ミステリ読書歴 2017年7月

獄門島 横溝正史
匣の中の失楽 竹本健治
こどもの王様 殊能将之
二銭銅貨 江戸川乱歩
心理試験 江戸川乱歩
嫉妬事件 乾くるみ
鏡の中は日曜日 殊能将之
森の中の小さな密室 小林泰三
頼子のために 法月綸太郎

2017年7月に読んだもの。
(今まではX冊め〜Y冊めと題して記事を書いていたが、読書メモを整理したら他に読んでいたミステリがあってナンバリングがずれたり、「心理試験」「二銭銅貨」は青空文庫で読んだので1冊2冊という数え方がもはや無意味ではと思ったり、などの理由でやめた。)

「嫉妬事件」は「部室にウンコを置いたのは誰だ!」という異色の犯人当てミステリで、登場人物全員が推理に参加する推理合戦ミステリでもある。乾くるみを知っていれば推理しなくても唯識論的本質直観で犯人のアタリがついてしまうが、むしろこの作品は犯人のアタリがついた状態で倒叙的に読んでいくのが面白いのではないか。もちろん倒叙とは違い、アタリをつけた容疑者が本当に犯人なのかは確定していないので、「もしかしたら違うかも」という気分も味わえるので一層お得である。というわけでこの作品も自分的には好き。

「心理試験」と「二銭銅貨」では二銭銅貨の方が好き。心理試験は、「倒叙もので犯人を罠にハメるとしたらまず第一に考える方法」で犯人をハメるのがちょっと物足りなかった(この作品がそれ系の元祖に近いということなのでは)。二銭銅貨は「人間原理」みたいな話である。本当か?

「鏡の中は日曜日」は「殊能将之全部読む」キャンペーンの一環で読んだ。面白かった。終盤の、優しい、光あふれる寂しい田舎道、みたいな雰囲気が良い。仕掛けについては、新境地を拓こうというよりは、ミステリ小説の叡智を集めてお城を建立しよう、という感じだと思った。

「こどもの王様」も「殊能将之全部読む」で読んだ。子供向けに書かれたミステリ、という体(あくまで体)。あまりミステリっぽくない。ではミステリ的なのはどこかというと、大人になってから読むと意味がわかる「時間差トリック」が仕掛けられている点、ということだろうか。作者があとがきで書いているように、この作品はミステリ的要素を持ちつつ、こどもの心象風景を描きたいというところに焦点があったっぽいので、こういうのもアリかな、という感想です。

「森の中の小さな密室」は、「小林泰三だいたい読む」の一環で読んだ。小林泰三の中でもかなりミステリミステリした短編集。「正直者の逆説」は「嘘つき村と正直村」みたいな論理クイズのような趣で好き。乾くるみと小林泰三の共通点は「論理クイズマン」というところか。

「匣の中の失楽」は途中で挫折。できれば読みたかったのだが、退屈で仕方がなかったし、雨も振っていてバーガーキングがじめじめしていたのも手伝って、その日に読むのをやめてしまった。
退屈だった理由だが、読む動機がいけなかった。有名作品であるということの他に、乾くるみ「匣の中」を読みたいのだがその前に元ネタは読んでおかないとな、というつもりで読んだのだが、これが退屈に繋がったのではないかと思う。義務感にかられて読むとたいてい楽しめない。しかしそういったファクターが作品評価に影響するようでは、作品の客観的な評価は難しいのではないか。

「頼子のために」やっぱり面白い。法月綸太郎に皆大事なことをぺらぺらしゃべりすぎでは、と思ったが、法月作品はとにかく読んでいて「たるいな……」と思わないし、サプライズのショック度は大きくはないけどたしかな読後満足感がある、というのが、まあ、自分に合っているということだろう。

このへんの時期は、「さくさく読める」「面白い」「後を引かない」という理由で平日昼間の休憩時間の読書に打って付けだったミステリ読書を淡々と続けている、といった感じだった。お気に入りの作家を継続的に追いつつ、おもしろを求めて有名作品にも手を出してみる日々。2018年6月現在、非常にうす〜くだが、要所は押さえたのでは?という気になっているが、それはこの時期に獄門島とか読んでおいたおかげだろう。しかし横溝一冊しか読んでないのに「要所は押さえたのでは?」と思えるの、たくましいな

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