ミステリと2017年

2017年の4月、初の子どもが生まれるか生まれないかという時期からミステリを読むのが趣味になった。人が生まれるので、バランスをとって人が死ぬ話を読んでおかねばという使命感にかられてミステリを読みはじめたわけではない。明確な理由があるわけではないが、経緯はだいたいこんな感じである↓

家事が増え、自由時間が通勤時間と昼休みにほぼ限定された
⇒その時間はスマホでゲームをやっていたが、時間の有限性におののき、もう少し良い時間の使い方をしたいとつねづね思っていた
⇒しかし通勤中や昼休みは疲れることはしたくない、休み時間だし
⇒たまたま図書館でミステリを借りて読んだらいい感じで頭が休まりつつ、一冊本を読み終えたという充実感もあった
⇒図書館で本を借りて通勤時間と昼休みに読む、という習慣が定着

要約すると「疲れない」かつ「充実感がある」のがミステリだった、という感じだろうか。ミステリ読むのって頭使うし疲れる、という人もいるかもしれないが、自分は中途半端にしか推理しないからか、そんなに疲れない。というか、ごくたまに人物相関図とかアリバイチェック表みたいなのを書いて真面目に推理することはあるが、生活がかかっていないからだろうか、頭を使っても疲れない。

ミステリに限定するつもりはなく、SFや純文学、思想本、技術本とかも読んだが、ミステリがいちばん気軽に読めるからか、圧倒的にミステリばかり読んでいた。おそらく、安心して読めるからだと思う。意外かもしれないが、自分の印象としては、ミステリというジャンルがいちばん、意外なことが起こらない。ほぼすべての記述はラストの「驚き」に寄与する伏線だし、ラストで「意外なこと」を明かしてそれで驚かそうとしている、ということがすでにわかっている(後述の通り、例外もあるが)。

こうも言える。純文学の場合は、書き手によって、本によって狙いが様々だし、感受性のどのチャンネルを刺激してくるのかが未知なので、いろいろなチャンネルを開けて読まねば良い読書体験にならないが、ミステリを読む場合は「仕掛けを楽しむ」というチャンネルだけ開けておけば書き手の狙いを外すことはまずない。もちろん、チャンネル全開きでミステリを読めばまた違った発見、読み味があるのかもしれないが、通勤と昼休みを楽しく過ごすには「仕掛けを楽しむ」チャンネルだけで十分だった。

というわけで、あまり踏み込んで読むわけではないが、ミステリのおかげで2017年は楽しく過ごせた、と言っても過言ではないわけである。

ところで、2017年に読んだミステリのなかで、特に読んで良かったものをひとつ挙げるなら、「夏と冬の奏鳴曲<ソナタ>」である。この作品は、ミステリ的な仕掛けにはさほど感心しなかったのだが、それとは別のところで痺れてしまった。80冊ちょい読んでいちばん印象に残ったのがミステリ的仕掛け以外のことなのかよ、という感じだが、「ショック」とまで表現できるものを味わったのはこれだけなので仕方がない。

他にも良かったものをいくつか挙げておく(読書記録で5点満点中5点だったやつをコピペ)。

アリス殺し 小林泰三
美濃牛 殊能将之
セカンド・ラブ 乾くるみ
鏡の中は日曜日 殊能将之
◯◯◯◯◯◯◯◯殺人事件 早坂吝
毒入りチョコレート事件 アントニイ・バークリー
黒い仏 殊能将之
遠海事件 詠坂雄二
塔の断章 乾くるみ
Jの神話 乾くるみ
匣の中 乾くるみ
翼ある闇 麻耶雄嵩
神様ゲーム 麻耶雄嵩
虹の歯ブラシ 上木らいち発散 早坂吝

ずいぶん筆者が偏っているが、書き手それぞれに文体や狙いがあって、それが好きかどうかで読み味が左右されるので、まあ一度気に入ると他の作品も好きだったりする。

あと日本のものばかり読んでいるが、海外ミステリは読むと疲れるのが多いので今のところあまり読んでいない。

すきま時間を充実させるために読んでいるとはいえ、何かしら感想とか読んだときの印象とかちゃんと残しておくとあとで面白いかなあと思ったので、これから感想とか書いていくかもしれない。というかさっき読書記録を眺めてたらけっこうどんな話か、どんな仕掛けだったか忘れてるのが多くて、ミステリ読むのもスマホのゲームをやっているのとあまり変わらない、ただ俺の時間を一瞬だけ埋めて、ただ去っていくだけ、、、な気もちょっとしてきて、アレだった。まあ何事も真面目に取り組めばスマホゲーだって素晴らしい体験になるわけで、真面目に取り組まずに充実感を得ようとすること自体がアレなのかもしれないが、そんなことを言うと俺の2017年はなんだったんだ、ということにもなるし、寝よう


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