ミステリ読書歴 31〜40冊め

グリーン家殺人事件 ヴァン・ダイン
人形はなぜ殺される 高木彬光
イニシエーション・ラブ 乾くるみ
ゲーム殺人事件 竹本健治
イリーガル・エイリアン ロバート・J・ソウヤー
Yの悲劇 エラリー・クイーン
長い腕 川崎草志
恋愛小説集 アーカイブ騎士団
しらみつぶしの時計 法月綸太郎
ユートピア小説集 アーカイブ騎士団

2013年から2015年の3年間に読んだものは上記10冊のみ。

ミステリマイブームが過ぎたものの、たまに「十角館」のようなサプライズを味わいたいと思い、ちょこちょことミステリを読んでいた。結果的に、この読み方はよくなかったと思う。「世界を一瞬でひっくり返すサプライズ」以外への感度が低くなってしまったっぽいからだ。じんわり味わう推理劇や作者とのガチンコ熟考推理勝負を楽しむチャンネルも開けておかないと、そういうものが売りの作品を楽しむことができない。じゃあどう読めばよかったのかというと、できるだけニュートラルな気構えで読む……?いや、もう「十角館」で開いたチャクラ……チャンネルに合わせがちになるのはしょうがないので、また素敵な読書体験を味わえるまで一冊一冊と読んでいくしかないのかもしれない(「十角館」は読者にチャクラを強制的に開かせるパワーがあったのだと言える。もうチャクラでいいや)

かいつまんで紹介。まず「グリーン家」は様々な古典の参照元になっている古典の親玉みたいな立ち位置の名作だが、求めていたものとは違った、という感じで不発。でかい館でじめじめ巻き起こるどろどろした家族による不幸な殺人の陰鬱な雰囲気がそもそも好き、という人がいるらしいということをレビューなどで知り、この本に関しては好みの問題だと割り切ることにした。

「人形はなぜ殺される」は、数千冊のミステリを読んでいる人がベストミステリとして挙げていたので、興味を持って買って読んだ。しかし不発。結果から見れば、もう少し推理しながら読んでいくべきだった。裏をかかれるほど、表も読んでいなかったのだ。

いっぽう「Yの悲劇」はドンピシャだった。途中退屈だったところも「十角館」と重なるが、サプライズにはショックを受けた(一連の読書日記の中で「ショックを受けた」という通り一辺倒な表現を繰り返しているが、前回の感情と同類の感情であったことを強調するためにわざと同じ表現を使っているのであり、表現力が欠如しているわけでもある)。

また、「イニシエーション・ラブ」も同じく当たり。典型的な「最後の一撃」系、と思いきや、最後の一行まで読んでも「ああ、これはわかってました」と余裕の表情だったが「それだとここまで話題にならないのでは」と思って反芻してみて、「まさか!あぁ……そのまさかだ」と遅効性の一撃を食らった。

というわけで、ここ数冊はきれいに楽しめたかどうかが分かれる結果となった。このことから何がわかるかというと、わかりそうでわからない。

「イリーガル・エイリアン」にも触れておかねば。これは驚きの真相もあるがそういうの抜きで、単純にお話が面白い。ずっと面白い。小説の理想形では、と思ってしまう。読後感があまりにさっぱりとしていて引きずるものが個人的にはなかったが、幸福な出会いだったことに変わりはなかった。

「恋愛小説集」では変格ミステリ、「ユートピア小説集」では新本格ミステリが読める。どちらも面白いが、上記の流れからして当時の自分が「ユートピア」収録作の方に特に感銘を受けたことは不思議ではないかもしれない。幸いなことにけっこう細部を忘れているのでもう一回読もう。

「長い腕」は姉の推薦図書。書き出しの雰囲気は今日までに読んだミステリの中でもトップクラスの「いい感じ」だった(あんまり覚えてないが、読み始めで非常にわくわくさせられたのを覚えている)。あれこういうオカルト雰囲気系あまり好みではないのでは、と思ったけど、これが好きだったのは何故だろう。黒沢清映画みたいな雰囲気だった気がする。なお、出だしがよすぎるので思い出補正で少し霞んでいるが、後半も悪くなかった。

とりとめもなく思い出を書いたが、強引に最初の話に戻ると、本を一冊一冊と読んでいくことによって新しいチャンネルが開かれ、今までの自分だったら楽しめなかったような作品も楽しめるようになることもあるのではないかと思う。大傑作と言われる作品を楽しめなかったとしてもそれは不幸な出会いではなく、未知のジャンルの未知の楽しみ方と自分とを接続してくれたのかもしれないのだ。嘘だそんな綺麗ごとばかりではない、閉じるチャンネルもある(もうこういう系はウンザリ、みたいなの)

しかしまあこうやって順々に思い出していくと、けっこう一冊一冊のキャラが立っていて、存外全部自分の糧になってる気がしてきたので、読んでる最中や読後にそこまで感激しなくても、なんか総じて読んでよかったなあという気分がしてきた、おめでたい

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