”ディグ”好きの根底は、”雑居”ビルにあり!? 〜おマミがレコードにハマったときの話〜
雑居ビルであふれかえる、TOKYO CITY。
夢であふれている、”ZAKKYO”ビル。
NEWエピソードで”雑居ビル”の話をして、レコードの”ディグ(※)”にハマった時のことを思い出した。
トーキョーシティで、レコードに出会う
田舎から上京した、18歳。
当時新宿にある文化服装学院に通い、家と学校の往復で課題漬けする毎日。
同居人がDJだった影響で、週の半分以上は夜、渋谷界隈のクラブへ。深夜帰ってまた課題、睡眠不足なんて日常茶飯事だった。
当初、クラブの雰囲気は多くが好ましくなかった。場所によっては、見た目だけのファッションDJ、キモチャラクソ野郎もいるし、まずい酒ばかりだし・・。
「付き合いとはいえ、つまらない」と呟く矢先、あるモノに出会ったのだ。
それが、”レコード”という物体。レコードジャケットといわれる四角の中に収められた唯一無二のデザイン、丸い円盤から聞いたことのない”新しい音楽”に出会える体験に、おマミは中毒った。
ここ数年でアナログ人気に火がつき、日本では2021年の段階で、レコードの売上額は39億円、前年比184%と大幅にアップ。アナログレコードが30億円超えたのは、1999年以来なんだという。
今では路面店に佇むレコード屋も多いが、思い返せば、当時は雑居ビルにあるお店が、ほとんどだったように思う。15年以上前、SNSはそこまで普及していなく、レコ屋の情報を得るのは、雑誌やブログ、クラブで仕入れる口コミ。まさに、”足で稼ぐ”状態だった。
10代女子1人がブース最前を陣取り、気になる音楽が流れれば、踊りながら、社会科見学かのようにレコードの盤をガン見して、即メモして勉強。当時はあまりない光景だったからか、老舗DJの方によく教えてもらったのを覚えている。
18歳、レコ屋にハマる。そう、店は、”雑居ビル”にあった
そんなおまみが、初めて東京で訪れたレコード屋が、代々木にあった「ココナッツディスク代々木店」。(※数年前に閉店..)当時、代々木公園の近くに住んでいて、学校からの帰り、寄り道コースにあった。
お店は2階。やや暗め、怪しげな階段を登っていく。高揚感、ワクワク感を募らせ、店内に足を踏み入れる瞬間は、”雑居ビル”独特ではないだろうか。
最初は知識が乏しいから、ジャケ買い。次は、試聴してハマれば購入。そして、店員さんと会話して、雰囲気を伝えて、おすすめを聞く。
なんだかこの感覚って、今でいうボトルショップとか、焼酎やワインの瓶がならぶ立ち飲み屋さんにも近しい気がする。ただ単に”飲む”だけじゃなくて、プロセスも楽しいというか。
高校時代から聞いていたヒップホップ以外のジャンルレスな音楽に出会うことで世界が広がり、宝探しのような体験におマミは溺れた。
そういや、代々木店は超懐かしき、SALUのMVにも出てたなあ。
雑居ビルの階段をのぼる、あの高揚感がやめられない
レコードのディグにハマってからは、1人であらゆるお店をディグり続けた。
ーーそれもこれも、思い返せば、雑居ビルにあった気がする。
看板は出てるものの、全容はレコード屋以外は不明、口コミだけで聞いたお店、なんとなく看板の雰囲気で来店する。路面店では味わえない雑居ならではの体験に一喜一憂した。
そのなかでもよく通っていたのが、下北沢の、『フラッシュ・ディスク・ランチ』、『JETSET』、原宿の『GLOCAL RECORDS』。閉店してしまったが、あらゆる音楽に出会えた下北沢の『discshopzero』とか。ビル1階だったけど吉祥寺の『BALLROOMRECORD』、新宿の『Dub Store Records』、各店のディスクユニオンもそうだ。
当時、路面店よりも見つけにくく、自分だけの秘密基地のような雑居ビルにあるお店に、”価値”を感じていたのかもしれない。
足で探す以外に、2015年に廃刊したDJ・レコード専門誌GROOVEとか、本を頼りにしてたっけ。
ヒップホップにはじまり、シティポップ、和物といわれる歌謡曲、ソウル、ファンク、ディスコ、レゲエ、ダブ、スカ、クンビア、タイなどアジアの音楽、エレクトロ、ハウス、ジャンルレスな音を掘りまくった。
20代半ば、タイに飛ぶタイミングで、しばらくは日本に帰らないと見込んで、断捨離フェス。
レコードは、数百枚以上は、売ったり、実家へ預けたり、手放したのが悔やまれる。一軍たちは、友人宅で保管してもらい、今も健在。
ディグる延長上には、ミックス(応用)が待ち構えている
DJをかじったのも、その延長上。どの盤とどの盤を、繋げたら面白いグルーヴが起きるか、自分でも試したくなったのだ。こんなレコードもあるんだよって、お披露目もしたい年頃だったしね。
飲み屋さんでいうなら、ペアリングというか、飲む順番を楽しむというか。そんな感覚にも近い。古着でいうならどんなアイテムを買い足して、コーディネートを組むとか。料理でいうならどの順番で提供しようかとか。
どんなディグりにも、延長上には、”ミックス”(応用)が待っているんだろう。
雑居ビルには、無数の可能性とアイデアが⁈
今回のエピソードでは、おしゃれ雑居ビルがあれば、面白い雑居ビルがあれば、と終幕。
ある程度の審査基準・業態を制限する必要はあるかもしれないけど、街づくりのヒントになりそうだし。
何かしらテーマのある雑居ビルが増えれば、ビル所有者にとってもお店を出したい側にとっても、WinWinな気がするし。
ディグ好きがいる限り、雑居ビルは健在するだろうし。
”ZAKKYO”が、今後世界的に流行るかもしれないし。
”ディグ”することにハマったきっかけは、レコード。
今では、映画、カルチャー、昔ながらの大衆飲み屋、立ち飲み屋、クラフトビール、アート、ボトルショップ、料理。あらゆる好きなものを自分なりにディグることが人生の一部になった。
そう、思い返せば、ディグにハマった根底は、”雑居ビル”にあったのかもしれない。