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トップ昇格決定。長崎U-18・五月田星矢の魅力と、長崎の未来

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9月11日から16日までの間、九州へ行き社業とライター業の両輪で精力的に動き回った。12日、13日は長崎、佐賀、福岡と回って多くの高校生を見てきた。その中で目に止まった選手が、今週早速所属クラブでトップ昇格することが発表された。

長崎にとってU-18からのトップ昇格内定者は、林田隆介、江川湧清に続きクラブ史上3人目である。


存在感を見せた10番・キャプテン

長崎は近年、母体となる企業の名声も含めて力をつけている印象が強い。ただ、10年以上Jリーグを見ているファンは長崎に“新興クラブ”のイメージを持っていると思う。自分もその1人だ。

そんな歴史の浅いクラブの育成組織については、全くイメージが沸かない人が多数だろう。冒頭で記したようにトップ昇格を果たしたOBが今回の五月田で3人目だ。その数と事例の少なさは“育成組織が強くない”というイメージに直結する。金沢や岡山あたりも同様の印象を持たれていると思っている。

ましてや長崎は国見高校や長崎総合科学大学附属に代表されるように“高校サッカー色”が強い。言ってしまえば後発的にやってきたJクラブの育成組織だ。そういう背景もあり、長崎のU-18には良くも悪くも連想されるものがなかった。

しかし、やはり実物を見なければわからない。そして感じた。長崎U-18はいいチームだ。

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台風の影響で初戦が流れたため、自分が観に行った9月12日の国見戦が彼らにとっての今年初の公式戦だった。結果は終始圧倒しての4-0。国見は絶対的なエースである中島大嘉がいなかったため拠り所がなく攻めあぐる。一方まとまりがあった長崎は好守に迷いなく、スピーディーな攻撃と戦う姿勢を随所に発揮し4得点を奪って白星を手にした。

その中で長崎の中盤で存在感を出していたのが、10番を背負いキャプテンマークを巻いていた五月田だ。

ビルドアップでは最終ラインまで落ちてゲームを作り、正確なパスで攻撃の中継点となり、守備のところでも球際で“一歩”が出る。好守において居て欲しい場所には10番の姿がある。背中の大きさ、チームの大黒柱感が漂っていたが、醸す雰囲気もプレーに反映されていた。そんな印象だ。

この日、スーパーな部分は見られなかった。ただ、試合の展開を呼んで最適解が出せる。これが彼が魅せたスペシャルな部分であった。


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「自分のストロングはゲームコントール力」と本人も言う。そして、こう続ける。

「時間帯によって声をかけて状況を変えたり、ボールを握って自分からパスを出していけるというのは持ち味。ゴール前のアイディアやそこに絡んでいくのも得意だし、もっと前に関わりたいというのもあるのですけど、そこはチーム状況を見ながら、です。でも、バランスよく自分が前に関わることもやりかたによってはできたと思うので、もっとコミュニケーションをとって仲間とやっていければ前に絡んでいけるのかなと。」

プロに入る前の育成年代の選手に自身の強みを聞いた際、シュートやラストパス、ドリブル突破といった局所的な解答が返ってくることが多い印象がある。「ゲームコントール力」が強みと自認する高校生はあまり記憶にない。そういう意味でも印象的であった。

何よりもピッチでそのゲームコントール力は発揮されていたことを示すもう1つの事実がある。ボランチの相方である期待の1年生・安部大晴が2得点を挙げたこと。中盤のそこから積極的に前にボールを付けては運び、ゴール前に顔を出した。あえて控えめな位置を取った五月田がいたからこそ、安部が前に出られたことは間違いない。

この選手も、ぜひとも覚えていて欲しい存在だ。トップチームの練習にも帯同しており、将来を嘱望されている。来年にもJの舞台で見られるのではないだろうか。昇格はほぼ確実と見ている。


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安部大晴は近いうちに代表入りをしてもおかしくない

「小さい頃から身近にVファーレンの試合はあって、地元のクラブに入りたいと思った」

五月田は長崎のU-15に入った経緯をこう語るが、念願かなってプロ生活へのスタートラインに立つことができた。初年度から試合に絡むくらいの気概を見せてほしいし、何よりも彼のような育成組織出身者がトップの舞台で活躍する姿を見せることが、上述したようにクラブの価値をさらに高めていくことになる。

高校ラストイヤーの目標であるプレミア昇格はレギュレーション上、果たし得ぬものとなった。ただ、それ以外にも残せるものは多くある。個人的には、近い将来の長崎のダブルボランチは五月田と安部であってほしい。

その未来のための準備期間として、邁進してほしいものである。

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