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私をくいとめて

「私をくいとめて」2020年公開

以前感想を投稿した「勝手にふるえてろ」が大好きで、またこんな映画が見たいなーと意識して見に行きました。おひとりさまを描いた作品なので、おひとりさまで。もともと綿矢りさの作品は好きで今年の春に原作は読んでいて、主人公のみつ子役がのんだとちょっと若いんじゃ?と思ったけれど、背伸びせずがつがつせずゆる~い感じがよかったと思う。だからこそ感情が爆発するところとのギャップにはっとする。

まず冒頭の食品サンプルを作りにいくところ、わたしも食品サンプルが好きなので他人事に思えない。あの中に自分もいそう。勝手にふるえてろのヨシカも、遊びにいくでも何でもない平和な土曜日を「ビューティフルサタデー」と言っていたけれど、こんなふうにのどかな休日を描いているのって良いよね。次の日の日曜日はちゃんと掃除をしなきゃっていうのもリアル。

外から帰ってきて手を洗ってうがいをして…という動作、ヨシカもやっていたけどこの作品ができた2020年はコロナ禍なんだぞ、というのが暗に示されている気がする。みんなマスクはつけてないけど妊婦の皐月が怖くて外にでられなくなったとか、出かけたときにマスクを外す所作もちゃんと映していて、後々DVDが出てまたこの作品を見る時コロナが収束しているのかはわからないけど、あ~この映画マスクして観に行ったなぁとか思い出しそう。こんな状況なのでイタリアに行くシーンは海外旅行いいなー!なんて思っていた。どうせ日本で撮られたものでしょ、とは思わなかった。機内での「君は天然色」のシーンは爽快感にあふれていて、大九監督はこんなふうに映像化するのか!と楽しくなった。こういう描き方、解釈のしかたができるのはうらやましい。

「勝手にふるえてろ」みたいな映画を見たくてこの作品を見たけれど、ヨシカとみつ子が似ているようで似てないおかげで全然別のものになってると思った。自分の世界に閉じこもりがちなヨシカと、おひとりさまライフを満喫して他者にも興味をもつみつ子。告白された時の反応の違いも面白い。ヨシカは全く眼中になかった二からの告白にも飛び上がって喜んじゃうけど、みつ子は好きになった多田くんから告白されても自分が変わってしまうんじゃ、と不安がって手放しでは喜べない。ふたりとも愛おしいし、どちらも大好きな作品になった。

映画を観る前に売店でメロンソーダを買ったとき、パンフレットどうしようかな、面白かったら買おうかな。と思ったのだけど、見終わったら迷わず買って、ひとりでお店を見てまわって、カフェでひと息つきながらパンフ読んで、やっぱり皐月が読んでたのは小川洋子さんの「ことり」だ!と嬉しくなって。

よい休日でした。