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「事業リスク対策保険(キャプティブ)」

法人メインの保険屋さんだったら、2019年のバレンタインショック(いわゆる節税保険が2/14に販売停止になった件)以降、売るものがないという状態かもしれません。
法人名義で保険加入、保険料を経費で落とし、決算書の利益を減らすという法人税の繰延スキームでしたが、節税メリットばかり謳って販売した結果、国税庁が税務上の取り扱いを見直し、現在では節税メリットはなくなっています。

その代替として提案できるものが事業リスク対策保険(キャプティブ)です。
その名前の通り、事業に関するリスク対策のための損害保険に加入する、というものですが、それだけだと保障に対する保険料を経費として支払って終わりです。
ここに海外の子会社(再保険会社)を組み込むことで、支払った保険料の一部をその子会社の売上として受け取れるというのがポイントです。

例を上げて説明します。

事業会社:A社
損害保険会社(日本):B社
損害保険会社(海外):C社


建物を所有している事業会社Aが火災保険に入るとします。

日本の損害保険会社Bに年間保険料として100を支払い、火災が起きた時、Bは事業会社Aに1000という補償を提供します。

1000という補償を負担しなければならないBは、リスクを分担するため、損害保険会社Cと保険契約を結びます。

クライアントAから100の保険料を受け取ったBは、そのうちの50をCに支払い、火災が起きたら、BはCから500の補償を受け取ります。

「再保険(キャプティブ)」

・・・これが「再保険(キャプティブ)」です。

Bは、「再保険」を掛けなければ、1000という保障を負担しなければなりませんが、Cに保険を掛けているので、500は入ってきます。
従って、Bの最大のリスクは500で済むことになります。
ここでいうCが「再保険会社」で、先程も説明したように海外の保険会社になります。
例えばロイズ、AIG、スイス・リーといった大手損保会社です。

さて、この事業会社Aが、再保険会社を自社の子会社として海外に作ります。

事業会社:A社
損害保険会社(日本):B社
損害保険会社(海外):C社
Aの再保険会社(海外):D社


日本での保険契約は今まで通り、事業会社Aは損保会社Bに100の保険料を支払い、火災が起きたら1000まで補償してもらえます。

通常は、Bは海外の損保会社Cに再保険を掛けますが、Aは自分の再保険小会社Dを海外に持っているので、BにDで再保険を引受けさせてくれるよう交渉するのです。Bがこのリクエストを受入れると、先ほどと同じ構造が出来上がります。

BはDに50を支払い、事故がなければ毎年50がDに入ります。
ただし、事故があるとDはBに500の補償を支払わなければなりませんから、この500のリスクを回避するため、DはロイズやAIGなどの海外の損保会社Cから、500という補償を買ってきます。

火災が起きた時、この500の補償でAに500を支払うことが出来るので、Dのリスクはほぼゼロになります。
DはCから500の補償を50より安くで購入出来れば、その差額が利益となるわけです。

再保険契約

日本から海外の再保険会社にリスクの引受先を変えるだけでこれだけの資金(保険料)が節約できます。なぜこんなことができるのか?

もうおわかりですよね。
これまでの個人向けの海外保険(生命保険)と同じように、損害保険においても日本よりも海外の方が断然保険料が安いからです。

同じくこんな物が日本に出回ってきたら、高い保険料を日本の損保会社が取れないから、日本の会社は直接海外の損保に加入することができないようになってるんですね。

このスキームを使うことで得られるメリットとしては・・・


1)全額損金による利益圧縮

まず、今期5000万円以上の利益が出ている法人はこの「事業リスク対策保険」を使うことによって、ご希望の金額をそのまま全額損金にして、資金を留保しておくことができます。
日本の全損・半損保険に入って利益を繰り延べしたものの、”出口”で困っていたり、「税金を払うくらいなら」と、無駄な経費や設備投資をしている場合などは、それを止めてこの「事業リスク対策保険」をすることができます。

なお、翌年も同じ金額で継続するのか、金額を変えるのか、止めるのか、自由に設定することが可能です。
損金の保険のように、数年支払ってメリットが出るようなものではないことも「事業リスク対策保険」を使う魅力の一つです。


2)海外への資産移転

「事業リスク対策保険」を使うことで、5000万円以上の利益を丸々損金にし、海外へ資産移転します。
そしてその資産は、デビットカードを使って引出 or ショッピングで個人で使う、個人が借入して使う、自社株を買う、オフショアファンドや海外保険で運用するなど、自由に使うことができます。


3)資産承継(相続対策)

利益の出ている法人は自社株評価も高いですから、お子さんの代に事業を承継するのは大変ですよね。
また、相続評価額も高くなり、最高で55%の相続税を払わないといけません(2020年現在)。
今後、この税率はもっと高くなることが予想されます。

<法人の利益から、所得として受け取り、相続資産とした場合>
課税前の法人利益を100とすると、法人税課税後は66になります。
決算をまたいで翌年にその利益分を役員報酬として受け取ると、所得税の最高税率は55%。税引き後の個人所得は30になり、それを子供に残そうと蓄財していったとします。
最終的に相続でお子さんにすべて渡したとしても相続税55%を引かれ、手元にわたるのは14
元々の14%しか渡せない、という計算になります。

相続対策

しかし、この「事業リスク対策保険(キャプティブ)」を使い、海外へ移転した資産の名義をお子さんやお孫さんなどの”後継者”にしておくことで、毎年無税でお子さんへ移しておくことができます。

相続対策、そもそもどうやって組成するのか?など詳細を知りたい時は、
お気軽にご連絡ください。

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