そこまでして働くことにいったい何の意味があるのか~ゲーム【「はい」か「YES」で答えられる質問だけ】感想※ネタバレ注意

今日は「「はい」か「YES」で答えられる質問だけ」というゲームで遊びました。なんと嬉しいフリーゲーム! 以下のURLから遊ぶことができます。

サムネの画像がめちゃくちゃいいね。ドット絵であることの怖さがめちゃくちゃ出てて好きだ。

というわけでいつもの目次。


このゲームを遊んだきっかけ

ノベルゲームをやりたい、なんらかの感情を揺さぶるコンテンツを摂取したい。しかしあまりにも重い物語や長大なテキストを読むほどの元気がない。そんなときに「ぱりん、フラクタル」というゲームの公式アカウントから教えていただいたのがこのゲームでした。

エンドは3種類、うちひとつがシークレット。ドット絵がかわいくて不気味で、プレイ時間は各エンドだいたい30分。あまりにもちょうどよかった。ボリュームも、一見してホラーの風味が感じられる絵も。最近はゲームで遊ぶ元気がなくて河原で水遊びをしたり空に向かって懐中電灯を点滅させてUFO呼べねえかな~とかやっていたので(いい年下大人がこれをやっているところを見られるとかなり恥ずかしいですが、楽しいのでお勧めできます)、本当に久々のゲームでした。数日しかたってないけどさ。

Tワークって、いったいなに!?

このゲームでは「仕事」を主な主題として扱っています。主人公としてプレイヤーが初めてやる仕事メールのフォルダ整理。画面上に並んだAからZまでのフォルダに、送られてきたメールを分類する作業。この世界においてこの作業は「立派な仕事」なんでしょうけど、やっている方としては「これにいったい何の意味があるんだ? なんなんだこの世界は」などじゃりっとした感触の疑問を抱かざるを得ない作業。その後昼食を食べ、少し同僚と喋り、帰宅してホットミルク飲んで、寝る。主人公は「ルーティン」や「いつも同じ毎日であること」を重視しているらしく、毎朝毎晩、同じことを考えて、同じことをやっています。パンに塗るジャムをいちごとマーマレードの二択から選ぶことができるのですが、どちらを選んでも「いつも通りだ、選ぶまでもない」と表示されます。なんで??? 昨日と違うんだけど! 主人公どうした!?

そんな主人公の職場にやってきた新人くんは、どうやら「Tワーク」にあこがれて入社したご様子。人の役に立ちたい、社会にとって有意義な仕事をしたいと話します。なんかこう、すごく危うい感じがするよね。本気で「人の役に立ちたい」って言う人間って。だって人の役に立ったかどうかなんてわかんないし、たぶんこの世にある大概の仕事は「人の役に立っている」まさにその瞬間の現場に立ち会わせることができない。たとえば学校の先生が、自分の教えたことが生徒の役に立った瞬間を見届けることはたぶんない。コンビニの店員が、買われた商品を実際に使っている場面を見ることもあんまりなさそう。コンビニの中、店員さんの目の前で買ったもの食べるお客さんがいない限りは。

っていうなんかこう、一般的な教訓を含んだゲームか~? と思っていた私が間違いでした。そういう話じゃあ、なかったんだなあ。

「仕事」のやりがいと意味はどこにある?

どうもこのゲームの舞台はほとんどの仕事がAIによってとってかわられた世界らしい。全国的に普及が進んでいるわけではないようで、田舎の食堂なんかはまだ人力だけど、主人公が務めている会社の社員食堂は注文から配膳、皿洗いまで、(たぶん)すべてAIによって業務が回っている。そんな世界においておそらく、「AIによる代替が不可能な仕事」が「Tワーク」であり、それ以外の業務はEワークだ。そして新入社員君がやりたかったのはTワーク。ちなみにこのあとほぼEワークである、定義的にはTワークな仕事(カタツムリの世話)をやらされた新入社員君は、会社を辞めるか「業務内容へのやりがい・意味」が見いだせずに発狂して警察に捕まってしまう(この超高速展開のさっぱり感がとても好きだ)。

カタツムリの世話とか、雪だるまを作るとか、そういう人間が賃金をもらうためにわざわざ作られた、しかし社会を維持するための必要性は全くない仕事が「Tワーク」なのだ。新人君が嫌がるのもまあ、わかる。

AIによって支配された社会って怖いね~みたいな話かなと思うんだけど、でも単純にそうとも思えなくて。というのも、仕事……このゲームの世界の仕事じゃなくて現実の私たちがいる世界の仕事ね。その仕事だって、その、たぶん、新入社員君が思うほど「人の役に立つ」ものなんかないと思うの。そしてそれは仕事という枠の外に出たらもっとそうで、私がこの間河原で水遊びをしたことも、UFOを呼ぼうと懐中電灯を点滅させたことも、どう見たって、無意味なのよね。
このゲームの最後は「無意味な仕事を無意味であるとは認識せず盲目的に行動を続ける」ことの表現としてあのサムネみたいな表情のないおばけ人間が出来上がっちゃうんだけど、でもさ、たぶんあの人たち「遊び」ってものを知らないよ。どうせ食用として処理されるカタツムリの世話をするのも、溶け行くだけの雪だるまを作り続けるのも、視点を変えたらめちゃくちゃ楽しい作業になるはず。どうしたって「他人の役に立たない」ってことは変えようがないからその点では無意味な仕事なんだけど、でもさ、たぶん、意味って自分で見出すものなんだなあってぼんやり思った。

このゲームを遊ぶことも、登場人物たちからしたらTワークなんだろうな。彼らにこのゲーム勧めたいな。「選択肢も選ぶ意味がないようなものばっかりだけど、でも、めっちゃ楽しいんだよ、楽しい部分はいくらでも見つけられるんだよ。だからそんなお化けみたいな顔してないで、目の前にあることをもっとちゃんと見てみてよ」って。


まとめ

本当に30分くらいで終わる、含蓄ある現代おとぎ話って感じのサクッと楽しめるかわいいゲームでした。ドット絵の不穏な感じが最後まで一貫しててめちゃくちゃ好きだった。メリーゴーランドの馬の口元に藁を置いて一定時間後に片付ける仕事やってみたいな。何日目で自分がその虚しさに耐えられなくなるのか試してみたい。仕事とかいう、自分の人生の大半を費やすものに意味を見出せないの、めちゃくちゃつらいだろうな~! 個人的には「意味のないこと」が大大大大大好きなのでたぶんそんな気分を味わうことなく人生終えられるんだろうけど。

意味のないことが大好きという話はいつか機会ができたときにまたどっかで掛けたらいいなと思います。

最後にもう一回ゲームのURL貼る!

短いながらもタイトル回収まで含めて鮮やかなゲームでした。人生に迷ったときにやるのがオススメです。たぶん、迷走が深まっていい感じに苦しさを味わうことができます。

ほいじゃまたね!




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