キャプチャ

いまは宇宙和声時代!

さて、ソシリスペクトなタイトルでキメてみましたが、近年(私パンチャが提唱するところの)「宇宙和声」が花盛りで、いまだに衰えることがありません。

少し前は、女性アイドルグループのアルバム曲にちらちらとあったものが、だんだん活動曲にも目立ってきていて、今年は本当に多いなという印象。主に爽やかさを売りにするグループが男女問わず使っている感じです。

例えば、6月~7月くらいに、下記の4グループが同じ時期に活動していて「宇宙和声大豊作じゃ~」という感じでした。

CLCはスペーシィというよりアーシーなどっしりとしたゴスペルソウルロック?フィーリングがいい感じです。

転調をはさみこんだり、かなり凝った形で宇宙和声を盛り込んできた松子さん。なんともいえない清涼感が素敵な曲です。

作家がSweetuneからDeezに移行したROMEOさんは、かつてのSHINeeやVIXXを彷彿とさせるパワー感あるふれる宇宙和声で勝負。硬質でパッチワーク的に畳みかけるサウンドがなんともいえずかっこいいです。

CLCと同様にブルースロック的なニュアンスが強く、というかそれ以上に力が抜けていて、宇宙的なスケール感というよりはアーシィな泥臭さが目立つ、弱めの宇宙和声(註1)。個人的にこの作家のイギヨンベは好きでないと思うことが多いのですが、現在のカムバック作も含め、ASTROについてはとても気に入ってます。この曲については、なんといってもMV含めサイダーのCMって感じで、ノベルティー的な遊び心があふれていてとても素晴らしいです。

現在活動中の宇宙和声曲は、ちょっと面白いことにまったく性質の違うこの2者のものです。


通常は、少女型のグループにある種のパワー感を付与するために、こうした宇宙和声が使われているのに対して、ヒョリンについては、逆にパワー感を失わないようにしつつも、ポップで少し柔らかい感じを演出するために宇宙和声が使われているのが面白いところ。これは、男性アイドルでの使い方に似ています。宇宙和声は、壮大なパワー感をポップさを失わないように使うための技法なので、甘味の中和と辛味の中和の両側からのアプローチが可能なのです。

ところで、なぜいま宇宙和声が多様されているのでしょうか?

いま売れ線の清純型・少女型のアイドルグループを音で演出するにあたり、「軟弱」さを避けるために、パワフルさを付与する目的で使われている、と私は考えています。多くの場合、ビジュアル的にはチアーっぽいイメージがセットになっているのも面白いところです。

少し前になりますが、ApinkがMr.Chuの活動をしている際、本人たちはアルバム曲である「クリスタル」という曲を一番気に入っていると言っていました。どこか軟弱だったり主体性がないように見られる清純系でも、そのイメージを維持しながら「力強さ」や「前向きさ」を表現できる宇宙和声曲が気に入られたのではないか、と思います。

ただ正直なところ、これらの曲が、うまくヒットに結び付ついているかというと微妙なところもあります。個人的には大好きな和声なので、聴くと「お!」となるのですが、大衆歌謡としてのフックの弱さは否めないかもしれません(その点、ヨチンの並行調転調の手法が一枚上手なのでしょうか→コチラ)。

この点、甘辛のバランスをあえて両極端にふることで成功を収めているように思うのがOMGのこの2曲です。


多くの場合、女性アイドルの使う宇宙和声は、ポップなテイストが出るような和音構成になっているのですが、OMGの場合他のパートはとてもキュートな感じにしつつ、宇宙和声(CUPIDではサビ、Liar LiarではBメロ)は男性アイドルが使うような無骨なものを選んでいる点です。全体はものすごくあま~い感じなのに、ここでピリッと曲想を引き締めているわけですね。とてもうまい匙加減だなと感じます。洋楽っぽい、と言ってもよいと思います(実際、OMGは海外ベースのプロダクションとなっている)。註2

さて、最近はなつかしさを感じる情念ごりごりの短調曲も復活していますが、今後も清純・爽やか路線は簡単にはなくならないと思いますので、当然宇宙和声の活躍も続くと思います。K-POPに集う作家たちがどんな感じに料理してくれるか、楽しみです。


註1:専門的にいえば7thを含むVIIbを使うけれど、より宇宙感の強いVIbを使っていないところがポイント。

註2:なお、辛口の宇宙和声使いという点では、上で紹介したMOMOLAMDがOMGに近いのですが、Bメロとサビで思いっきりアジアのアイドル歌謡っぽい展開にしているのが、OMGとの違いという印象があります。もちろんどちらも捨てがたい魅力があります。
 専門的にいえば次のとおりです。例えば、ヒョリンやCLCは、I→VIIb→VIm→VIbという展開を使っているのですが、ここでは間にダイアトニックなVImを混ぜることで、半音(クロマチック)の流れをつくりつつ、単和音が入ることで情感もうまれ、優しい感じのポップさが生まれています。逆にROMEOなどは(かつてのSHINeeやVIXXと同様に)VIb→VIIb→IとVImをはさまずにごりごりと動く感じがしています。

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