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エディオンピースウイング広島は、世界に誇れるサッカースタジアムである

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今年はJリーグを多く取材する決意をし、1発目に開幕カードの広島vs浦和を選択した。理由は3つある。1つ目は今年のリーグ戦の優勝争いを繰り広げるのがこの2チームだと思っていたので、その両者が見れることで、広島に加入した大橋祐紀がどれだけやれるかを見たかったのが2つ目だ。そして、何よりも驚くほど都心にできた新スタジアム、エディオンピースウィング広島を見たかったのだ。


試合については広島がチームの成熟度の高さとストライカー・大橋の凄みを見せ2-0で浦和を倒した。浦和も悪くなかったと感じている。

ここについては別の記事で触れるとして、今回は広島に出てきた素晴らしいスタジアムについて感じたことを記したい。結論から言うと、この広島の新スタジアムは日本で一番のサッカースタジアムだと思う。

「良いスタジアム」の定義と広島にあるもの


まず、何を持って良いサッカースタジアムといえるのか。ここの定義から話したいと思う。あくまで個人的な意見ではあるが

①専用スタジアムであり、客席とピッチの距離が近い
②観客席を屋根が覆っている
③複数路線が入るターミナル駅から徒歩圏内
④スタジアムから徒歩10~15分で娯楽(飲食、観光、アミューズメントパークなど)がある。
⑤ ④の選択肢が多い

この5つだと思っている。細かいところを上げればキリがないので、譲れない大項目がこれらだと思ってほしい。そして、ピースウイング広島はこの全てを満たしていた。

①②の“サッカー観戦における快適さを担保する”要素を持つスタジアムは少なくなし、ここ十数年で一気にその数が増えた。ガンバ大阪のパナソニックスタジアム吹田や京都サンガF.Cのサンガスタジアムby KYOCERA、ギラヴァンツ北九州のミクニワールドスタジアム北九州などが代表的か。どれも魅力的で良いスタジアムだと思う。

ただ、③④⑤の周辺環境を満たすのはなかなか難しい。人も店も金も集まり盛り上がっている場所にたまたま存在する大きな空き地に建てるしかないのだが、そんな好条件が揃った場所はそうそうない。

小倉駅徒10分にあるミクスタは上記の条件を満たしているのだが、そこと比べても広島は“圧勝”だと感じる。全ては立地だ。中国地方で最も人が集まると言っても過言ではないあの場所にスタジアムを手にした時点で、サンフレッチェ広島は勝利した。

圧倒的な“場所”の優位性

行ってもらえばわかるのだが、驚くほど街の中心にスタジアムがある。世界遺産となっている原爆ドームと平和記念公園まで10~15分、広島城は目の前だ。広島の繁華街といえば八丁堀から本通にかけて(下記のgooglemap参照)のエリアであるが、試合が終わって15分もあれば繁華街に着くことができ、良い意味でサッカー観戦から離れられるのだ。思うに、“いかに早くサッカー観戦後にサッカーのことを忘れられるかどうか”は、サッカー観戦の体験価値を上げるために必要な要素である。逆説的だが。

これはXでも投稿したが、サポーター心理的にも試合が終わって気を紛らわすものが何もないエリアを長時間駅まで歩いたり、スタジアムから駅が近かったとしても繁華街のある駅までは電車を挟まなければいけなかったりする体験は避けたいものだ。打ち上げに代表されるサッカーの試合の後の楽しみまでの時間は短いが良いし、長ければ長いだけストレスとなり良い思い出ではなくなる。

応援したチームが負けたらなおさらだ。次の来訪がなくなる可能性は高くなるだろう。

ただ、試合に負けてもすぐに居酒屋に入れて美味しいものを飲み食いできたり、ショッピングモールで買い物ができたりアミューズメントパークで遊べたり、観光地を散策できたりすれば敗戦のショックも和らぐ。そして、それらの体験が楽しければ ”負けてもいい思い出” となる可能性が生まれ、嫌な体験を “敗戦” だけに留めることができる。

試合終了後に行われる“反省会” “祝勝会””観光”の時間をいかに短くするかはファンの再来訪を促すためにも大事な要素なのだ。

上述したように小倉も確かにその要素を含んでいる。ただ、街の規模で広島に軍配が上がる。人の多さ、通りの広さ、飲食店の多さ…複数の県を合わせたエリアの中で見ても広島はトップクラスである。小倉はコンパクトで好きだが、広島の繁華街が見せる圧倒的な“量”はない。

実際に試合後、取材を終えて街を出て数分立てば遭遇するその人混みに、心底驚いた。試合を終えて、「試合おもしろかったな、このあとどうしようかな」と考えながら歩いていると、気づけば盛り上がる街の中にいる。人が多い。ユニフォーム姿の人もいるが、サッカー観戦者ではない大多数が街を楽しんでいる姿が自然と目に映るのだ。「このまま帰るのは何かもったいない」そう感じさせてくれた。

試合を終えて周囲に何もない道をひたすら歩き、駅についたときには二次会へいく気力も削がれているし場所も少ない。駅を移動してまで飲む気にもなれない。というのがこれまでのサッカー観戦での“あるある”だった。でも、広島は違ったのだ。

新たな平和の象徴に

試合を見に来たサッカーファンにサッカー以外の楽しみという付加価値を素早く与え、アウェイチームのサポーターによって街の経済が大きく動く。こんなに誰しもにポジティブな要素を与えられる場所はそうそうない。

そして何よりも、原爆ドームという人類の過ちを象徴する負の遺産のそばにあることは非常に意味があると思う。人類の歴史における大きな過ちの象徴であり、海外から多くの観光客が足を運ぶ場所であることは言うまでもない。

そんな場所のすぐそばに、平和の象徴の一つとも言えるスポーツの中でも世界的にポピュラーなサッカーのスタジアムがある。多くの外国からの観光客が、ある種の平和の象徴の一つとしてこのスタジアムを数えてくれるかもしれない。

サンフレッチェ広島は、このスタジアムを世界に誇れる。

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