【プチ家出のススメ】「いってきます」から始まるこころケア
はじめに
日常の中で、私たちは様々な『役割のお面』をつけて生きています。
父親、夫、上司、部下、母親、妻、息子・娘・・・
そんな中『素の自分に還る時間』はどのくらいあるでしょうか?
この記事では、ストレスケアのためのひとつの引き出しとして
『こころの健康のためのプチ家出』をご提案させていただいています。
私は「うつからの環境調整」としてプチ家出をしました。
実際にプチ家出をして感じたことは
『うつ病になる前に、もっと早い段階で、気軽にプチ家出をすればよかった・・』
でした。
ギリギリまでストレスを溜めて頑張らないで、
『もっと自分に優しくしていいんだ』と自分を労わる許可
を与えられたことは、私の中での大きな変化でした。
『素の自分』に還り
個人の時間を持つこと、何もしない時間を持つことが、
心身に与える影響は計り知れないものでした。
『自分自身と対話する時間を持つ』ことは、心にスペースを与えてくれます。
心の余裕につながり、結果的に日常に還ってからの『役割』を持った生活にも良い影響を与えるものになると思います。
果たさなければいけない責任ある立場、日々の役割、様々な事情を抱えている中で、あまりにも忙しくなりすぎると視野が狭くなることもあると思います。
立ち止まることは、時に勇気のいることですし、
プチ家出なんて現実的に不可能だと思う方に、ぜひ読んでいただきたいです。
健康のためのプチ家出をして、どんな感覚がやってくるかは、人それぞれ。
昔に描いていた個人的な夢を思い出すかもしれないし
何も変化がないかもしれないし
プチ家出中の心に何が起こるのかは、誰にも分かりません。
時代の転換期にある今、
プチ家出は自分を取り戻すために使うだけでなく、
自分を取り戻した先にある『新しい自分を見つけたり、自分らしい心地よい人生』を見つけていくための時間にもなると思います。
記事の後半には、プチ家出してみたくなった方のために
「やってみよう!プチ家出ワーク」があります。
あなただけの『プチ家出』を楽しく計画して、日常から離れる『人生のプチ休憩』
『人生のプチ作戦タイム!』を満喫し、日常と非日常を行ったり来たりしながら、みなさまの『日常』がより充実したものとなりますように!
ーーー
この記事は、私の「うつ〜プチ家出の体験」をもとに書いた
小冊子『プチ家出のススメ』(2017年版)を改編したものです。
第1章 プチ家出のきっかけ
プチ家出のきっかけは、うつ→環境調整でした。
結婚による引っ越しで慣れ親しんだ土地を離れ、慣れない土地での生活や新しい環境での仕事、所属先の会社の倒産によって、やり甲斐があったお仕事を失ってしまうなど、様々な出来事が一時期に重なり、過労と心労から私は軽度のうつ病を経験しました。(おかげさまで今は回復しています。)
うつ病に対する知識がないため、自分の状態を「怠けている」と責め続け、家族にもこの辛さをどう表現して伝えればよいのか分からず、次第に家族にイライラをぶつけてしまうようになりました。そして、そんな自分に嫌悪感を持つという悪循環な毎日を過ごしていました。
どんどん症状は重くなり、視野が狭くなり、孤独感が深まり気持ちは落ち込む一方でした。
ストレスに「気づく」むずかしさ
ある日、テレビを見ていると皇室の方々がご静養に行かれるニュースが流れてきました。「いいな・・ご静養か。私もご静養したいな・・」そう思った瞬間、ものすごい頭痛と共に涙がどっと流れてきました。
その頭痛と涙は「やっと、疲れていることに気づいてくれたね・・」という体からのサインのように思いました。新しい環境でのお仕事、新婚生活での主婦としての役割で頭がパンパンになっていたので、自分のストレスに意識を向ける発想自体がありませんでした。今振り返ってみると、主婦の職場は家の中。ずーっと役割に縛られて落ち着かなかったんだな。ストレスに自分で気づくというのは、猪突猛進な性格の私にとっては難しいことでした。
「疲れたら休む」そんな当たり前のことも忘れていましたが、体が教えてくれました。
ーー
ある日、体の重さやだるさ、関節の痛み、喉のつかえた感じなど体の調子が良くなくて我慢ができない状態になったので、近くの心療内科に行きました。
「うつ病です。程度は軽度。ひどい時で中程度のちょっと手前くらいでしょう。」
