ミステリ読書歴 51〜60冊め

アリス殺し 小林泰三
スタイルズ荘の怪事件 アガサ・クリスティ
失われた過去と未来の犯罪 小林泰三
クララ殺し 小林泰三
リピート 乾くるみ
完全・犯罪 小林泰三
記憶破断者 小林泰三
安楽探偵 小林泰三
スリープ 乾くるみ
毒入りチョコレート事件 アントニイ・バークリー

2017年4月〜5月に読んだミステリ。

「アリス殺し」がよかったのは、行きの電車と昼休みと帰りの電車で読むだけで2日くらいで読めたというところだ。それまで読書はスキマ読みだと一週間、がっつり読んでも2日以上かかるというイメージがあったので、こんなに早く長編を読み終わることができるのかという感動があった。アリス殺しは二段組だったが短文の会話が異常に多く、鬼のようなスピードで読める。内容も面白かったが、早く読み終われたという達成がツボにハマり、「こんなに速く読めるなら」と図書館でまとめて小林泰三を借りてきたのがミステリ読書習慣のはじまりだった。

「スタイルズ荘」はどんな事件だったかは覚えていないが、意外な犯人の仕立て方がうまくて唸った。

「失われた過去と未来の犯罪」は一章が抜群に面白く、こんなに面白いのになぜ「容疑者X」や「葉桜」や「イニラブ」みたいに話題になってないんだ?と思った。1年前のことだが、面白かったのでモスバーガーのどこの席で読んだのかも覚えている。二章はよくある話に落ち着いてしまい個人的には不発だったが、前半部分だけでも傑作だと思う。

「クララ殺し」は、私の心が狭く、また「◯◯の◯◯は◯◯でした」だったら怒るぞ、と思っていたら、それだったので宣言通り怒った。今から思い返してみると、「◯◯の◯◯は◯◯でした」を見た人だけがその応用を楽しめる、というような読み方をすればよかったのかもしれない。変にボカして書くからわかりにくい

「リピート」も面白かった。乾くるみの本にはなぜかよく蒲田が出てくる。

「完全・犯罪」「記憶破断者」「安楽探偵」では安楽探偵がいちばん印象に残っている。さいしょ「なんか短時間で書き飛ばしたみたいなアイデアと文章じゃないか」と不安になったが、2つ3つと短編を読み進めていくにつれて狙いがなんとなくわかってきて、ホホウ、面白いと思った。一言でいえばスカシ漫才、ならぬスカシミステリ。

(なお「脳髄工場」「玩具修理者」なども読んだがミステリじゃないと判断してリストには入れていない。その区別意味あるのか)

「スリープ」は正直(真相も早い段階で気付いてしまったし)そこまで感心はしなかったのだが、バーガーキングのどの席で読んだかを覚えているので、印象に残っている作品だと思う(リピートはどこで読んだか覚えていない)。大ヒット作品でやった「人物像の反転」をこの作品でもやっているのだが、そのやり口がどうも陰険(?)で、嫌いになれないのである。乾作品は基本的に「女は性格が悪く、男はアホ」というところをおさえておくと推理しやすいのだが、この作品は後者の成分が高い。やっぱり蒲田が出てくる。

「毒入りチョコレート事件」は、多様な表現でけなす人物描写や洒落た台詞回しなど筆致がオシャレで、周辺で読んでいる作品にはない魅力があって楽しかった。「多重解決」という表現にはいまいち納得がいっていなくて、普通に最後のがただひとつの解決なのでは、と思ったが、ヘラヘラ読んでいるのでいろいろ見落としているかもしれない。推理合戦という趣向は、今後もよく見ることになるが、作者によって「推理合戦のどこを面白いと思っているか」が違うと思われ、自分に合ったり合わなかったりして面白い。AだったりBだったりして面白い、と言っておけばいいと思っている

この時期に子どもが生まれた。家での自由な時間がゼロ分になり、行きと帰りと昼休みで人生の進捗(人生の進捗?)を出したいという気概が生まれ、「速く読める、早く読み終わる本を求める心の動き」は加速する。目先の成果を追い求めるあまり、大事なものを見落としてはいないだろうか。


追記:なんか同じようなこと前にも書いたな、と思ってnote見たら下書きに一記事まるまる「スリープ」について書いた文章があった。書いたの3月21日。なんでもう覚えてないんだ


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