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救いの傲慢さを自覚せよ~ゲーム【蒼い夏休み】感想※ネタバレ及び自殺に関する描写に注意

今日は「青い夏休み」というゲームで遊びました。
普段は遊んだあとすぐに記事を書くことはせず一晩は時間をおいています。これは余韻に浸る時間を確保するため、そしてゆっくりと言葉にしたいことに適した言葉を選ぶ作業を楽しみたいから。
だけどこのゲームはそんなのんびりしてられない。さっき遊びました。そして、今書きます。なぜなら今私の脳内にある言葉たちがあふれんばかりに暴れているので。

まずはゲームの購入ページから。大事。買おう。580円だって! お盆とかにどう? タイトルからわかる通り夏の雰囲気があるからさ、今やるのがきっといいと思うんだ。ネタバレにならないと思うから言うけど、このゲームは8月8日の出来事を描いてるの。ゲームと同じ日に遊べるのは年に一回だけ、それがもうすぐそこに迫ってる!

買いましょう。

いつも通り、このゲームを遊んだきっかけから書きましょうね。


このゲームを知ったきっかけ、買った理由

これまた先日参加した「東京ゲームダンジョン3」というインディゲームの展示イベントにて遭遇したゲームでした。Steamストアページのサムネにもなっている白い髪の巫女さんに魅かれて少し遊ばせていただくことに。

最近白髪キャラが出てくるゲームをよくやっている気がします。私は白髪が好きです。白髪キャラを好きになることに抵抗(こんなわかりやすい魅力の罠にはまってなるものかという無駄な抵抗)を感じた時期もありましたが、今ではもう胸を張って言えます。私は白髪キャラが好きです。配信の中で触れていますが、私が初めて好きになった白髪キャラは電撃文庫から刊行されていた『しにがみのバラッド』の主人公・モモです。たぶんもう絶版になっているんだろうな。でも私はモモのことが本当に好きでした。画集も持ってます(ひそかな自慢)。

私にゲームを買おうと決心させる要素は次のようなものがあります。「ドット絵」「ノベルゲーム」「ホラー」「絵がめちゃくちゃ好み」「女の子がかわいい」「メンヘラを扱っている」などなど。もういっそのこと「白髪キャラがいる」を加えてもいいかもしれません。

少し遊ばせていただいてすぐに「どうもこれは他人のパソコンを覗き見るゲームだ」と悟り、こんなに楽しいゲームはじっくり家で腰を据えて楽しみたいと試遊させていただいてから3分ほどで決意し、その場でなんとCD-ROMに入ったゲームデータを購入できたので、購入できるならもう、お金を出すしかないじゃん? 買いました。結局パソコンにコンパクトディスクを読みこませる機械が見つからなかったのでSteam版を購入して遊びました。それもまたよし。ディスクはダイソーの飾れる収納スタンドみたいなやつに置いて本棚に面陳させています。

謎解き要素について

私は謎解きが本当に苦手です。どれくらい苦手かというと、毎月謎が届くサブスクサービスを購入したはいいものの一か月目の謎が解けないまま悩んでいるうちに翌月分が届き、手に負えなくなり解約しました。流れぶった切りになりますがリンク貼っておきますね。気になったらぜひ。解けなくても楽しいです。

お菓子の箱に書いてあるなぞなぞも解けないときがあります。ひらめきや視点の転換、別の意味を想像する、といった、俗にいう「頭の柔らかさ」を全く持っていません。数字は数字だし、文字は文字。クイズを作る側の方々には頭が上がりません。

当然このゲームの謎解き要素にも詰まることが多々ありました。でも大丈夫、安心して。すごい。めちゃくちゃ丁寧なヒントがある。ヒント無しに私はこのゲームを3時間半でクリアできなかったと思います……なんなら一晩寝かせて諦めていたかもしれない。なんとヒント、段階を踏んで少しずつ出してくれる。そしてなんとなんと、答えまで書いてくれてる。「答え」のファイルをクリックする瞬間の敗北感、私はちょっと好きでした。

ちなみに答えを見ても「なんでそうなるのかわかんない……」とか言ってました。こんなクイズ下手な人間にも救済措置をぬかりなく準備してくださっている作者の方々にはもう、両手を合わせて拝みます。ありがとうございます。おかげで最後まで物語を楽しむことができました。


ストーリーについて

巫女服を着た女の子は通称「ミコ」、持ち主であるとともにこのゲームのヒロインである「蒼ちゃん」の持っているPCにインストールされている(?)AIです。主人公である、、、いや、この物語の主人公は蒼ちゃんだと思うんですけど、プレイヤーが操作する対象という意味での主人公である海野との待ち合わせの場に現れず、代わりに残されていた蒼ちゃんのPCを操作して彼女の足取りを追う、というのが主な物語の流れです。

少し前に【Analogue: A Hate Story】というゲームを遊んだことがありました。これは古い宇宙船内のPC内に存在するAIとともに残された記録を読み進め、過去に船内で何が起こっていたのかを探るゲームです。

このゲームも楽しかったのですが、【蒼い夏休み】はより身近な画面を操作する点で、私はこちらの方が「他人の秘密を覗いている罪悪感と興奮」を強く感じました。【Analogue: A Hate Story】は個人の秘密を覗き見ることが趣旨のゲームではありませんから方向性が異なるのでどちらの方が優れているとか好みとか、そういった評価を含む意図はありません。どっちも好き。