医師から提案があった辛くなった時に飲むお薬をいただき、眠れなくて困った時などに飲んで眠ることが出来て楽になることができました。
その他試してみてよかったこと。(私の場合)↓
第2章 こんなプチ家出をしました
私がプチ家出で得たもの
第3章 こんな施設が欲しかった
あの時、心底必要だと思ったもの
それは『医師・カウンセラー・セラピストがいるホテルのような施設』
ーーー
私は家にいるのが辛くなり、電車で数駅先のホテル(安いけど綺麗な)にプチ家出しましたが、その滞在中、食事やウォーキングや温泉、マッサージなどの自然療法を受けながら療養できる施設がないか自分なりに調べてみました。(←2009年)
医療施設で医師やケアスタッフが万全で、医師の診察や各種セラピーが受けられる入院プログラムがあり、ホテルのように綺麗な施設を見つけましたが、料金的に諦めました。
その頃の私は無収入で、自分のことに大きなお金をかけることに対して申し訳ない気持ちなどもありました。今思えば、私の無意識の思い込みで「働かざるもの食うべからず」のようなものがあったのかもしれません。
その後、食事療法やマッサージ、ウォーキングなどを行いながら自然療法が受けられる宿泊型の施設を、なんとか見つけましたが、やはり料金的に宿泊は断念し、診察だけを受けに一日かけて家族と一緒に行きました。
そこでは、自律神経の状態を数値化したものや血流の流れの写真など体のあれこれを健康診断のように見える化していただき、家でできるストレッチと食事療法のプリントをいただきました。
現状を『見える化』できたため、客観的なデータということで、
家族にも今の自分の現状を理解してもらえる大きな材料となりました。
そちらでの先生が『今回ご家族で来られたことにとても大きな意味があります。』とおっしゃられた言葉が印象的でした。
私の状態をデータの数値をもとに丁寧に家族に説明してくださいました。
一般的にうつ病は『甘え・怠け』などとみられることもあり、病気の辛さにプラスして、周囲の無理解など、更にストレスを受けることがあります。
私の場合は家族が付き添ってくれてよかったのですが、もしも周囲の理解が得られない場合は、専門家の助けを借りることもとても大切だと思いました。
ドイツの療養地 『クアオルト』
数年後、私はある療法の説明会に参加したのですが、その時にドイツのクアオルト(療養地)とクアハウス(保養交流施設)のことを知り、涙が出ました。あの時私が欲しかった施設が、そのままドイツにあったのです。私が思っていたことは間違っていなかった。人が元気になるために必要なものはコレ!と思う全てがそこには揃っていたのです。
ドイツではテレビCMで「うちのクアハウスは、こんなプログラムが
あってこんな施設で、こんなにイイよ」という感じであちこちのクアハウスが
宣伝をしているそうで、そのテレビCMを見せていただいたのですが、大きな森に囲まれた施設はホテルのように優雅で明るくて、温かみもあり、温泉施設や緑の自然が溢れていて、医師も様々な分野のセラピストも万全で・・・そして国の保険がきくので、お財布にも優しく経済の心配もしないで、療養をしっかりと受けられる。『休むこと』を堂々と、しっかり、心置きなくできるベースが国レベルで行われていることに感動しました。
誰もが、もっともっと大切にされていい
ドイツのクアハウスのテレビCMを見て、直感的に受け取ったメッセージは
「私たちは誰もがもっともっと大事にされていい存在なんだ」ということでした。
このように文字にすると当たり前のことのようですが、
うつの時、頑張れなくなった自分にダメ出しをし続けて、自分で自分を傷つけていた時に、言葉だけで「自分を大切にしましょう」と言われても、心に響かなかったと思います。このドイツのクアハウスの映像で見て、感覚で「自分を大切にすること」を受け取りました。
健康保養地 『日本型のクアオルト』
その後、あるセミナーに参加した時に、日本でもドイツのクアオルトをモデルとした健康保養地『日本型のクアオルト』が広まっていることを知り嬉しく思いました。
現在、日本型クアオルトは、全国7市2町で取り組まれているそうです。(2024年)
日本でもクアオルトが広がりを見せていることは大きな希望の光です。
医療保険の適応は受けられないそうですが、少しずつでもこのような場所が増えていることは嬉しいことです。
第4章 プチ家出中の気づき
こころの声|ところであなたはどう生きたいの?何を選びますか?
