- 運営しているクリエイター
記事一覧
プレKポップ・ノート4:列島からの音楽流入の波に関する覚書
現時点での私の理解では、20世紀以降の日本列島から朝鮮半島の(西洋音楽をベースとした)音楽的影響の波は、おおざっぱに3つくらいの時期でくくって考えられるように思います(註1)。
第1波:日帝期。日本のレコード会社資本が日本式の制作システムを構築。同時に「ヨナ抜き音階」を伴う2拍子の流行歌の形式が、レコードの流通とともに普及。
第2波:戦後軍事独裁期。公的には倭色が禁止されるも、ラジオやテレビ、あ
プレKポップ・ノート3:「バラード好き」の起源は1982年?
以前つぶやいたこちら。
テレビを見ていてふと、そのヒントになる(かもしれない)言葉に出会いました。
ままむが人気番組「不朽の名曲」で歌ったこちらの曲。
原曲はこちら。
だいぶシンプルで思ったよりもフォーキーですね。70年代的、というような印象もあります。
この、オリジナル歌手のミン・ヘギョンさん。ままむの舞台を見た後のコメントで(番組では元の歌手が客席のど真ん中に座っていて、審査を行う)
倭色歌謡왜색가요の美学的検討・その2
列島国家からの独立後の朝鮮半島において、日本文化、いわゆる「倭色」は、自らのアイデンティティの確立、(再)確認のために忌避されるべきものとなりました。その適用分野は多岐にわたりますが、当然歌や音楽もそこに含まれていました。
では実際、どのような特徴を持った歌や音楽が「倭色」とみなされたのでしょうか。案外と、そのことにふれた文章は見当りませんが、私が知る限りでは、韓国近代音楽史を専門とし、自らも音
倭色歌謡왜색가요の美学的検討・その1
新曲で快進撃中のTWICE。デビュー曲ではどじっ子キャラで盛り上げた日本人メンバーサナが、今度はセーラームーン風の衣装+日本語なまりの英語歌詞の可愛さが評判とのこと。
日本風の制服衣装や、アニメキャラクター風の衣装を、アイロニーを漂わせながら日本人のメンバーが歌い踊る…韓国社会では、日本の文化的表象に対する警戒心が解かれたということでしょうか。
半島では、植民地時代を経て、こうした列島からの文
プレKポップ・ノート2:レコード会社について
日本で「ポピュラー音楽産業」といってすぐに思い浮かぶのは「レコード会社」という言葉ではないでしょうか。もしかするとそのような認識は、日本のポピュラー音楽界が、20世紀の初頭に海外のレコード会社の資本によって開発されたという歴史を反映したものかもしれません。
この点、韓国(朝鮮)ではだいぶ様子が違うようです。これについては、韓国での最前線の研究の一部を日本語で読めますので、それをもとにある程度の理
プレKポップ・ノート1:20世紀前半
いま私たちが触れている「K-POP」は、どのような歴史の積み重ねの中で形成されてきたものなのでしょうか?
例えばK-POPといっても「トロット」と呼ばれる音楽は日本の「演歌」とも似ていることから、「これってどういう風に発展してきたんだろう」と気になりつつも、アイドル達の怒涛の「カムバック」の中で調べることもなく終わってしまいがちです。
最近、私はいくつか文献を読みながら、この点について自分なり
[추억의 가요] 고복수 - 타향살이(1934)
孫牧人作曲、高福寿歌による「他郷暮らし」。「伝統の節と同じ三拍子のこの歌は、戦前・戦後の在日韓国人・朝鮮人の胸もうち、また五〇年代前半の朝鮮戦争のとき離散家族問題が深刻になったときも愛唱され、歌詞に埋め込まれている「失郷民」の姿は、在外韓民族に共通する望郷の姿であった」貴志俊彦『東アジア流行歌アワー』109頁より。
이난영 - 목포의 눈물 (1934. Jukamusics & Original Version)
孫牧人作曲「木浦の涙」。これを歌っている李蘭影は、日本にわたり36年に岡蘭子の日本名で日本語翻訳版「別れの舟唄」としてテイチクで録音している。貴志俊彦『東アジア流行歌アワー』より。
이난영, 다방의 푸른꿈 (1939)
李蘭影「茶房の青い夢」。日帝時代、朝鮮半島のジャズソング。金梅松作曲。
노란샤쓰 입은 사나이 - 한명숙
孫夕友作曲、韓明淑歌唱「黄色いシャツの男」。朝鮮戦争後、米軍の慰問ショーの制度化によって磨かれたアメリカ音楽(初期は主にスウィングジャズ)の演奏、作編曲技術が、大衆歌謡として結実した曲とされる。貴志俊彦『東アジア流行歌アワー』、申鉉準『韓国ポップのアルケオロジー』。
이미자 - 동백 아가씨 오리지날 원판
1964年発表。李美子の「椿娘」。100万枚を売るヒットを記録するが66年に「倭色歌謡」として発禁処分に。朴正煕政権下のこと。
The Kim Sisters
金梅松と李蘭影の娘キム・シスターズの米国での超絶パフォーマンス。韓国初のガールズグループとも。
패티김/이별(LP music)
パティ・キムの「別離」。