そして一周目は……おそらく確定で、蒼ちゃんが首を吊って自殺する場面に遭遇して、エンディングになります。むしろ物語はここから始まる。しかし首から上が画面外に出ている蒼ちゃんの立ち絵を見て私は、私は、ああ、とても、その、、、いえ、これは言葉にできません。その後蒼ちゃんの外見をもとに作られたAIであるミコちゃんの立ち絵が横に並ぶのですが、ミコちゃんは頭まできれいに映っているのに、蒼ちゃんはずっと高い位置に浮いている。実際には浮いているのでなく吊るされているのですが。この対比が、苦しかった。

ここから主人公やミコちゃん、蒼ちゃんの親友である夜真昼(よる・まひる)ちゃんとともに蒼ちゃんを救うべく二周目以降に入ります。夜真昼ちゃん、名前がとても美しい。この作品の中で一番好きな名前です。

あとこのゲームはフルボイスなんですけど、真昼ちゃんは天才という設定で、わりかしのんびり喋るんです。一方AIのミコは早口がちに喋る。真昼はたぶん、脳内でいろんな言葉を集めて並べて厳選して言葉に出しているのですね。だから発言はゆっくりになる。ミコは情報の取捨選択においては人間を超える性能を持っているはずなので、同じ思考量だとしても判断の速さから早口になる。たぶん。想像ですが、この二人が並んで喋るシーンで生まれるこの対比が好きでした。


「救う」行為の傲慢さについて

このゲームを通して私は「救うって、なんなんだろう」との疑問を抱えています。以下の文章は、この疑問に答えを出すための思索とします。ちなみに哲学科のレポート課題とかじゃあないのでおそらくちゃんと答えを出すところまでは書かずに書きたいこと書いて満足して終えると思います……。

このゲームでは「蒼を救う」「苦しい未来から救われるための死」「もう少しで救えたのに」と、繰り返し「救い」という言葉が登場します。ヒロインである蒼を取り巻く人間、すなわちプレイヤーである海野、AIのミコ、蒼の父親である朔夜、ミコを作った蒼の親友である真昼、それから蒼の担任教師である葉月。おそらくミコ以外の全員が、直接「救う」言葉は使わずとも一度は「蒼を救うんだ、救いたいんだ」という旨の発言をしています。そして彼らなりに、おそらく誠意をもって、真面目に、蒼を救うために行動します。

しかしその結果真の意味で蒼を救うことができた人は一人もいなかったように思います。一応ハッピーエンドも解放したので蒼がどう幸せに至ったかは見ていますが、蒼がハッピーエンドに至るためには、登場人物全員が「蒼を救おう!」という気持ちを抱かないことが条件になっているように感じました。周囲の人間が蒼とのコミュニケーションを丁寧に図ることによってだけ、蒼は死に救いを求めることなく、死なせることで救いを与えようとする勘違い甚だしい人間の手からも逃れることができ、父と楽しい日々を過ごすに至った……ように、私は思いました。

蒼は現実を生き続けることに恐怖を感じています。そんな彼女に対して、二人の大人が、間違った(と、私が考える)救いを差し出していました。
一人は、恐怖の根源となっている自分の存在を消すことで蒼を救おうとしました。
もう一人は、現実の恐怖からの逃避手段としての死を示し、「私が殺してあげる、それなら死も怖くない」と言い、蒼を救おうとしました。

特に後者の大人のことを、私は個人的な感情として許せないと感じます。他人の手による死なら怖くないなんてひどい嘘です。人間、、、いや、私は、死のうと思って選択した行為の結果いざ死にそうになった時、あまりの恐怖に手が緩みました。あれは他人の手によるものであれば薄れるなんてそんな甘っちょろい恐怖じゃない。だからこの救いが、このゲーム内で唯一完遂されなかったことに私は安心しています。いや、そんなことなかったわ。何回か私はそれを防げなかった。あんなにつらいことはないし、それがきちんと明確に「バッドエンド」であることがわかるエンディング曲に、そしてそれを無事回避し、「ハッピーエンド」に至った時のエンディング曲の歌詞で「あの方法は誤りである」ことが示唆されていて、ああ、よかったなと、私は思いました。

他者を救うなんてそんな大それたこと、いるかいないかもわからん神様に任せておけばよいのです。人間は言葉を道具として理性的に物事を考えることができる、はずです。そうあってほしいと私は願っています。蒼が他人の傲慢な「救いたい」から逃れて幸せになることができて、本当によかった。

まとめ

もうちょっと考えたこと書きたいことはあるんですけどここから先はこのゲームについてというよりも私個人の思想に関する話になりそうで。それは蛇足なので、このへんにしておきます。

上で少し触れましたが、このゲームにはエンディング曲がふたつあります。どちらの楽曲も、その物語の結末を迎えたときのプレイヤーの心情に寄り添う楽曲として完璧な魅力を持っていました。めちゃくちゃよかった。

もっかいSteamリンク貼っちゃお。リンクって何回貼ってもタダだし。

これね! とてもよかったから、ぜひ遊んでほしい。580円。外食一回我慢したら買える。あの、単純に他人のパソコンをいじるって、背徳感があって楽しいから。そうして遊んでいるうちに、きっと蒼を助けるために奔走したくなるに違いないから。

今日も楽しいゲームで遊べて私は幸せです。もう遅いから寝なくちゃ。またね、お休み、いい夢見てね。





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