ホテルの静かな空間に身を置くと、ある一瞬、目の前の視界がパーっと広がり、
真っ白になり自分の人生を突きつけられる感覚を味わいました。
『で、あなたはどうしたいの?』
『これまで起こったこと一旦全て脇に置いて、周囲のあれこれはさておき・・・あなたはあなた自身の人生をどうしたいの?』
こころの声が聞こえた感覚になりました。
自分の人生を目の前にどーんと置かれ『さあどうする?』と問われている感覚になったと同時に、自分の人生のギアを手放していたことに気づきました。
今の現実を自分で選んでいることだとすると、選び直す自由は常にある。
自己責任という言葉とともに、目の前が一気にシンプルになりました。
目の前が、気持ちよいゼロになった感覚でした。
さて、何を選ぶのか。
まず、明日もこのホテルにいることを選ぶか、家に帰ることを選ぶか、家に帰らないことを選ぶのか・・・
『人生って目の前の現実的な選択の連続で出来ている。シンプルだな。』
そう思いました。
家族が家に帰ってくるのは当たり前じゃない。
そうするとこんな見方がパッと頭に浮かびました。
そっか・・家族は、私がうつでどんなに暗い家でも、ちゃんと毎日帰ってきてくれてた。「こんな暗い家帰ってきたくない」と言って帰ってこない選択もあったわけで・・
なんだか当たり前と思っていたことに、すごくありがたみを感じました。
そうしたら、家族のしてくれていたことが次から次に思い浮かびました。
病院に付き添ってくれた。。
積極的なやさしい言葉はなかったけれど、黙って受け止めて話を聴いてくれてた。。
私がうつで、朝からどんなに暗くても
目を見て『いってきます』を言って、日常の雰囲気を保とうとしてくれた。
やさしい言葉はなかったけれど、あいさつだけはちゃんとしてくれていた。
私は家族に求めすぎていたのかも。
家から離れ、こころの余裕が生まれたことで、
それまでにはなかった考えが浮かび、
プラスの想いが入ってくるスペースが生まれました。
もっと早くにプチ家出すればよかった
プチ家出をして実際思ったこと。
それはもっと早くにしておけばよかった・・・ということ。
問題が大きくなる前に冷静に一息つくプチ家出があってもいいよなぁ。
環境を変えると、まず単純に
五感で感じるものがパッと一瞬にして変わります。
目に入るもの、聞こえてくる音・・・
それを、できるだけ心地よいものにしてあげるだけでも、
こころに与える影響は大きいです。
体がゆるむと、心も自然とゆるみます。
心に乗っかっていた大きな石をひとまずどこかへ置き、
リラックスすることで本来の力や知恵が出やすくなります。
第5章 家族が薬になってくれた
最近ではうつ病について社会の理解が以前より広まったこともあり、治療に専念しやすい環境になってきたように感じていますが、一方で周囲の理解が得られなくて辛い思いをされている方もいらっしゃるかと思います。
私も診断を受ける前は、症状の数々を言語化することが難しく、家族に伝わらないことでもどかしい時期を過ごしました。うつでヘトヘトな状態の時に、自分一人で頑張って理解を得ることは厳しいなと思い、病院に一緒に付き添ってもらい、医師から私の現状を家族に話してほしいとお願いしました。
診察室に家族だけ呼ばれて、説明を受けに行きました。
その辺りから少しずつ家族に変化があったように思います。
例えば、部屋が散らかっているのを見て『ダメ主婦だ…』と落ち込んでいると
『散らかるのは生きてる証拠!』と明るく言ってくれたり、
一日中横になって申し訳ないなぁと言っていると
『飽きるまで寝てみたら?』などと言ってくれるようになりました。
私が、うつの初心者なら、家族だってうつ家族の初心者。
家族は距離が近いだけに、お互いに理想や期待も大きくなるのは自然なことだと思います。特に自分が辛い状況である時、相手の状況を冷静に考える余裕もなかったりします。ただ、私は自分を癒していく中で、後になって家族が私にしてくれていたあれこれに気づきました。
第6章 自分を見つめることの大切さ
症状が辛い時、色々な相談機関に問い合わせたりもしました。
その時共通してよく言われた言葉が『自分を見つめていきましょう』でした。
「自分を見つめるって何?」
「それで目の前の状況や体調が変わるわけではないよね」
『自分を見つめる』というと、何か「あなたのダメなところを見つけて、そこを変えていきましょう」と言われている気もしましたし「こんな切羽詰まった辛い時に、そんなのんびりしたこと言われても・・」と、正直、素直にその言葉を受け取れなかったことを覚えています。
ただ、その後私は様々なセラピーを受け、まさに『自分自身を見つめていく』ことで、少しずつ少しずつ楽になっていき、その言葉の意味を「体験を通して知る」こととなりました。
自分を知ること、理解していくことは、自分に寄り添える自分になっていくこと。自分自身との関係性をよくしていくことが、結果的には自身の体調や周囲との人間関係や出来事に良い影響を与えていることを知りました。
自分に優しくなれている分量=周囲に優しくなれる分量
『世界平和は夫婦円満から』という言葉が好きですが、夫婦円満になるにはまずは、なるべく『じぶん円満』でいられるようにすることだなと思いました。
第7章 個人としての自分の人生を見つける
プチ家出をして自分の人生のギアを手放していたことに気づいてからは
「私個人としての人生」を考えるようになりました。
うつの経験から人を癒せるお仕事をしたいと思い、レジなどのお仕事で学費を稼ぎつつ、セラピストになるための勉強を本格的に始めました。
自分の人生を生き出したことでギアを取り戻し、周囲との距離感が健全なものに変わっていきました。
【プチ家出したくなったあなたへ!応援付録】
やってみよう!プチ家出ワーク
ぜひプチ家出の中に「あなたにとっての心身の健康」につながるワークを取り入れてみましょう!
