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転売と歪な進化

 セブンイレブンでサボっていたら、とある棚が目についた。

 その棚には「品薄につき、おひとり様ひとつまで」「完売しました」とマジックでデカデカと書かれた札が貼ってある。

 なんだろう?とその札をめくってみると、
ONE PIECEのカードゲームだった。

 ああ、そういえば少し前に、めちゃくちゃ流行ってるって聞いたことがあるなあと合点がいく。第一弾が発売されるやいなや在庫が瞬殺されたと。

 興味深いのはこのカードで遊んでいる人をネット上ですらほぼ見かけないことだ。

 発売して即完売するほどめちゃくちゃ売れているはずなのに!!普通こんだけ売れていれば、戦略だったりデッキ構築だったりお気に入りのカード自慢の投稿がたくさんあるはずだが、Twitterで検索して出てくるのは“高額買取情報”と“フォロー&リツイートでプレゼントの抽選アカウント”ばかり。誰も遊んでいない。

 そう、流行っているのはこのカードで遊ぶことではなく、商材として転売することが流行っている。

 これは数年前からのポケモンカードやガンプラあたりでも行われている熱狂的ムーブメントだ。

 発売と同時に業者が買い占めてフリマアプリで転売したり、集客用アカウントを育てる餌にする。彼らの後には「今〇〇の転売(せどり)が、アツい、副収入〇〇万!」的なライフハックゾンビが続く。その後に、人が並んでいたり棚が空になっている光景を見て煽られたコバンザメの群れも続く。

 欲しがる人は誰もカードで遊ばないしプラモは組み立てない。コレクションしないし飾らない。

 疑問がある。

 なぜおもちゃでやるのだろうか?この世の中には株だったり仮想通貨だったりと、それに適したコンテンツがあるのに。なぜホビーが狙われるのか。

 私はそういうことは株や仮想通貨でやっている。おもちゃに手を出す気はない。

 ホビーは娯楽であり、贅沢品だから、どう考えても需要が不安定じゃねえか。そもそも本来の目的じゃない。だから、彼ら転売ヤーが、なぜそれに目をつけたのかさっぱりわからない。しかもああいうのは嵩張る!!腐ったりしないのが唯一の強みか?

 こうして誰にも使われずに業者もどき達の手をぐるぐる回るのであれば、もはや玩具はその形状をしている必要がないのではないか。

 カードの姿をしている必要がないし、プラモである必要もない。チップとか書類、デジタルデータでいいんじゃないかと思う。それを「今これが価値があるんですよー」ってぐるぐる回し合えばいいんじゃないかな?

 そしてこうして新たなヘンテコ通貨が生まれるんじゃないかなあってある意味楽しみにしている自分がいた。

 しかし考えてみると、高額な皿で食事をする人はいないし、価値のある壺に水を貯める人もいない。最高品質の酒も飲まれないし、楽器も演奏されない。

 あるものに人々が価値を見いだすと、本来の用途を失っていくのだろうか。

 さてさて、不思議な変化の渦中、おもちゃ達の未来はどうなるのかな?

なんてこった すべてが転がっていく
僕も君も まるでそれを待っていたみたい
なんでこんな 大人になれないのかな
いまここで君をぶん殴ったら どうなるのかな
ねぇ どうなるのかな
『どうなるのかな』作詞:尾崎雄貴

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