴史を考えると、AGIでもデメリットを抑制するルールや仕組みの検討が必要です。

3.3 AGI出現に向けた準備

シンギュラリティによる懸念も含めたAGIによるデメリットの抑制のために、各国はAIに関する規制作りを進めています。

主要国ではEUが先行しており、AIのあり方について法律として規定し、違反した際には巨額の罰則金も発生する内容で大筋合意されています。
米国や中国も関連するルールが発令・施行されていますが、日本はまだ指針すら出せず周回遅れの状態です。

参考:総務省「EUのAI規制法案の概要」、日本経済新聞 2023/12/1日本経済新聞 2023/7/13、毎日新聞 2023/12/21

AGIをはじめとするAIが人間の知能を超える時代がすぐそこまで来ている今、法律や規定によりデメリットの最小化の取り組みは急務です。

まとめ:AGIが社会に抜本的な変化のきっかけに

この記事では、AGIの概要とともに、AGIが注目される背景やメリット・デメリットも含む今後の動向について解説しました。

  • AGIは人間のような思考回路を持ち合わせた、学習から判断まで自分自身で行えるAI

  • AGIが注目される理由は、既存のAIや人間では対応しきれない問題が差し迫っているため

  • AGIのメリットの最大化とデメリットの最小化を実現するために、AIに関する規制の制定・検討が進行中

AGIとは、人間と同様の学習や判断ができるとされる、用途を特定しない汎用的な人工知能です。

AGIは生成AIのような用途が限定されず、自己学習しながら進化できるAIと予測されており、人間の代替になりうる可能性を秘めています。
そのため、AGI導入によるメリットへの期待は大きい一方で、シンギュラリティによりAGIを人間が制御できなくなるリスクも併存します。

AIとの共存が前提の社会に移行しつつある今、次世代AIとされるAGIの研究や開発のニュースに目を離さないようにしましょう。

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