ステップ1|本音に正直になるワーク
さあ、プチ家出の妄想をしましょう!あなたはどんなプチ家出をしたいですか?
目的や受け取りたい気持ちなどを自由に書いてみましょう!
まずは自由に!お金も時間も家族の賛成もあるとしたら
どんなプチ家出をしますか?
■目的:
■期間:
■場所:
■泊まりたいホテルの雰囲気:
■ホテル名:
■したいこと:
■食べたいもの:
■持っていきたい心がときめくもの:
■持っていきたい心が安らぐもの:
■プチ家出で得たいことや得たい気持ち:
■こころの健康のためにしたいことは:
■体の健康のためにしたいことは:
■このプチ家出に題名をつけるとしたら:
ワクワクする言葉、心地よく感じる言葉、受け取りたい気持ちなどを入れて自由に創作しましょう!
(例)
・主婦ご褒美旅
・やさしいママを思い出す旅
・新しい私を見つける旅
・家族との関係を良くするための一休み旅
■家に帰った時の第一声:『ただいま〜◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯!』
ステップ2|プチ家出「3つの型」ワーク
プチ家出したいけど抵抗がある方のために、段階を追って「プチ家出」できるように、プチ家出に「型」をつけてみました。
①【超プチ家出】〜プチ・リセットコース〜
今すぐできる気分転換「リセットアクション」のこと
意識的に「あなたの心が喜ぶ健康行動」を行ってみましょう!
(例)
深呼吸
お茶を飲む
ウインドーショッピング
ペットと遊ぶ
入浴剤でおうち温泉
お部屋に仕切りでマイスペースを作る
■私の『超プチ家出』リスト
・
・
・
②【逆プチ家出】 〜おひとりさま満喫コース〜
家族が外出して、自分が家に残り『おひとりさま時間を満喫』すること
(例)
照明を落として癒しのBGMでおうちエステ・・・
行きたかったカフェレストランで一人で外食をする
ひとり美術館巡り
自分を高めるお勉強をする
■私の『逆プチ家出』リスト
・
・
・
③【ご褒美プチ家出】 〜ご褒美コース〜
お泊まり等ゆっくりと時間をとって自分を癒し、整えること
(例)
温泉など自然の中で心身を休め保養する
心身のための個人セッションを受けて、ホテルでゆっくり余韻を味わう
職場近くのホテルに滞在して、ホテルから出勤する
遠方のイベントに出かける
■私の『ご褒美プチ家出』リスト
・
・
・
ステップ3|プチ家出を「現実化」するワーク
1、<現状把握>あなたのプチ家出を阻むものがありますか?
心理面:(抵抗感など)
物質面:(お金・体調など)
環境面:(家族・仕事など)
2、<解決策を出す>考えられる解決策を、できるできないなど深く考えずに「数多く」出しましょう!
3、<メリット・デメリット分析>2で出した解決策のメリットデメリットを書き出します。
4、<解決策・選定>実行しやすいもの(心理・経済)問題解決につながるものを選びましょう。
5、<プチ家出実験>「実験」のつもりで、ハードルが低いものから実践します。
6、<検証>どんな結果が得られましたか?(心理面・物質面・環境面)
あなたの役に立った『健康プチ家出体験』は、いくつありましたか?
ストレスケアの引き出しに入れて、いつでも取り出してあなたを助けましょう!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?