惑星を使役するもの 壁と巨人と世界の終わり

壁があった。僕らは世界の全ての片隅からやって来た。壁の向こうには、楽園があると言われていた。

壁の外側にはスラムができ、僕らはそこで夢を見て暮らした。逃げてきた恐ろしい場所の夢を。マスコミがやって来て、毎日、人が死んでいった。

知り合いがすべて死に絶えた頃、僕はやって来た場所のことを忘れ、壁への感情に向き合いながら、有り触れた若者になった。

そして。

予兆を見た人は少ない。すぐにビル並みの巨人が何者かに猛烈な勢いでぶっ飛ばされ、その背中に押されて、壁は内側から崩落した。広い空が見えた。

巨人は古風な鋼鉄の絡繰りめいていた。倒されたが、まだ藻掻いている。

崩れた壁から、巨人を殴り飛ばしたやつが出てきた。

若い女、怒りに目を赤く輝かせ、天へと伸ばした右手の上には、小さな惑星が力感を帯びて、回転しながら浮いていた。どこか泣いているように思えた。

一目惚れだった。

【続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?