ミステリ読書歴 21〜30冊め

人格転移の殺人 西澤保彦
どんどん橋、おちた 綾辻行人
生ける屍の死 山口雅也
哲学者の密室 笠井潔
虚無への供物 中井英夫
ロボット小説集 アーカイブ騎士団
独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明
ダブル/ダブル (白水Uブックス) 短編集
モレルの発明 アドルフォ・ビオイ・カサーレス
法月綸太郎の功績 法月綸太郎

大学四年生のときに来たミステリブームは「虚無への供物」を読んだところで終わり、次の「ロボット小説集」まで2年空いている。

11~20冊めで面白かった西澤保彦、綾辻行人をおかわりした後、比較的分量の多い「生ける屍の死」「哲学者の密室」「虚無への供物」を読んでいる。また、この時期に「ドグラ・マグラ」を読んでいるが下巻に入ってすぐあたりで上巻に何が書いてあったか何も覚えていないことを気付いて読むのを中断した。この辺で、第一次ミステリブームは終焉を迎えたようだ。盛り上がりに欠けた(その上長かった)読書体験が連続したため、心が離れてしまったのだろう、ということを、この読書メモを書き出しているときに思い出した(この後なぜか保坂和志タイムが到来する)。

「生ける屍の死」はまあまあ長かったが、「奇偶」を通過した私としては長さよりも文体の軽さの方が気になってしまい(ハードボイルド文体なのだろうということを後で知った)、ミステリ的仕掛けにも今ひとつ乗ることができなかった。「奇偶」の方が好き。

「哲学者の密室」は正直つらかった。もう少しミステリを読破してから挑戦すべきだったかもしれない。当時気になったのは、「カケルの本質直観ならそんな謎はイチコロよ」的なことを言う探偵のガールフレンドのキャラクターとかがどうもウソくさくて、ウソくさいキャラ設定と「思想的で現実と地続きな話」との整合性が自分の中でとれなかった、というところだ。サプライズが決まれば万事OKなミステリでは紋切り型のキャラクター達が出てくるのは気にならないが、思想とかをやる場合はその紋切りキャラクターだとキツイのでは、という風に思っていた、といえるかもしれない。今では、そういうちぐはぐな(ちぐはぐだと思っていた)作品にも慣れてきたので、少しは前より楽しめるかもしれない。

「虚無への供物」「ドグラ・マグラ」も、つらかった。虚無への供物を奇書として読むとしても、それだったら世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドの方が奇想天外で面白かったな……とよくわからない比較をしてしまう。サプライズもそんなになかったので、自分としては特にポイントのない作品、ということになってしまった。

というわけで、この辺でミステリから一旦離れてしまう。第一次ブーム、10冊ちょいしか読んでいないのでミニブームといったところか……次のブームが来るのは8年後である。

しかし、その8年の間にもちょこちょことは読んでいた。

「ロボット小説集」は、アーカイブ騎士団というサークルが書いている同人誌で、ミステリも収録されているのでミステリとしてカウントした。ただSF色の方が強い。アーカイブ騎士団の作品はたぶん全部読んでいるが、主にSF、次いでミステリを基調としつつ各々の作家の得意分野にまつわるアイデアを練り込んでブチ込んでくる短編実験場のような感じで、毎年楽しみにしている。すごいのは、同人小説のシリーズとして、毎年コンスタントに1冊ずつ出すというペースを守って8年くらい?続いているのがすごい。

「独白するユニバーサル横メルカトル」は、「オペラントの肖像」「卵男」がかろうじてミステリ的かなと思ったのでミステリにカウントにした。「Ωの聖餐」などが好きだが、悪趣味さやグロテスクさを感じた度合いでは村上龍を読んでいるときに遠く及ばないと思った。これは、村上龍を読んだのが中高生の頃であることも関係していると思うが、作品自体の性質にも拠るところがあるだろう。なにかその辺の話をいつかまとめてみたい。いつか

「ダブル/ダブル」「モレルの発明」は、保坂和志が紹介していて面白そうだったので読んだ。「モレルの発明」はなるほど〜面白い〜という程度だったが、「ダブル/ダブル」に収録されている「パウリーナの思い出に」にはぶっ飛んだ。は?面白すぎるんですけど?……と天にも上る思いだった。幻想文学系をたしなむ人の間ではわりと有名な作品らしいが、こういうものに触れられるのだったらもっと本読んでもいいんじゃん?と思った(が、他に何冊か読んで目立った収穫が得られなかったため幻想文学ブームは来なかった)。なお「パウリーナ」は完全にミステリ的なのでミステリにカウントします。

そういうわけで、なんとなくだけど、ミステリに限定せずに読んだ本全て並べた方が「読書の仕方の変遷」がわかりやすいような気もしてきた(ダブル村上や保坂和志が登場してくることにより話がややこしくなっているので)。しかし、読書歴を全てさらすと、自分を全てさらけ出すことになり大丈夫かという気がしているから躊躇しているのかもしれない。でもまあ、何も失うものもないしそれでもいいか。どうするか

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