ミステリ読書歴 2017年8月

ある閉ざされた雪の山荘で 東野圭吾
Jの神話 乾くるみ
厭魅の如き憑くもの 三津田信三
首無の如き祟るもの 三津田信三
殊能将之未発表短編集 殊能将之
扉は閉ざされたまま 石持浅海
キマイラの新しい城 殊能将之
シャドウ 道尾秀介
耳をふさいで夜を走る 石持浅海
匣の中 乾くるみ

「ある閉ざされた雪の山荘で」コンセプトが面白かった。

「Jの神話」かなり笑った。こういうのをもっと読みたいのだが、たまにでもいい気がする。というかこの作品以外に「この作品っぽい作品」って何があるんだろうか。募集します

「厭魅」は100ページほど読んだところで、何も読んでいないに等しいくらい頭に何も残っていなかったので読むのをやめた。おそらく、まだ事件が起こっていなかったと思われる。以前の記事で「因習ものとか苦手」「事件がなかなか起こらないものは昼休み読書に向いていない」と書いたが、ほぼ「厭魅」を指している。出会い方が違えば、もっと良い読者でいられたかも、と思える一冊だ。

「首無」は厭魅が合わなかっただけで三津田信三自体は人気だし首無はその中でも評価が高いし面白いはずだ、と思って読んでみた。が、こちらも100ページくらいで挫折、何が書いてあったかほぼ覚えていない。もういいやと思い、真ん中を飛ばして解決編だけ読んだ。しかし解決編だけで全体の5分の2くらいあった。解決編は非常に面白く(どんな読書だ)、飽きずに読めた。さまざまな趣向が盛り込まれていてどんでん返しもあり、エンターテインメントしているなと思った。
しかし、100ページくらいで読みやめるのは、堪え性がないだけなのではないか。おそらく序盤で書かれていたことのなかで重要なことは中盤でも繰り返し確認してくれるだろうし。

「殊能将之未発表短編集」「キマイラの新しい城」を読んで、殊能将之は残すところ樒/榁だけになった。今に至るまで読んでいない、これを読むと本当に終わってしまうので……なんて言わずに読もう、よし今月読もう。
「キマイラの新しい城」で図解された、密室を「空間の密室」、アリバイを「時間の密室」として表現し犯人当ての根拠にする話は、いい話として思い出される(うろ覚えなのでそういう話じゃなかったかもしれない)。

「扉は閉ざされたまま」は倒叙もの。冒頭で殺人が描写され、その犯人を追い詰めていくロジックを楽しむ作品。退屈せず読めた。殺人動機はしょうもないが、そんなに気にならなかった。犯人指摘後の処遇については「それをやると探偵の魅力が下がってしまうのでは」と思ったが、まあいいのか。

「耳をふさいで夜を走る」は、あ、これもしかしたら「Jの神話」と同系統かもしれない。うん。同系統だ。そういうことにしよう。なんやねん!という話だが、通して読むのに苦労はなかった。しかし苦労のなさを評価ポイントとしていいのだろうか。本を読み終わった後、何を言えばいいのか、言いたいことはあるがなぜそれを言いたくなったのか、いつも悩みが尽きないのだった。

「シャドウ」、読書中〜読了直後に書いた感想メモを引用しますと
「170ページくらいだが、なかなか点が線になる演出が小出しになってて、おお、という感じ。」
細かな謎と細かな真相暴露のジャブが効いていたようだ。
「最後まで読んだ。うーんこれは駄目かもだ……。ヒューマン要素はない方がよいような気もする。」
自分はヒューマン要素が苦手なようだ。ヒューマン要素ってなんだ?
「ミステリは三人称多視点が多いな、というかそういうのをチョイスして読んでる気がするが。」
たしかに、章ごとに視点人物が変わるものは多い。
あと覚えているのは、統合失調症の解釈ってそれでいいのか、と思った記憶がある。

「匣の中」今考えてみると乾くるみの長編の中ではいちばん好きかもしれない。どこがいい、とかそういうことではなく、「匣の中」を読んだ経験が愛おしいという感じだ。それって、だから、どこかが良かったんでしょ、ということになるのだが、トリックに感動したとかではないし(そんなに感動しなかった)、オチが決まってたとかそういう感じでもないし(まあまあ決まってた、程度)、人物に感情移入したとかもまったくないし、なんなんだろう。ひとつ挙げるとすれば、文体が非常に自分に合っていた。

というわけで2017年8月の読書だが、ここでは自分の苦手がわかってきたような感じだった。評価の高い有名作品ばかり読んでいる(一部有名作家のあまり有名でない作品も混じっているが)ので、楽しめなかったとすればポイントを外した、自分好みではなかったということなのだが、そういうのを知っていくのも自分の位置を知っていってるような感じで面白い。苦手なものがわかっていく経験もまた捨てがたいものである。

実際はもう少し突っ込んだ感想を書いていきたいのだが、なにぶん読んでから10ヶ月くらい経っているし、これを書くことでさらっと思い出す程度がまあ、よいだろう。というか早く現在にたどり着きたい。


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